料理を楽しむためにラクをしよう。クックパッド初代編集長が伝える、料理の悩み解消法&レシピ集

暮らし

公開日:2022/6/9

時間があっても、ごはん作りはしんどい
時間があっても、ごはん作りはしんどい』(小竹貴子/学研プラス)

 まえがきの段階で、「週1回はファミレスで食べる」ことを提案する料理本を、私は見たことがない。時短アイデアを提案するレシピ本は数あるが、それらとは一味も二味も違うことが冒頭から伝わる。本書は、読者のゴール設定と解決策が新しい。料理を楽しむために、料理をつらいと思わせる要因をひとつずつ消していこうとする、画期的な1冊なのだ。

時間があっても、ごはん作りはしんどい』(小竹貴子/学研プラス)は、クックパッド初代編集長で、現在はコーポレートブランディング本部長を務める小竹貴子氏による料理本。ふたりの子どもを持ち、家族の料理や弁当作りも担ってきたワーキングマザーでもある。著者は、ステイホーム時代の今、料理を作る時間があっても毎日のごはん作りがしんどいと感じる人が増えているという実感を伝える。料理をちゃんと作らなくてはという義務感に苦しむ人に、もっとラクに料理と向き合う方法を提案するのがこの本だ。

時間があっても、ごはん作りはしんどい P22
肉じゃが

 本書では、料理がつらい人が抱える14の悩み別に、その解消法とマインドの切り替え方、そして具体的なレシピを紹介。その悩みとは、「料理のレパートリーが少ない」「食材を使いきれなくてムダにしてしまう」「センスがなくて盛り付けがヘタ」「お弁当作りが続かない」など、主に家族のために料理を作る人にとってよくある課題だ。ご存じのとおりクックパッドは、ユーザーの投稿レシピを検索できるサイト。レシピ関連ビジネスを通して、多くの人気レシピや、料理を愛する人、料理が苦手な人と接してきた著者が伝える14の悩みはリアルそのもの。このレビューを書いている筆者も食べ盛りの子どもに食事を作っているが、ほぼすべてのあるあるに共感し、それだけで心が軽くなった。「ごはん、作らなきゃ」と、暗い気持ちになった経験が一度でもある人なら、どれかひとつは自分に当てはまるのではないだろうか。

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時間があっても、ごはん作りはしんどい P106
豚肉の味噌漬け

 まず、各章の始まりに書かれた思い切ったアドバイスの数々に胸がすく。冒頭で紹介したファミレスのくだりも含めて、著者は、料理を頑張ることをやめるように読者に伝える。作ったものでも買ってきたものでも外食でも、ごはんがあるだけで幸せ。しんどくなったら、自分が食べたいもの、幸せになれるごはんを作る。お弁当作りがつらければ、週1回は学食や購買で買ってもらえばいい。頑張りすぎて料理が嫌いになりそうな人の心を救う、あたたかい言葉が並ぶ。

 楽しくラクに、おいしい料理を作るためのテクニックも満載だ。何を作るか毎日考えなくていいように、「毎週水曜日はカレーの日」などとルーティンを決める。盛り付けがうまくいかないなら、家のお皿を本格的な日本の器に一新してみる。買ってくる気力も外食する気力もない日は、炊飯器に材料を入れてスイッチを押すだけの「炊飯器ぶちこみ料理」を作る。栄養バランスが心配なら、学校の給食メニューを参考にする、などなど。悩み別のおすすめレシピに加えて、いろいろな料理に応用できる調味料の割合などの情報も実用的だ。

時間があっても、ごはん作りはしんどい P88
シンガポールチキンライス

 本書を読むと、料理がつらいと感じる人は、料理や食べることを大切に思っているのだと気付く。食が好きで、食事で家族に幸せになってもらいたいと願っているからこそ、思い通りにいかないことがつらいのだろう。そんな人こそ、本書を手に取ることで、料理に向き合う毎日がガラッと変わりそうだ。ポジティブなアドバイスと無理なく取り入れられるシンプルなレシピが、「料理を楽しむためにラクをする」という魔法の言葉を心にそっと置いてくれる、ギフトのような1冊。

文=川辺美希 撮影=キッチンミノル

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