教師と女子高生──禁断の恋愛かと思いきや!? ミステリアスな要素が重層的に絡み合う新感覚の恋愛奇譚

マンガ

公開日:2022/5/7

新しいきみへ 1
新しいきみへ 1』(三都慎司/集英社)

 日々の生活の中において、他者との関わりが非常に大切であることは、コロナ禍いまだ衰えぬ現在であっても変わりはないだろう。そして相互理解がスムーズにいくこともあれば、些細なことから誤解が生じることもある。この『新しいきみへ 1』(三都慎司/集英社)という漫画はそんな誤解を抱えた主人公の行動をきっかけに、日常のさまざまなことが変わっていくという極めてミステリアスな作品だ。

 主人公の佐久間悟は、どこにでもいるような普通の高校教師。そんな彼が帰宅途中、自分の妻・亜希の浮気現場を目撃してしまう。突然の事態にパニックとなった悟は、その場を逃走。気がつけば、彼の故郷である小田原へ来ていた。そこで出会ったのは、悟の夢に時折出てくる子によく似た不思議な少女。彼女は悟になぜか関心を持ち、気がつけばふたりはホテルへ入っていた。しかし妻への愛情が残る悟は何もせず、そのまま自宅へと戻っていくのだった──。

 ちなみに悟の妻の不倫というのは彼の誤解であり、このままいけばいつもの日常が続いていたであろう。しかしもちろん、そうはならない。新学期で新しいクラスの担任となった悟の前に生徒として現れたのは、小田原で出会った少女・相生亜希だったのである。何もなかったとはいえ、彼女とホテルへ行ったことは事実であり、さらにその場に結婚指輪を残してしまった悟。指輪を取り戻すため亜希を説得しようとする悟だったが、逆に彼女に「なんでも言うことをきいてね、せんせ?」などと脅されてしまう始末なのであった。

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 ここまでの流れを見ると、冴えない既婚教師が小悪魔系女子高生に翻弄される禁断系のラブコメ展開が始まりそうにも思える。しかしこの出来事のウラで、実は不穏な事態が起こりつつあった。新型インフルエンザと思われるような感染症によって、多くの人が体調不良を訴えていたのである。それは悟の同僚である教師たちも例外ではなく、体調不良で休んでいたある教師は、全身から血を流して死んでしまったのだ。悟と亜希のラブコメ的なやりとりの一方で、国をも巻き込むような恐るべき何かが進行していたのである。

 本作は佐久間悟と相生亜希の禁断の恋愛を描くのかと思いきや、多くのミステリアスな要素が巧みに織りなされている。主人公たちの周辺で蔓延する「謎の感染症」しかり、悟の夢に出てくる不思議な少女しかり、そして悟の妻と同じ名前を持つ相生亜希の正体とは──。これだけ要素が入り組んでいると消化不良を起こしそうな心配もしてしまうが、そこは悟と相生亜希のラブコメパートと、緊張感のある感染症事案で巧みにバランスを取っている。単なる禁断の恋愛物語ではなく、単なるパンデミックものでもない──何かが起こりそうな……。本作を読んでそういう期待感を覚えるのである。

文=木谷誠

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