素敵な夜の選択肢/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』㉝

小説・エッセイ

公開日:2022/6/24

オズワルド伊藤
撮影=島本絵梨佳

この連載でも再三書かせて頂いているが、とにかく笑てまう(わろてまう)くらい休みがない。1月に20日間の大型連休を頂いたが、濃厚接触の為1秒も外に出られなかったのであれはノーカウントとした場合、今年に入ってからの休みは4月の中旬にあった1日のみ。カレンダーをスクロールして確認したところ6月現在の時点で次の休みが確認出来たのが9月。それが少し前のことで昨日確認したところ10月に引き延ばされていた。

笑てまう(わろてまう)とお伝えしたが本来は笑てる(わろてる)場合ではない。

ただ、これも再三書かせて頂いてきたが、僕はこの生活が全くもって苦ではない。

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これには幾つかの理由がある。

なにもなかったあの頃に比べたらとか、仕事が好きだからとか、もっともっと売れたいからとか。そんな僕を動かす原動力達の1つに、「素敵な夜を過ごせているから」も堂々と君臨している。

実際問題バカみたいな理由であるが現にこれがあるからやってけてるところは大分大きい。

これはなんの為にお金を稼ぐのかランキングの方にも「素敵な夜を過ごしたいから」が余裕で食い込むから。

根本的なところで言うと、僕は誰かといる時が一番楽しい。昔から地元の友達と、特になんの予定もなくただただ意味もなくグダグダと公園やら誰かんちやら車ん中で喋っている時間が超好きだった。みんなで色々なイベントに出向いたりもしたが、思い出に残っているというだけで、僕の中のメインは記憶に残らないみんなとの会話だった。ここがミソであり、ここが共有出来る相手となら結果的にどこでなにをしてようが楽しめるの。生産性とかはないの。そんなのいらないからちょっと付き合って欲しいの。

更にこの楽しみにお酒という“ドーピング”が加わると、僕にとっての「素敵な夜」ほぼ完成である。

あとはどんなに忙しくて休みなんかなくても、この素敵な夜を過ごす時間さえ余ってりゃあたしゃ動けるよ。ストレスなんて飲み干してうんこしたら原型もなくなるのよ。

そして更に“ドーピング”を加えるとしたら、最後の“劇薬”「女の子」。

女の子ってのは凄い。いるだけで空気が変わるし話題が変わる。これは冗談抜きで容姿がどうとか関係なく、地球上の全女子に総じて言えることであるように思う。

そう考えると、僕がキャバクラに通う理由も少しご理解頂ける気がする。彼女達は“劇薬”中の“劇薬”だから。

当然の如く生産性など1ミリもない時間ではあるが、辛い夜を素敵な夜に変えてくれる、変えることを生業にしている彼女達との時間に必要な対価を払うことを僕はもったいないとは思わない。僕の原動力の1つだから。

だから最近定期的に後輩芸人をキャバクラに連れて行くようにしている。生産性など1ミリもない時間ではあるが、彼らがまともな給料を頂けるようになった時、壊れそうな夜を素敵な夜に変えれる選択肢を1つでも多く持っていて欲しいから。

そんなことを、一度連れて行ったらなんか週1、2くらいのペースで1人でキャバクラに通っている錦鯉のたかしさんを見ながら思うのである。

一旦辞めさせて頂きます。

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オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020、2021ファイナリスト。


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