誰でも発症する可能性あり。うつは「心の骨折」みたいなもの/家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

暮らし

公開日:2022/11/10

 大切な人がふさぎ込んでしまった、苛々して攻撃的になった、まるで別人になってしまった…もし身近な人が「うつ」と診断されたら?

 下園壮太、前田理香著の『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』は、「うつ」と向き合うために知っておきたいポイントを、数多くのカウンセリングを行なってきた著者がわかりやすく解説しています。

 うつは「弱さではなく、単なる疲労」。どんな人でもかかりうる、心の疲労骨折のようなもの。正しく理解することで不安を取りのぞき、「うつ」になった大切な人に寄り添いながら、自分も大切にする方法がわかる1冊です。

 うつ病は遺伝のせい? それとも性格のせい? 正しい認識を持ちましょう。

※本作品は下園壮太、前田理香著の書籍『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』から一部抜粋・編集しました

※症状などは個人差があります。ご了承の上、お読みください。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本
『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』(下園壮太、前田理香/日本実業出版社)

うつ病は遺伝のせいでも性格のせいでもなく、誰でも発症しうる心の骨折

うつ病について正しい認識を持とう

 あなたは、「うつ病」にどんなイメージを持っていますか?

 テレビや新聞、雑誌などで特集を組まれることもありますから、「うつ病」という名前をまったく知らないという方は、少ないと思います。

 ただ、心の病気だとは知っていても「具体的にはよくわからない」という方が多いのではないでしょうか。

 なかには「気持ちの問題じゃないか」とか、「自分には関係ない」「一度かかると治らない病気」といったイメージを持っている人もいるかもしれません。

 そのようなイメージを持っていると、いざ家族など大切な人がうつ病になったと聞くと、本人以上に動揺し、どのように接すればいいのかわからず混乱し、腫れ物に触るように避けてしまったり、反対に過剰に世話を焼いてしまったり、距離の取り方がわからず、大切な人との信頼関係を損ない、自分も大きく傷ついてしまいがちです。

「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」(孫子)
(敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない)

 まずは、あなたが落ち着いて対応できるように、「うつ病」のメカニズムを理解していきましょう。

 

うつ病は遺伝のせい?

 カウンセリングをしていると、「うつ病は遺伝しますか?」とか、「祖父がうつ病だったので遺伝したのでしょうか?」といったご質問を受けることがあります。

 うつ病は、何か特定の遺伝子のみで発症する、というものではありません。

 例えば、「骨折」で考えてみましょう。

 あなたは骨折をしたことはありますか?

 私は、30代の頃右足を骨折し、1か月ほどギプス生活をした経験があります。

 20代から60代の600人に聞いた調査では、約3割の人が「骨折したことがある」と回答しています。

 骨折の原因は大きく分けて次の3つがあります。

・交通事故や転倒などのケガによるもの
・過度の運動で特定の部位が疲労して起きるもの
・病気によって骨がもろくなって起きるもの

 3つめの「病気によって骨がもろくなって起きる」ケースには、骨粗しょう症(加齢などのために骨がもろくなる病気)や、ガンの転移(骨にガンが転移すると骨がもろくなる)などがあります。骨粗しょう症には遺伝的要素があり、家族にこの病気の人がいる場合、骨粗しょう症にかかるリスクは上がります。

 ところが一般的に「遺伝で骨折する」とは言いません。

 それは、遺伝的な要素で骨折するよりも、転倒などで骨折する人が圧倒的に多いからです。私が骨折したときに、誰かが「遺伝のせいじゃない?」と言ったら、私はとてもびっくりしたでしょう。

 うつ病も同じです。うつ病は、遺伝的な要因があるという研究もありますが、「この遺伝子があれば必ず発症する」というものではありません。現実には、遺伝以外の他の要素の影響を受けて、うつ病になるほうが圧倒的に多いのです。

 

うつ病は性格のせい?

 では、性格ではどうでしょう?

 これも「骨折」にたとえて考えてみましょう。

 性格が内向的で慎重な人よりも、外交的でそそっかしい人のほうがケガをしやすい、というのはあるかもしれません。運動では我慢強くて粘り強い人のほうが疲労骨折につながりやすいかもしれません。

 そういう意味では、性格の影響がまったくないとはいえないでしょう。

 それでも、骨折した理由を「性格のせい」と断言する人はほとんどいないでしょう。それは、どんなに慎重に行動していても、事故などで骨折をしてしまうことは、誰にでも起こりうることだからです。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

 うつ病も、真面目で責任感が強く、我慢強くて頑張り屋さんな性格は、ストレスをため込みやすくうつ病になりやすい、といわれています。たしかにそのような性格は、より多くのストレスを抱えてしまうかもしれません。

 また、なかには、本人自身が「私が弱いから」とか「ポジティブに受け取れないから」と、自分の傷つきやすさや、弱気な性格が、うつの原因だと思っているケースもあります。

 では、うつ病になる人は、みな同じような性格なのでしょうか?

 そうではありません。

 実際には、いつもはのんきで責任も感じにくい人や楽観的で気持ちの切り替えの早い人、自分の意見をハッキリ主張できるタイプの人でも、うつ病になります。

 

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