【第15回】最近のネット事情に違和感があったから、『一億総ツッコミ時代』を読んでみた。

更新日:2013/8/8

さて帯を引用。

Twitterで気に入らない発言を罵倒し、
ニコ生でつまんないネタにコメントし、
嫌いな芸能人のブログを炎上させる。
ネットで、会話で、飲み会で、目立つ言動にはツッコミの総攻撃。
自分では何もしないけれど、
他人や世の中の出来事には上から目線で批評、批難——。
一般人がプチ評論家、プチマスコミとかした現代。
それが「一億総ツッコミ時代」だ。
動くに動けない閉塞感の正体はこうした
「ツッコミ過多」にある。
「ツッコミ」ではなく「ボケ」に転身せよ。
「メタ」的に物事を見るのではなく「ベタ」に生きろ。
この息苦しい空気を打破し、面白い人生にするために!

ということで、
本著の内容をもうほとんど言っちゃっている帯なんですよ。
もちろん本編では詳しく掘り下げていますが、
大体は帯の感じ。
非常に共感できる。

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さて、内容に触れていきますが。
まずマキタさんは国民のほとんどが
「ツッコミ体質」になっていることを危惧されています。
異質な人や、人の失敗などに
辛辣にツッコミを入れるのが当たり前になっている、と。
確かに、日常会話でも少し噛んだりしたら「はい噛んだー!」とか、
昨日見たテレビ番組の感想を言い合うにしても
批評家目線で入ることが多いなあ。
確かに「ツッコミ体質」になっているかも。
著者はその大きな起因として鬼才・松本人志の出現を挙げていますが
これは統計がとれていないので僕はスルーしたいと思います。
他に原因として、
一般人がツッコミを入れられるメディアが
ネット普及により格段に増えたこと、
「面白い人であらねばならない」という最近の風潮、
など色々挙げております。
全部納得。
今まではローカルレベル、
すなわち井戸端会議とかクラスでの
雑談でしか出来得なかったアウトプットを今では
Twitter、ブログ、フェイスブック、2ch、ニコ動などなど、
色んなメディアで手軽にできますもんね。
あと、「面白い人」がモテ要素に入ってること。
最近の若い人の中では「ギャグセン」って言葉があるらしいですね。
ギャグセンスの略。
今までモテるには必要無かったファクターである
「笑い」がモテに必要になっている。
だから道化になる「ボケ」より
格好良くいられる「ツッコミ」が流行る。
納得だ。

さて。
著者はこれの何に危惧しているかというと、
「お笑いの上澄みだけをすくい、
人を罰するための道具として
ツッコミを使ってしまっている人も少なくありません」とのこと。
確かに、
前述でもあったように噛んでしまった時に
鬼の首を獲ったように「噛んだー!」という女の子たちとか、
ちょっとヘマしたらそれをふくらませてツッコミではなく、
もはや叱責レベルまでの言葉を投げかける、と。
これにより現代社会が大変息苦しくなっている、と
著者は叫んでいるのです。
これもわかるなあ。
でも仕方ないっちゃあ仕方ないんですよね、これ。
面白くあらねばならない、
ツッコミをしなければならない風潮になっているけど、
みんながみんなお笑い芸人に匹敵するほどの
「ギャグセン」を持っているわけでもない。
松本人志さんのように豊富なボキャブラリーがあるわけでもない。
その中でもツッコまなきゃいけない。
となったら一番幼稚でレベルが低い「噛む」という行為くらいしか
対応できないんですよね。
キャパ不足。

という風にツッコミの人員が過多なこの時代、
著者はあえて「ボケ」になることを薦めています。
ツッコミがある意味自己防衛で、
他人を攻撃することで
自分の弱さを隠したり守ったりするものであるのに対して、
ボケであるのは自分をさらけ出すことだし、
自分自身と向き合う作業でもあるわけですよね。
ツッコミができるキャパシティーもないくせに
そういった防衛本能のためにツッコミをやるくらいなら、
周りにいじられたりバカにされるようなことになろうとも
ボケ役にまわるほうがずっと生きるのが楽になる、
呼吸がしやすい生活になるということを
著者は色々な例を出して説いています。
その具体例やトピックが若干散漫になっていて
後半部分はまとまりが無い印象がありそこが少し残念でした。
けど一つ一つ言っていることは的を得ていることだらけでした。

結論として、
ネットなどで血眼になってあら探しをしてツッコミをする生活は
とても息苦しく不毛なものであって生産的ではない。
それよりも、
ツッコミ側にイジられようが何されようが
あえてボケ側に回って夢中になって自分の道を突き進む。
その方が気楽に生きられるし力強さだって手に入れられる。
よし。
自分に置き換えるか。
まず、批判などはしない!
まあ、今までもそういったことはあんまりするタイプじゃなく
してこなかったから大丈夫かな、これは。
次。
いわゆる「ツッコミ」の人たちに中傷などをされた時。
「ああ、自分を守るために必死にスケープゴートを探しているんだなあ、
お気の毒に。」と思うようにする!
これは難しい。
本能でイラっとしてしまう時が多いですからね。
でも、この本を読んで
「ツッコミ」側の事情ってのもよくわかったし、
時代に振り回された結果
そうなってしまったという悲哀も感じられるし、
今までとは少し見方が変わってきました。
自分のコンプレックス、
劣等感を隠したいからツッコミに回ってしまう。
そう思うとバタバタもがいている
かわいそうな人たちだとも思えてきます。
これから僕も色んな活動をする予定だし、
絶好の「ボケ」としていろんな人にツッコまれていくんだと思います。
この本によってボケでいることの強さ、
かっこよさみたいなものを学んだので、
胸を張って歩いていきたいと思います。
よーし、どんどんボケたおすぞー。