女子高生×サウナの異色のマンガ『冷水と灼熱のあいだ』が面白い! “ととのう”の真髄がここに!

マンガ

公開日:2022/5/16

冷水と灼熱のあいだ
冷水と灼熱のあいだ』(鷹野浪流:原作、いのうえ空:漫画/白泉社)

 数年前からブームになっている「サウナ」。なかでも、サウナと水風呂、そして休憩を繰り返すことによって快感が得られる状態のことは「ととのう」と呼ばれ、それを求めてサウナに通いつめる人たちが急増した。ぼくも「ととのう」を体験してみたいと、一度サウナに行ってみたことがあるのだが、やり方を間違えていたのか、残念ながらその感覚を味わうことはできなかった。一体なにがダメだったのか、失敗すると尚更気になって仕方ない。

 そんなモヤモヤを抱えているところ出合ったのが、『冷水と灼熱のあいだ』(鷹野浪流:原作、いのうえ空:漫画/白泉社)。これはサウナをテーマにした、少し珍しいマンガだ。

 主人公はふたりの女子高生、夏目夢子と春日めぐみ。夏目は小説家を夢見る文学少女で、引っ込み思案な人見知りタイプ。一方、春日はカリスマ読モであり、クラスどころか学校中のアイドルだ。つまり、ふたりは対照的な存在である。

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冷水と灼熱のあいだ

冷水と灼熱のあいだ

 そんなふたりがひょんなことから入部したのが「さ道部」。この「さ道部」とは茶道部のことではなく、「サウナ道部」だったことから、夏目と春日は奥深いサウナの世界へ足を踏み入れていくことになるのだが――。

 近年、「女子高生×趣味」を描くジャンルのマンガが盛り上がっている。この趣味の部分にはキャンプや登山、釣りなど、さまざまなものが当て込まれているが、本作はそこにサウナを設定した「女子高生×サウナ」マンガというわけだ。そして、他の作品同様、本作にもサウナにかんする豆知識が鏤められている。

 いま人気の「ととのう」も、詳しい手順とともに描かれる。まずはシャワーを浴び、サウナで発汗する。このとき、下段の方が低温のため、初心者は下段に座って慣らすのがオススメとのこと。そして水風呂に入ったら10秒我慢。すると空気の膜ができて、水の冷たさが和らぐ。その後は外気浴。サウナで温まった体が水風呂で急激に冷やされると、表面は冷たく内側が温かい状態になる。そこで風に当たると冷たさと温かさの両方が感じられ、快感へ結びつく。つまり、これが「ととのう」なのだ。

 と、このように、本作ではサウナの楽しみ方が丁寧に描かれていく。夏目も春日もサウナビギナーのため、彼女らが一つひとつサウナの知識を身につけていくさまを追いかけていくだけで、読み手にも自然と知識が入ってくるうまい構成になっているというわけだ。

 もちろん、読みどころはそれだけではない。傍目には対照的なふたりが少しずつ距離を縮め、本当の友達になっていく過程はとても眩しい。サウナという変わったテーマを描いているものの、そこにあるのは紛うことなき青春の日々だ。

冷水と灼熱のあいだ

冷水と灼熱のあいだ

 夏目と春日がこの先もずっと仲のいい友達のままで、そしてサウナを楽しみ続けてもらいたい。そんな不思議な気持ちにさせられるマンガとの出会いだった。

文=五十嵐 大

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