平均寿命34歳の国で、本当に意味のある国際協力と向き合う医師の奮闘記
更新日:2012/11/20
皆さんは日本の平均寿命をご存じだろうか? 本によると男女共に80歳前後、女性の平均寿命は世界でも1位、2位を争う長さだ。「世界で一番いのちの短い国」と題されたこの本に登場するのはシエラレオネというアフリカ大陸の西に位置する国。平均寿命は34歳(2002年)であり、日本の半分以下の寿命なのである。国際協力やボランティアに少なからず興味のある私は、この内容をもっと知りたくなった。
国際協力の本というと堅苦しいイメージ。だが、この本は山本敏晴さんがこの国に医師として派遣された時の奮闘の記録が時におもしろおかしく、時に真面目に記されている。山本さんのオープンな性格と深い人格がにじみ出ていて、読み心地がとてもよかった! こんなに赤裸々に綴られていて親しみやすい国際協力の本は初めてだ。
もちろんその中には目を背けたくなるものや胃が痛くなる話もあったし、正直自分は耐えられないとも思った。だが、そういう境遇にある人々への見る目が変わったのは事実だ。そのきっかけとなったのは、著者の山本さんが繰り返し強調していた「その国の文化や風習を尊重する」というもの。「一番寿命が短い」ことが文化や風習に深くかかわっていると知った時、「シエラレネオの人々が何の原因もなく運命で不幸な目にあわされたと、だからかわいそうなのだ」という変な勘違いがはっきりと正されたわけである。寿命が短いという事実の背景にあるものを理解できただけで、それだけでもこの本を読んだ価値はあったと思った。
テレビのCMや電車の広告、普通に生活していても知らぬうちに目に入る情報だけで国際問題を知ったような気になってはいけないと痛感。日本のメディアに映るアフリカの子供たちの姿、心のどこかにひっかかっている方はぜひ手に取っていただきたい。もちろん国際ボランティアそのものに対して、山本さんが真摯に向き合う様子が綴られている。ボランティアに興味がある方は山本さんと共に、「真のボランティアとは何か」について向き合ってみてはいかがだろうか。
シエラレオネ共和国、私自身も初めて知った国
何度か耳にしたことのある「子ども兵」。その実態に愕然としました
シエラレネオに伝統的に伝わる成人への儀式。その内容は日本では考えられないものでした。そしてそれが命の危険につながる可能性があるのです
この本で一番著者が伝えたかったことのような気がします。本当に意味のある国際協力とは…。考えても考えても答えはないのかもしれない。だからこそ、そのテーマに自分なりに向き合う著者の姿勢に感銘を受けました