日本のエネルギー未来、再発見! 資源小国日本はエネルギー資源大国だった

公開日:2012/11/9

日本は世界一の環境エネルギー大国

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:BookLive!
著者名:平沼光 価格:756円

※最新の価格はストアでご確認ください。

国内資源の開発が活発化している。秋田県でのシェールオイルの採掘・実証実験、国内最大級ともいわれる佐渡沖での油田探査、さらに新たな天然ガス、メタンハイドレートの開発…。本書は、資源小国といわれる日本には、実はこんなにエネルギー資源があります。日本は資源大国なんです。エネルギー政策の再構築が急がれているいまこそ、国内のエネルギー資源と本気で向き合い、積極的に利用しよう。それを実現する技術力と感性が日本にはあります、という日本のエネルギー未来を明るくしてくれる本だ。

advertisement

日本が世界に誇れる資源大国の根拠として、本書では次の4点(「4つの車輪」と形容)をあげている。
①日本には変化に富んだ自然環境がもたらすさまざまな再生可能エネルギーがある。
②CO2排出量の少ない化石燃料メタンハイドレートが日本近海(南海トラフや日本海など)に幅広く埋蔵されている。
③宇宙太陽光発電に代表される宇宙エネルギー開発への世界に先駆けた取り組み。
④上記の①~③を開発する技術力とそれを可能にする日本人独自の感性がある。この4点だ。

世界に資源国は数多く存在する。しかし上記4点のような資源を有する国、また有効に活用できる技術、感性をもった国は日本しかない。だから「日本は世界一の環境エネルギー大国」、より正確にいえば「将来、環境エネルギー大国になりうる国」だ。

福島原発事故による原発安全神話の崩壊とその後のエネルギー環境を概観する1章を受け、上記4点について各章で言及。これら4つの資源を生かし、環境エネルギー大国の実現へ向けた問題と提言が6章にまとめられている。やはり気になるのは、環境エネルギー大国への成否を左右するこの章だ。おもな問題を要約すれば、外には資源開発競争における各国との共存、そしてEVやスマートグリッドなど環境エネルギー技術の国際標準化の決定をめぐって、内には再生可能エネルギー普及を加速する法的整備、規制緩和といえる。これらの問題への対応いかんでは、近海に眠る資源も高度なエネルギー関連技術を生かす機会も失うことになる。最大の問題はなにか、それは改めていうまでもない。

提言からひとつ紹介する。洋上風力発電をこれからの「漁業」と考え、発電所の維持に漁業と連携、とくに震災被災地を支援するプランとして提案している。これは波力や潮力発電にも有効性をもつだろう。今年7月、再生可能エネルギーの「固定買い取り制度」が導入され、その仕組みは不十分であっても、とにかくエネルギー未来へ新たな一歩を踏み出した。エネルギーのありかたを見れば、国のありかた、未来が見えてくるという。本書から日本のエネルギー未来だけではなく、この国の望ましい未来の姿が見えてくる(本書は、政策シンクタンク、東京財団の「資源エネルギーと日本の外交」プロジェクトの一環として出版された)。


目次。「はじめに」では、日本を環境エネルギー大国と呼ぶ根拠、「4つの車輪」について述べている

天然ガスの一種メタンハイドレートは、南海トラフ(静岡~和歌山県沖)のほか、日本海、オホーツク海でも埋蔵が確認されている(第3章)

宇宙太陽光発電は、宇宙空間で得た太陽光発電エネルギーを地上に送電するSFのようなシステム。日本は2030年代の実用化をめざしている(第4章)

「4つの車輪」のひとつ、日本人の感性の例として、排ガスの余熱を利用した「天然ガスコンバインドサイクル」があげられ、そこに「もったいない」思想が生かされているという(5章)

環境エネルギー技術の国際標準化の達成は、環境エネルギー大国実現へ、また日本の未来へも欠かせない(6章)