『新もういちど読む山川世界史』『N』――この夏、旅先で読みたい1冊【ダ・ヴィンチWeb推し本+】

文芸・カルチャー

更新日:2022/7/4

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ダ・ヴィンチWeb編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。7月のテーマは、「旅先で読みたい1冊(2022)」です。

“空はいつもシャッターチャンスにあふれている”『空の辞典』(小河俊哉/雷鳥社)

空の辞典
空の辞典』(小河俊哉/雷鳥社)

 高層ビルが乱立する東京だからなのか、平日は空を見上げる心の余裕がないからなのか、週末や旅先で急に「あ、空ってこんなに綺麗だっけ」とか「地球は大きいんだな」と当たり前なことにしみじみする瞬間がある。四季によってもだし、見上げた時間、見上げた場所によっても、様々な表情を見せてくれる空ひとつひとつに名前がある。朧雲、かなとこ雲、レンズ雲……『空の辞典』を開くと、その数に驚くとともに、情緒的な名前と由来、字面にうっとりしてしまう。旅先で見た美しい空を名前とともに心に刻んでおく。その空に再び出会えた瞬間、あの日の旅の記憶が蘇る。素敵じゃないだろうか。(中川寛子/ダ・ヴィンチWeb副編集長)


勉強し直す……ではなく、ノスタルジック旅の演出役に『新 もういちど読む 山川世界史』(「世界の歴史」編集委員会/山川出版社)

新 もういちど読む 山川世界史
新 もういちど読む 山川世界史』(「世界の歴史」編集委員会/山川出版社)

 つまらない勉強のためだけの存在だと思っていた教科書を大人になってから開くと、純粋に読み物として楽しめるのはちょっとした不思議体験だ。本書は私が高校生の時に使っていたもののリニューアル版。カラーページやコラムが追加されていて、記憶はあいまいだけど豪華になっているのは間違いない。教科書というのは、教室はもちろん、駅のホームやバス停、電車やバスの車内も似合うので、電車やバスを使う旅のおともにピッタリなのである。若かりし頃に目にした人名や単語がどのページにも並んでいるので古い映画を観ているような感覚になるし、定期テストの時に焦ってほぼ全ページの全文をマーカーペンでなぞっていたあの頃を思い出すのだ。この郷愁に似た感覚が、結構クセになる。(坂西宣輝)



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旅先で宝探しがしたくなる! 『川や海で子どもと楽しむ きれいなだけじゃない石図鑑』(柴山元彦/大和書房)

川や海で子どもと楽しむ きれいなだけじゃない石図鑑
川や海で子どもと楽しむ きれいなだけじゃない石図鑑』(柴山元彦/大和書房)

 先日、上野で「特別展『宝石 地球がうみだすキセキ』」に行った際、母岩に埋まったまま顔をのぞかせる宝石を見て、小学生の頃を思い出した。近所の川べりを友人と何時間もうろつき、透明な石や色みがかった石を拾っては箱に集めていた。価値の問題ではなく、それは子どもにとってまさしく宝物で、ワクワクした気持ちを今でも覚えている。本書は日本各地の川原や海辺で鉱物が探しやすいよう構成されていて、さらに手にした鉱物の楽しみ方や手入れ、飾り方までを分かりやすく教えてくれる。この本を片手に鉱物探しに行くもよし、旅先の川や海でふと足元に目を向けてみるもよし。日本中に“宝物”が転がっていると考えると、ただの観光にとどまらず、行きたい場所がどんどん増えてしまいそうだ。(遠藤摩利江)


読む順番を選べるユニークな1冊を旅のおともに『N』(道尾秀介/集英社)

N
N』(道尾秀介/集英社)

 旅のおともにする本は、たいていミステリー小説だ。「読む順番で、世界が変わる」というコピーがワクワクする本書は、全6章をどの章から読むかを読者が選べるユニークな1冊。そうなると俄然、頭から素直に読むことができず、“自分なり”の順番を模索しながら読み進めるのだが、章ごとのつながりに気づき「なるほど~」となるうち、あっという間にそれぞれの世界に引き込まれてしまう。一つひとつの章は独立しているので、旅の移動中に、1章ずつ読めるのも良い。昔訪れた旅先が、今行くとまた違って見えるような読書体験だった。(宗田昌子)

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