「どこに行っても、何になってもいいんだよ!」友による救いの言葉
公開日:2012/11/14
固定概念を上手く使って、読み手に「思い込み」をさせ、最後に突然種明かしをしてくるあたりが、遊び心があってとっても良かったです。
そして、作者の思惑にまんまとハマっていた自分に気付く頃、数々の伏線が脳裏を過ぎっていきました。勉強も運動も何でもできるトシと、気弱で「万引きをする」と噂のあるワタル。間逆な2人が作中で、気持ちを弾めていく姿や萎んでいく姿に謳歌する感覚で、胸が懐かしさでいっぱいになります。
大人を試し、同級生たちを一歩引いたところで語る姿が2人の価値観を引き合わせたのだと感じ、危惧する全てのことをワタルと共に乗り越えていく…そんな小学生の懸命な物語に老若男女問わず涙するのだと思いました。
他2作の短篇集も読後感が優しく温かいもので、ロードムービー含む全ての作品が『冷たい校舎の時は止まる』スピンオフです。辻村深月さんは孤独を消し、心を癒やす仕掛けが本当にお上手ですね。
中学生に囲まれ暴力を受けるトシを庇ったワタル。ワタルにとってトシがどんな存在であるのか、トシにとってワタルがどれだけ大切であるのかが分かる場面です
ワタルと仲良くするトシに意地悪をするアカリ。小学生の人間関係がリアルに描かれています
「一応、手ぇ抜けよ。殴る時も、グーでな殴るな。」この言葉こそが、伏線です