犯人はだれ? 全寮制男子高で起きた不可解な殺人事件…同室の迷コンビが挑む青春ミステリー!

文芸・カルチャー

更新日:2022/4/29

ルームメイトと謎解きを
ルームメイトと謎解きを』(楠谷佑/ポプラ社)

 同世代の仲間と寝食を共にする寮生活。そこで育まれる友情ほど、かけがえのないものはないだろう。ましてやルームメイトならなおさら。もし、そんな大切な同室の仲間に殺人の容疑がかけられたとしたら、あなたならどうするだろうか。

ルームメイトと謎解きを』(楠谷佑/ポプラ社)は、全寮制男子高で巻き起こる不可解な殺人事件を描き出した学園ミステリーだ。仲間を疑わなければならない苦しみを抱えながら、事件の謎を追うのは、同室になったばかりの迷コンビ。友情と疑惑。張り巡らされた伏線に、一体誰が犯人なのかと、ドキドキが止まらない。

 舞台は、中高一貫の男子校・私立霧森学院。低い身長と幼く見える容姿で、周囲から「可愛い」といじられてばかりの高校2年生・兎川雛太(とがわ・ひなた)は、学院に編入してきた転校生とルームメイトになった。その転校生の名は、鷹宮絵愛(たかみや・エチカ)。180cmを優に超えるモデル体型で、整った顔立ちをしている彼は、とにかく無愛想で、動物にしか心を開かない変人。だが、会ってすぐに雛太が空手部所属であることを見抜くなど、どうやらかなり頭脳明晰らしい。そんなある日、学内で絶対的な権力を持つ生徒会長・湖城龍一郎が何者かに殺害されてしまう。警察によれば、現場の状況から犯行が可能なのは、雛太たちの暮らす旧寮「あすなろ館」にいた8名のみ。特に、湖城から目を付けられていた転入生のエチカは疑いの目を向けられてしまい…。

advertisement

 情に厚く、思ったことがすぐに態度に表れてしまう雛太と、人間にあまり興味がないクールなエチカ。最初は反発し合い、相性最悪だったはずの2人が、次第に信頼を寄せていく様に胸が熱くなる。雛太は殺人事件の犯人としてエチカばかりが疑われることに強い憤りを覚える。周囲の癪に障る行動を取りがちなエチカからすれば、濡れ衣を着せられるのは慣れっこらしいが、雛太からすれば、疑いの目を向けられても、平然としているエチカに悔しさを感じる。なぜ自分が疑われることを雛太が不愉快に思うのか理解できないエチカと、「当然だろ。友達を疑われたら」なんて台詞を当たり前に吐く雛太。そして、雛太はエチカの無実を証明するため、エチカの頭脳を借りながら、独自に捜査を始めることになる。…ああ、なんと尊いのだろう。育まれる友情はまさに青春。2人の掛け合いにニヤニヤが止まらなくなってしまうのは私だけではないはずだ。

 しかし、雛太とエチカの微笑ましいやりとりとは対照的に、フーダニットを解き明かす展開は、シリアスそのものだ。その甘辛のバランスがなんとも絶妙。容疑者は、旧寮「あすなろ館」で一緒に暮らす大切な仲間たち。彼らの中に殺人犯がいるだなんて考えたくもないが、雛太とエチカは真実を追い求める。ひとりひとりから証言を集める雛太と、容疑者を少しずつ絞り込んでいくエチカ。消去法で容疑者が論理的に絞り込まれていく展開と、予想外の結末に誰もが驚かされてしまうことだろう。

 気づけば、あなたも凸凹コンビの活躍から目が離せなくなってしまうに違いない。先の読めない展開にゾクゾクさせられながらも、高校生たちの友情にグッとくる。青春小説としても、ミステリーとしてもとびきり面白いこの作品を、ぜひあなたも体感してみてほしい。

文=アサトーミナミ

ルームメイトと謎解きを

あわせて読みたい