SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第16回「昨日見た夢の話なんだけどさ」

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公開日:2022/10/27

 人と話をするのが好きだ。自分が知らないことを知っていたり、自分より面白い体験をしていたりという根底が好奇心の場合ももちろん、この人と話してたらなんか落ち着くとか、そういった理屈では説明出来ない場合も、そう。

 常に誰かと繋がっていたいという願望がない自分にとって、この一瞬のコミュニケーションは掛け替えのないものであり、自分の思考、行動の選択においてかなり重要視している大切なものである。

 その人のパーソナリティがうかがえるのも良い。話題、選ぶ言葉、話すスピード、声のトーン、語気の強さ、目線。当たり前の話だが、人柄がもっとも顕著に出ると思う。そこからその人の魅力の源を発見出来た時には(もちろん逆もある)、すごくワクワクしてしまうのだ。

 だから話をするのが好き。人の話を聞くのも、自分が話すのも。もちろん誰でも彼でもというわけにはいかないが、相手がどんなことをどんな風に話すのか、大いに興味がある。

 しかし。そんな私でもNGな話題が一つある。厳密に言うなればうまく話せないならNGということになるのだが、この話題でうまく話せた人にあまり出会ったことがない。

 夢の話だ。

 もちろん野心や目標を指す夢ではなく、眠りについた時に見る夢のことである。「昨日見た夢の話なんだけどさ」は、これから始まる約五分間が地獄になることを暗示するものだと思っている。

 というのも、やはり己ワールドで巻き起こる荒唐無稽な話が殆ど、しかも虚像であるときた。話題すべてに生産性を求めているわけではないのだが、心苦しいが仕舞いまで聞いたところで「え?」か「は?」になることが常。正直、苦しい。ごく稀にその人が、エンターテイメントとして完成させる凄腕おしゃべり師であるパターンもないことはないのだが、それこそ、そんな夢の様な展開は絶対に期待してはならない。

『夢の話マジやばくね思考』が私に備わったのには明確なきっかけがあった。あれは高校の昼休みだった。大事な休み時間の全てを掛けて夢の話をされたことがあるのだ。昼休みがおしまいになることを告げるチャイムが鳴った時、まアまア仲の良かった彼女が一仕事終えたような風体であったのに対し、私は半べそだった。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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