50年間も続く名作だからこその制作陣の苦悩も。『ルパン三世PART6』オフィシャルガイドの見どころ

アニメ

公開日:2022/6/3

ルパン三世PART6 OFFICIAL GUIDE BOOK
ルパン三世PART6 OFFICIAL GUIDE BOOK』(双葉社)

『ルパン三世』アニメ化50周年記念として、2021年10月から今年3月にかけて『ルパン三世PART6』が放映された。その興奮もさめやらぬなか、このほど双葉社よりオフィシャルガイド『ルパン三世PART6 OFFICIAL GUIDE BOOK』が発売。キャラクター集やエピソード紹介に加え、栗田貫一氏をはじめとする声優陣のコメント集や脚本家対談を収録した充実のファンブックとなっている。

 PART6では、第1クールのシリーズ構成をミステリー作家の大倉崇裕氏が担当し、基本となる「ルパン対ホームズ」の物語を執筆した。そこに散りばめるように、第3話以降から辻真先氏、押井守氏、芦辺拓氏、樋口明雄氏、湊かなえ氏といったゲスト脚本家によるオムニバスエピソードが展開される。

『ルパン三世 PART6 OFFICIAL GUIDE BOOK』では、シリーズ構成・大倉崇裕氏とゲスト脚本家・湊かなえ氏の対談も収録。大倉は第1クールのテーマを「ミステリー」に設定したこともあり、「ルパン対ホームズ」を軸とした謎解きの要素のある脚本を執筆。一方の湊氏は、ルパンたちが世界を股にかけて活躍する姿に憧れていたことや、ブラジル行きの機中でプロットを考えたこともあり、ブラジルを舞台に「峰不二子」が活躍する脚本を執筆した。

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 子どもの頃から見ていた人気キャラクターを使って自由に『ルパン三世』を書けることに対し、湊は「小説家になってよかった」とすら感じたという。しかし、オンエア前は少なからず不安もあったようだ。自分がゼロから作った作品であれば、自分が全責任を負えばいいが、さまざまな作り手が築き上げてきた世界観を自分が崩してしまうかもしれないと思うと、プレッシャーを感じるのも当然かもしれない。これについては声優陣も同じような感想を述べているのが印象的だ。

 PART6では、50年にわたって「次元大介」を演じてきた小林清志氏がエピソード0を最後に勇退し、第1話から新たに大塚明夫氏が演じることになった。大塚氏は必ずファンからの批判的な声があることを予想し、次元をどう演じるか悩みに悩んだという。なにしろ次元の声が変わることに対し、一番抵抗を感じていたのが、子どもの頃から『ルパン三世』ファンである当の自分だったのだ。しかし、勇退時に小林氏が述べた「次元は江戸っ子」「JAZZにも似ている」という言葉を聞いて活路を見出した。

 さすがに50年間も続くと、声優もスタッフもひと通り入れ替わるのは当然だけれど、『ルパン三世 PART2』から劇伴を手がけてきた作曲家・大野雄二氏だけは、今なお参加し続けている。彼が曲のアレンジについて語った言葉が、製作陣みんなの気持ちを代弁するかのように象徴的だ。

 長く続いている作品の劇伴って、新しい話が始まる度にアレンジをガッツリ変えればいいってものでもないんだよ。変えて良くなるぶんにはいいんだけど、ただ「変えるために変える」じゃ何にもならないから。(中略)時代に流されないしっかりした骨太なメロディがあった上で、それに対してどういう割合でその時代ごとに僕が自然と感じることや色々な要素を加えていったら一番いい感じになるのかな…という事は、変わらず結構気をつけているね。

 ぜひ『ルパン三世 PART6 OFFICIAL GUIDE BOOK』を通して、それぞれの『ルパン三世』に対する思い入れと作り手の苦心を感じとってほしい。きっとますます『ルパン三世』の世界観が愛おしくなるはずだ。

文=大寺明

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