パサパサの冷や飯にふりかけ。兄妹揃ってこんなメニューが好きなんて/大久保佳代子『まるごとバナナが、食べきれない』①

文芸・カルチャー

公開日:2022/10/26

大久保佳代子著の書籍『まるごとバナナが、食べきれない』から厳選して全6回連載でお届けします。 今回は第1回です。家族、恋愛、友情、仕事、そして…ひとりで生きること。数々のバラエティ番組で大人気活躍中の大久保佳代子さんが、「変化と分岐の40代」を食の思い出を通してユーモラスに描きます。“妙齢の女性”たちに元気を与え、「わかる!」「あるある!」と共感を集める等身大の人気エッセイをお楽しみください。ある事件がきっかけで10年間”ギクシャクした時代”もあった兄だけど…。

まるごとバナナが、食べきれない
『まるごとバナナが、食べきれない』(大久保佳代子/集英社)

冷や飯とふりかけ。兄妹だから、わかる味

なんやかんや言いつつも仲が良い、大久保家の兄妹

Marisol 2019年7月号

 つい先日、仕事仲間から「大久保さんのお兄さんからツイッターをフォローされました」という報告が。

 うちの兄、本当によくコレをやるんですよ……。正体がバレなきゃ別にいいんだけど、今まで何度か一緒にテレビに出たことがあるうえに、アイコンがまさかの私とのツーショット画像。

 気を遣ってフォローを返した仕事仲間と知らぬ間に、私を飛び越えて連絡を取り合っていたりして。本当、恐ろしいですよね。

 

 その根底には応援の心というか、「佳代子をよろしくお願いします」的な気持ちがあると思うんだけど(そう信じたい)。アイドルグループ『恵比寿マスカッツ』のメンバーをガッツリフォローしているあたりからして、若干の疑惑は残りますよね。

 

 また、どこで情報を入手しているのかわからないけど、会うたびに「レギュラー番組減ってないか」とか「あの番組、視聴率低かったよな」とか、ズカズカと土足で踏み込むような発言を連発してくるっていう。

 本当にもう少し学んで欲しい、業界の常識とマナーとデリカシー。

 

 今でこそ、なんやかんや仲が良い大久保家の兄妹ですが、実は、過去には関係がギクシャクした冬の時代も。

 あれは思春期の抑えきれない性欲を発散すべく、兄の部屋でエロ本を探し回っていた中学生の頃。ラベルに「武田信玄」と書かれたVHSのビデオテープを発見。何気なくビデオデッキに入れてみたら、これがまた見事なエロビデオで。誰もいないリビングで鼻息荒く鑑賞していたら、帰宅した兄とまさかの鉢合わせ。

 そこから気まずくなっちゃってねぇ。

 関係を修復するのにかかった時間、10年以上。雪解けのきっかけはズバリ酒。

 兄妹二人して酒飲みだから、帰省するたび自然と一緒に飲むように。さらには同じ親からもらった肝臓だからか、飲む量も飲むペースもよく似ていて。気付けば、良い飲み仲間になっていたんだよね。

 

 幼い頃は仲が良かったものの、「武田信玄」事件以降は空白の時間が。

 振り返ると、兄と過ごした時間って本当に少ないんだよね。でも、兄妹って不思議なもので……。こないだ、兄がツイッターで「誰にも理解されないんだけど、冷たい白飯にふりかけをかけて食べるのが好きなんだよな」と呟いていて。それを見た瞬間「私も同じ!」と驚いたんですよ。

 仕事に行く母が土曜の昼食用に作って置いといてくれた、冷たいおにぎりや弁当の冷えたごはん。そこに添えられていた『のりたま』や『ゆかり』。私達はやっぱり同じものを食べて育っているんだなあって、そこで改めて思ったりしてね。

 

 私が持たない家庭を持ち、子どもを大学に進学させ、親の近くに住んでくれている。そこには感謝しているし、尊敬もしている。

 そんな兄に伝えたいことがあるとしたら「倒れず元気でいて欲しい」。仕事のストレスもあるだろうし、なんせ酒飲みだから。

 

 とりあえず、たまにツイッターに載せている紙パックの安いワイン。あれは悪酔いするからやめたほうがいい。あと、ネットで「大久保佳代子」を検索するのもほどほどに。そこでネガティブな情報を拾ってこなくていいから、そういうの求めてないから。

 健康の維持だけでなくデリカシーの鍛錬も、どうぞよろしくお願いします。

パサパサの冷や飯に乗った、歯茎に当たって痛いくらいのふりかけ。兄妹揃って、こんなメニューが「好き」なんて不思議よねぇ。あと先日、兄から「アレは武田信玄じゃなくて伊達政宗だよ」との訂正が入りましたので、ご報告させて下さい。

<第2回に続く>

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