続きが気になって仕方がない…SNSで話題の怪異譚『夜行堂奇譚』を読書家たちはどう読んだ?

文芸・カルチャー

公開日:2022/6/6

夜行堂奇譚
夜行堂奇譚』(嗣人/産業編集センター)

 SNSで話題の怪異譚が書籍化され、大きな反響を呼んでいる。『夜行堂奇譚』(嗣人/産業編集センター)は書籍化前からWeb上で注目を集め、YouTubeでも朗読動画が公開されるなど、高い人気を誇る作品。身の毛もよだつような描写と、恐ろしくも物悲しい怪異の世界に多くの人が魅了されている。

 物語の中心となるのは、交通事故で右腕を失って以来、霊的な存在を視ることができるようになった男・桜千早。彼は、ふとしたことから、曰く付きの品物ばかりを扱う骨董屋「夜行堂」の怪しげな美人店主の小間使いを始める。そして、千早は、その店主によって、県庁職員・大野木龍臣と引き合わされる。大野木は、ごく普通の公務員。元々オカルト的なものを毛嫌いしてきたが、県内の怪異現象を処理する「特別対策室」に異動となり、千早に怪異現象解決の協力を依頼するのだ。

 ないはずの右腕を掴む手。いじめを苦に女子高生が自殺してから語られるようになった「目には見えない犬」の噂。死者が絶えない自殺団地。皮袋を引きずり徘徊する童殺し。どこまでもループし続ける地下通路…。世にも恐ろしい怪異譚に読者はどのような感想を抱いたのだろうか。

advertisement

ちょろこ
浸っていたくなる一冊。骨董屋「夜行堂」を舞台に描かれる怪異の物語はなかなかの読ませる世界観。幕開けから色彩豊かな情景描写と静けさ、この雰囲気が良い。人の心の暗部を絡めた怪異もなかなかの味わい。

Sora
一筋縄ではいかない怪異ばかりですが、やりきれない話や不思議な話もあるだけでなく、民俗学的な話も絡んできて面白い作品でした。

ポチ
自分の身近にある怪異が引き起こす悲劇。短編だが、読み進める内に怖さが増していく。ゾクゾクしながら楽しめた。夜行堂の店主の事など続きが気になる。

5〇5
人外の美女、隻腕の霊視青年、そして真面目な公務員(!)。ユニークなキャラが楽しめます。なにしろ舞台は怪奇現象の起きる県であり、それなら専任の県職員もいるよねという設定です。怪異に纏わる短めのエピソードを積み重ねることで、この世界の全貌が徐々に見えてきます。また、この時点で名前だけ登場のキャラもいて、この世界はどこまで広がるのかという期待感も膨らみますね。

kou
面白かった!! 自身の好みのど真ん中をドストレートに貫かれた感じだった。どの話も、短いながらも読み応えがあり、次の話が気になり読むのが止められなかった。千早と大野木のコンビも最高だが、名前しか出ていない千早の姉弟子の柊の活躍も読んでみたい。是非…いや絶対に続編を出して欲しい!! 続編を読むのが待ち遠しくてしかたない。

misa
この世界観、好きすぎる(*゚▽゚*)千早と大野木のバディがとても良い!! まだ明かされていないエピソードがいくつもありそう。続編をお願いします!

さっちゃん
死者の無念が伝わる話も多く読んでいて悲しくなるけれど、千早の真っ直ぐな優しさや正義感が心に沁みる。大野木も好みのキャラで、ビジネスパートナーだった二人の絆がどんどん強くなるのも良い。残された謎も多く、次へ繋がりそうなラストで続編も期待!

なりぶぅ
ホラーやオカルトが大の苦手な私。読み始めて割とすぐに「やめときゃ良かった」と後悔するほど残酷な描写や怖さなのに、何故かページをめくる手が止められなかった。人の情念とか呪いはゾクゾクする怖さがあるけれど、それ以上に生きている人間の身勝手さとかズルさ、暴力の方がもっと恐いと感じた。それにしても千早君と大野木さんのコンビはなかなか良いです。千早君の優しさや千早君を助けに行った時の大野木さんにキュンとしちゃいました。

カフカ
少しグロテスクな表現はありますが、それぞれの編が短くサクッと怪異を解決してくれるのでテンポが良く、個々のキャラクターが魅力的なので、コミカライズ化しても人気が出そうです。謎を多く残したまま終わったので、続編があるということかな。気長に続編を待ちたいと思います。

 この本には、まるで、千早と大野木と一緒に、悪霊と向き合ったような臨場感がある。暗闇に漂う血なまぐさい臭いに、何度、背筋に冷たいものが走ったことか。悪霊が生まれた悲しい背景を知るにつれ、人間の悪意にゾッとさせられる。泣き叫びたくなるほど恐ろしい場面だって少なくはない。だからこそ、次第に紡がれていく千早と大野木の絆がますます美しく目に映る。その尊さに救われたような気持ちにさせられ、気づけばページをめくる手が止められない。

 多くの読書家たちを魅了するこの怪異譚は、これからますます大きな話題を呼ぶに違いない。あなたも、千早と大野木と一緒に、怪異の世界を覗き見てはいかがだろうか。引きずりこまれるような世界観は圧巻。続編を待ち侘びる声が多いのも納得の1冊。待望の続編も2022年秋頃刊行予定だという。こちらも楽しみだ。

文=アサトーミナミ

あわせて読みたい