今も真実がわからない事件の真実とは……? “閲覧注意”のコールドケース89本を紹介したノンフィクション本

社会

公開日:2022/5/31

知れば知るほど背筋が凍る 世界の未解決ミステリー
知れば知るほど背筋が凍る 世界の未解決ミステリー』(鉄人ノンフィクション編集部/鉄人社)

 現在、日本や欧米における警察の捜査能力は科学の力を借りて、日々進歩している。いたるところに防犯カメラが設置され、指紋や体液による検証の精度は上がり、今や「完全犯罪はほぼ不可能だ」と耳にすることも。昔の未解決事件を知ると、「技術がもっと進歩していれば……」と思うものもある。一方で、もちろん全部の事件の真相が明るみに出るわけではなく、警察の捜査網をくぐり抜けた事件は今も昔も存在している。

知れば知るほど背筋が凍る 世界の未解決ミステリー』(鉄人ノンフィクション編集部/鉄人社)は、おもに日本人があまり知らない未解決事件にスポットをあて、真犯人が見つからない理由や現在の状況までを追ったノンフィクションだ。

 扱っている事件は89件で、殺人事件や失踪事件、ある人が謎の死を遂げた事件を種別して、背景と共に描写される。この記事では、本書の特徴を表している2つの事件を取り上げたい。なお、報道規制の違いにより海外の事件は遺体の写真が掲載されていることもあるので、苦手な人は注意しながらページをめくってほしい。

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 まずは被害者が本書の表紙にもなっている「ブラック・ダリア事件」は、日本でも認知度が高いだろう。作中にもこうつづられている。

アメリカ犯罪史上最大のミステリーとして、その後、多くの小説やノンフィクション、映画などの題材となり、今なお語り継がれている。

 事件は第二次世界大戦後まもない1947年にアメリカのロサンゼルス郊外で起きた。ハリウッド女優になることを夢見ていた美女エリザベス・ショートが凄惨な状態で発見され、警察は約750人の捜査員を動員、捜査対象者は500人にのぼった。だが不可解なのはその捜査内容だ。エリザベスの遺体の特徴から、警察は「加害者は彼女に性行為を拒まれ恨んで殺害した」と思い込んだのだ。結果としてその線から外れた捜査対象者全員は釈放された。さらに、最も真犯人の可能性が高いと言われた男は、しばらくして火事で死んだものの、この火事が事故か他殺かも明らかになっていない。当時の捜査のずさんさもあり、未解決のまま謎が謎を呼ぶ事件となってしまったのだ。

「昔、海外で起きたことだから」と切り離して考えることはできない。今から数年以内に日本で起きた事件にも解明に至っていないものがある。とある男児の水死事件もその中のひとつだという。水面に顔をつけられないほど水嫌いだった被害者が「一人で泳ぎ出し流された」との証言があったり、「助けを求める被害者を見て、怖くなって帰った」との証言があったり、なぜそのような状況になったのか、不可解なことが多いのだという。事件と事故が論議されたが、警察は物的証拠がなかったこと周囲の証言から事故として処理をし、捜査を打ち切った。その後、真相究明に向けて数万の署名が集まり、遺族は再調査を求めて警察に署名を提出、第三者委員会の設置に至ったという。

 新しい事件が起きるたびに人々の興味がある事柄は更新される。しかし、記憶を風化させないことで、未解決事件の糸口がいつか見つかる場合もあるかもしれない。89の事件を知ることで、未解決事件の真相の一端を知り、近年起きた事件に関して自分たちにできることは……と、再度考えることができるのではないだろうか。

文=若林理央

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