非常に明確なコンセプトが気持ちよい、王道ジュブナイル

ライトノベル

公開日:2012/11/14

サクラ咲く

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 光文社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:辻村深月 価格:972円

※最新の価格はストアでご確認ください。

検索やおすすめからコンテンツにたどり着くことが多い電子書籍で、果たしてジャンル分けにどれほどの意味があるかは疑問ですが、本書はライトノベルとなっております。でも、今日的意義でのライトノベルではないですよ。間違いなくもっと源流に近いものです。「ズッコケ三人組」シリーズがあり、もうちょっと上の年齢層向けに『ぼくらの七日間戦争』に続くシリーズがあるのだと考えると、そっちに近い本です。

advertisement

表題作の『サクラ咲く』をはじめ、『約束の場所、約束の時間』『世界で一番美しい宝石』の2編が収められているんですけど、ページの都合でまとめました! というような話ではありません。それぞれの世界が、舞台だったり登場人物だったりするのですが、実に鮮やかな密度でリンクしているのです。知らなくても読める。でも知っているとクスッとできる。そんな感じですね。

なぜ、『約束の場所、約束の時間』が最初で、真ん中が『サクラ咲く』で最後が『世界で一番美しい宝石』なのか。最後まで読むと腑に落ちるんですよ。そのギミックが心地よい。さすがミステリの人だなぁ、と思うと同時に、巻末の初出を見てさらにうなる羽目に。掲載していたの、進研ゼミだったのね(『世界で一番美しい宝石』の初出は「小説宝石」)。

本書に収められている3編に共通する題材。それは、変えたいと思うような自分の性格、学校での立場の克服です。つまり、進研ゼミをやっている中学生が読むという大前提があって、この題材があって、そしてこの作品がある。しかも、中学をとうの昔に卒業した大人でも楽しめる小説になっている。あんまり好きな言葉じゃないけれど、ものすごいテクニックのいる仕事ですよ。でもまあ、そんな裏読みしなくても、中学生のピュアな感じが漂っていて誰もが好きになれる1冊だと思いますよ。


約束の場所―、の主人公は「あいつは優等生タイプだから」と最初距離を取るが…

サクラ咲く、の主人公、塚原さんも性格にコンプレックスを抱えている

流されてしまいがちな性格が災いすると、本気で悩む

そんな塚原さんが不思議な文通をはじめる場面