ラスト1ページの戦慄を見逃すな。高級美顔器の誤配達によって妻と不倫相手が急接近！ 壊れかけた夫婦関係を描くコミックエッセイ
マンガ 公開日：2022/5/7
壊れる危機が差し迫ってからでないと、関係性の大切さに気づけない。夫婦関係には、そんな危うさがあると思う。共に過ごす時間が長くなると、いて当たり前だと思い、パートナーの気持ちを蔑ろにして日常をこなしてしまうこともあるのではないだろうか。
けれど、『気がつけば地獄』（ゆむい：漫画/岡部えつ：原作/KADOKAWA）を読むと、その考えが変わるかもしれない。
本作は、妻と不倫相手がSNSを通じて繋がるという、斬新な展開の不倫コミックエッセイ。自分たちも気づかないうちに地獄に落ちてしまっていないだろうかと、夫婦関係を見つめ直したくなる1冊だ。
宅配の誤配達によって妻と不倫相手がSNSで急接近
都内近郊で暮らす主婦の紗衣はパート勤めをしながら、ほぼワンオペで家事と育児をこなす日々を送っていた。
結婚や出産を経て妻や母となったことで、変わらざるを得なかった自分とは違い、いつまでも独身時代のままでいられる夫・祐一が羨ましい。どうやら、夫は不倫もしているようだ。なんだか、毎日、胸の中がジャリジャリする…。
そんな日々に少しでも潤いが欲しくて、紗衣は5万円超えする高級美顔器をネットで購入。ところが、商品は同じマンションに住む別の住人のもとへ誤配達されてしまった。
どうすれば取り戻せるのか悩んだ紗衣は、夫に内緒で開設したツイッターアカウントに状況を投稿。すると、「ナナ」と名乗る女性が共感を示し、励ましてくれた。
この「ナナ」と名乗る人物、実は祐一の不倫相手である夏希。美顔器の誤配達は、宅配のバイトをする夏希によって意図的に仕組まれたものだったのだ。
そうとは知らない紗衣は、SNSを介して夏希と交流。結婚以来、初めて夫の愚痴を吐き出すほど、距離を縮めていった。
夫以外の人に頼るのは、紗衣にとって新鮮なこと。気持ちを語る中で、紗衣は自分がいつの間にか些細なことでも夫に許可を求めるようになってしまっていたことに気づく。
自分さえ、鈍感なフリをしていればと思い、耐え、頑張ってきたけれど、もうやめよう。そう思い、紗衣は生き方を変えることに。変わっていく紗衣の姿を受け、祐一や夏希は戸惑い、心が乱されるようになっていく――…。
本作は紗衣だけでなく、一点のしみもない百点満点の父・夫でありたいというプレッシャーを背負っていた祐一の苦しみや、体の関係を持った後に既婚者であることを知らされた夏希の苦悩も丁寧に描かれているので、どの視点に立っても読みごたえがあり、各々の考えが心に刺さる。
妻と不倫相手の間に芽生えた、ありえない友情は果たして、どんな結末を迎えるのだろう。そして、紗衣は自分たちの夫婦関係に、どんなアンサーを下すのか。ラスト1ページの衝撃に、あなたもきっと戦慄する。
文＝古川諭香
