発達障害がある子の自立をサポート。親以外へのSOSが出せる力を身につけるための1冊

暮らし

公開日:2022/5/12

発達障害の子どもに自立力をつける本(健康ライブラリー)
発達障害の子どもに自立力をつける本(健康ライブラリー)』(高山恵子:監修/講談社)

 この子がちゃんと大人になるまで、親はどう寄り添ったらいいのだろう――発達障害があるお子さんを持つ親御さんの中には、そんな不安を抱えている人もいるかもしれない。発達障害の特性は長じても残っていくため、どうしてもサポートは必要だ。だがお子さんが「思春期」にさしかかったら、サポートの仕方には少し考慮したほうがいいという。小さい頃の延長でフルサポートを続けていると、お子さんの「自立力」が育たなくなってしまうというのだ。

発達障害の子どもに自立力をつける本(健康ライブラリー)』(高山恵子:監修/講談社)は、思春期にさしかかった発達障害があるお子さんをどうサポートしたらいいのかを教えてくれる1冊だ。監修者は発達障害の当事者と家族のための会「NPO法人えじそんくらぶ」の代表をつとめる高山恵子さん。ADHDなどの発達障害のある人のカウンセリングや教育を中心に家族支援、キャリア就労支援などを行ってきた経験から、どのような助けがあればなにができるのか、やさしい図解でわかりやすくコンパクトに教えてくれる。

発達障害の子どもに自立力をつける本(健康ライブラリー)p.10~11

 本書のタイトルにもある「自立」だが、一般的な自立とは、精神面、生活面、経済面など親の支援なしで、ほぼなんでもひとりで対処して暮らしていけるようにすることだ。だが本書によれば、発達障害がある子どもの場合はそうした「一般的な自立」は難しいことが多いため、まずは親もそうした自立の概念に囚われないようにしたほうがいいという。

advertisement

 とはいえ過保護のままでいいわけではなく、思春期になったら親はサポートから徐々に身を引き、親以外へ移行させていくこと。大切なのは「ひとりでできることを増やしながら、本人が自分でサポートを求められるようにSOSを出せるようになること」なのだ。SOSを出すのは「自分はダメだ」ということではない。むしろSOSを出して支援されることで、自分を生かせるきっかけになる――そんなポジティブな意識を育めたら、お子さんが大人になっても大きな支えになるだろう。

発達障害の子どもに自立力をつける本(健康ライブラリー)p.6~7

 本書では自立力をつけるために必要な「自己理解の進め方」「問題解決力のつけ方」「社会的機能の獲得」などについて解説するほか、福祉就労のトピックも紹介するなど幅広い。まだ我が子が働くイメージまではわかないかもしれないが、こうした情報を先に知っておくことはメリットも多い。もしも年齢があがるにつれ現実の厳しさに不安になったとしても、情報があれば安心できるからだ。ちなみに本書は親向けに書かれてはいるが、当事者のお子さんが一緒に読むのもいいだろう。思春期の困りごとが相対化できるし、なにより「こういう力をつけたらいいのか」と本人が理解することで、自立に対してより自覚的になれるかもしれないからだ。

「発達障害の支援は年々よくなっていくでしょう。なぜなら『発達障害の特性を才能として使わないともったいない』という考え方が日本中にあふれてくると思うからです」と高山さん。そんな未来がきたときに、あなたのお子さんがしっかり「自分の足」で立てることを願って、まずは本書をはじめの一歩にしてはいかがだろうか。

文=荒井理恵

あわせて読みたい