織田信長は、実はめちゃくちゃ保守的だった!? 歴史大好き芸人と歴史研究家がタッグを組んだ、新しい日本史が学べる1冊

文芸・カルチャー

公開日:2022/6/1

超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業
超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業』(河合敦、房野史典/あさ出版)

 近年、流行りつつある「大人の学び直し」。そんな流れに乗ってみたくなった僕は「日本史ならなんとなく馴染みがあるからサクサク学べるかも!」なんて安直な思いのもと、分厚い本を1冊購入。案の定、難しすぎて頭に入ってこなかった(笑)。

 もう少し、歴史初心者でも分かるような書籍があれば……。書店をめぐっていたとき、本稿で紹介する『超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる! 日本史の授業』(河合敦、房野史典/あさ出版)と出会った。

 本書は、歴史大好き芸人・ブロードキャスト!!の房野史典さんと歴史研究家・河合敦さんがタッグを組んで作った書籍。現代の大人が学んできた歴史上の人物や出来事が、ライトな語り口で解説されている。また中身は最新の研究をもとに書かれており、新たな「歴史的事実」に出会える刺激的な1冊となっている。

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 例えば、飛鳥時代の摂政・聖徳太子。彼を知らない大人はほぼいないと言ってもいいだろう。彼の話の中で有名どころは、同時に10人の話を聞けたこと、冠の色で朝廷での席次を示した「冠位十二階」や、豪族たちに役人としての心構えを説いた「憲法十七条」の制定、中国との外交を成立させた遣隋使の派遣などだろう。多くの大人は、これらすべてを聖徳太子が先導して行ったと学んだはず。

 しかし本書によると、最新の研究によって「彼は政治を主導したわけではなく、推古天皇の協力者である」が定説になったと解説されている。聖徳太子という名前も小学校、中学校、高校と進んでいくにつれて、生前の呼び名「厩戸王(うまやとのおう)」が主流になっていくのだそう。

 また「天下統一」というギラギラな野心のもと革新を進め、戦国時代のロックな武将として名を馳せた織田信長については、「既存の勢力と協調しながら、国内に秩序と平和をもたらそうとした保守的な大名」という説が唱えられている。彼が足軽鉄砲隊を率いて武田勝頼の強力な騎馬隊を退けたことで有名な長篠の戦いも、一次史料(日記、公文書など)には経緯の詳細が記載されていないとのこと。しかも最近では、武田軍も騎馬隊ではなく鉄砲を所持して戦っていたことも判明。さらに、一見彼がすぐにでも「不要だ」と滅ぼしてしまいそうな朝廷とも関係は良好。当時の平和を維持するために、勤王家として朝廷からの馬揃えの要望を快諾していたというのだから驚きだ。

 本書では他にも「戦国時代の幕開けは、応仁の乱ではなく享徳の乱だった」説や、「関ヶ原の合戦は2時間以内に決着がついていた可能性が高い」説、「江戸時代の日本は鎖国していなかった、むしろ4つの港で盛んに貿易をしていた」説など、現代の大人が学生時代に習った有名な「歴史的事実」がアップデートされたトピックが取り上げられている。

 もちろん本書に載っているすべての話が、100%真実であるとは限らない。歴史の研究が進むほど、また新しい事実が判明することだってある。そのたびに真実は更新されていくし、歴史を学ぶ面白さはそこにあるといっても過言ではないだろう。

 僕と同じように「日本史の学び直しに興味はあるけど、小難しい本はちょっと……」という人は、ぜひ本書から学び直しを始めてみてはいかがだろうか? きっと楽しく、最新の「歴史的事実」を学べるはずだ。

文=トヤカン

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