カワイイ狐っ子のさらなる成長が描かれる! 人と狐の間に生まれた女子高生“きゅーこ”のほのぼのラブコメディ

マンガ

更新日:2022/6/12

ゆらゆらQ
ゆらゆらQ』(雨隠ギド/白泉社)

 抜群の美女というわけではない。だが、自分のことも周囲のことも大切にして、陽だまりのように周りを照らし、前向きに生きるチャーミングな狐っ子が主人公のマンガがある。先日2巻が発売された雨隠ギド先生の『ゆらゆらQ』(白泉社)だ。

 本作の主人公は、神社の神主である父と、神使の狐である母から生まれた9人兄妹の末っ子で、女子高生のきゅーこ。彼女には、美しくて優秀な8人の兄姉がいるのだが、きゅーこだけは背が小さく、ころっと丸くて可愛いフォルムだった。おまけに、みんなは生まれた時から使えたという、狐が持つ「化け力」の一つで、人に幻を見せて虜にする“魅力(チャーム)”という力も上手く使いこなせない。外見や能力で兄や姉にコンプレックスを抱いていたきゅーこだが、彼女は、才色兼備の兄姉たちに、魂から愛されている。

 また、幼馴染のきゅーこに恋する男子高校生・イケメンの春人にも、「今のままで十分」だと肯定され、日頃から助けられていた。しかし、外見も中身も今より素敵な女性になりたい! という気持ちが捨てきれないきゅーこ。2巻では、その思いを現実化させようと、気持ちを切り替え、CM撮影や怨念だらけの学園祭、山の神に仕掛けられた“神隠し”など、予想外のアクシデント連続の出来事に、果敢に挑んでいく様子が、愛らしくも勇ましく描かれていたのが印象的だった。

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 そんなきゅーこの急成長を、嬉しくも、少しの寂しさを覚えながら、そっと見守る兄姉や幼馴染の春人。モデルの姉に誘われたCM撮影では、まさかのハプニングに見舞われた姉のピンチを救おうと、“魅力(チャーム)”の力を使いながら、アイデアを駆使して、見事に乗り切ってみせる。また、山の神が、寂しさのあまり、きゅーこに神使としてそばで仕えていてほしくて仕掛けた、少々恐ろしい“神隠し”にも、ひるむことなく前向きに挑む。周囲を巻き込み、皆が幸せになれる道を切り開いていった物語に、とても感動した。

 きゅーこは、兄妹で一番不器用で小さくて弱いにもかかわらず、どんな自分になろうかゆらゆら悩みながらも、自分で自分のことを好きでいるために、成長することを止めようとはしない。時には嫉妬もするけれど、他者の気持ちに敏感で、人の良いところによく気がつき、知らず知らずのうちに、いつも皆を励ましている。それは、両親や兄姉、幼馴染たちに心から愛されている環境も大きいとは思うが、その優しい気持ちに感謝して、自身もまた他者の幸せを願って行動し、優しさの連鎖を止めないところは、素敵だなと感じた。

 本作は他にも、兄姉たちがきゅーこの誕生日にサプライズとして用意した爆笑必至の「異世界転生悪役令嬢フラッシュモブ」の話や、幼馴染の春人がきゅーこに恋したきっかけの切ないエピソード、完璧に思われた兄姉たちのコンプレックスなども描かれている。ほのぼのと優しい気持ちで読める作品だが、そこには、読者のハートを揺さぶる、可愛さや温もり、愛情が繊細に描かれており、心にじんわりと感動が届く。読了後も「またきゅーこに会いたい!」と、読み返してしまうこと必至、可愛い狐っ子のマンガである。

文=さゆ

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