疲労困憊によるエネルギー枯渇に注意! 自覚しにくい「頭脳疲労」「感情疲労」/家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

暮らし

公開日:2022/11/11

 大切な人がふさぎ込んでしまった、苛々して攻撃的になった、まるで別人になってしまった…もし身近な人が「うつ」と診断されたら?

 下園壮太、前田理香著の『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』は、「うつ」と向き合うために知っておきたいポイントを、数多くのカウンセリングを行なってきた著者がわかりやすく解説しています。

 うつは「弱さではなく、単なる疲労」。どんな人でもかかりうる、心の疲労骨折のようなもの。正しく理解することで不安を取りのぞき、「うつ」になった大切な人に寄り添いながら、自分も大切にする方法がわかる1冊です。

 うつ病を発症するケースはさまざまですが、圧倒的に多いのが疲労困憊してしまった場合。自覚しにくい疲労には要注意!

※本作品は下園壮太、前田理香著の書籍『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』から一部抜粋・編集しました

※症状などは個人差があります。ご了承の上、お読みください。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本
『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』(下園壮太、前田理香/日本実業出版社)

心の不調の原因は解明されておらず医師によっても見解が異なる

うつ病を発症するケース

 ここまで、「うつ病は遺伝や性格とはあまり関係ない」ということをお伝えしてきました。では、うつ病のような心の不調はどうして起こるのでしょうか?

 うつ病を発症するケースには、次のようにさまざまなものがあります。

・親しい人との死別や離婚といったショックな出来事を体験した場合
・環境の変化が続いた場合
・更年期や出産などのホルモンバランスの乱れによる場合
・降圧剤やガンの治療薬であるインターフェロン製剤などの副作用による場合
・脳血管障害や感染症などの病気による場合
・疲労困憊してしまった場合

 さまざまな目的の分類や統計がありますが、ケアを主体とする私たちが現場で感じるのは、この中でも特に「疲労困憊」によるものが圧倒的に多いということです。つまりエネルギーが枯渇してしまったケースです。

 

3つの疲労

 疲労には、運動や労働など筋肉を動かし続けたときに起こる「肉体疲労」と、勉強や仕事など頭を働かせ続けたときに起こる「頭脳疲労」、自分の感情をコントロールし、嫌なことを我慢したり、無理に明るくふるまうことを続けたりしたときに起こる「感情疲労」の3つがあります。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

 疲労は、痛みや熱と同じく、「これ以上は危ない」と体の異常を知らせるアラームですが、体で感じる「肉体疲労」に比べ、「頭脳疲労」と「感情疲労」は自覚しにくいため、対処が遅れ、エネルギータンクが枯渇して、うつ状態になって初めて自覚するということも多いのです。

 

脳の中で何が起こっているのか?

 じつは、うつ病になるメカニズムは科学的に完全には解明されていません。

 ただ、ストレスによってうつ状態になるときに、脳や体の中でどういう変化が起きているのかについては、少しわかってきています。

 人間が不安や恐怖(ストレス)を感じると、脳の中の扁桃体が興奮して「不安や恐怖に対処せよ」という指令を出します。

 その指令が視床下部という部分に伝わると、今度は視床下部が副腎に「ストレスと闘うための準備をせよ」という指令を出します。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

 すると、副腎からアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールといった「ストレスホルモン」が分泌されます。

 これらは、「闘争・逃走ホルモン」とも呼ばれ、私たち人類に原始人の時代から、備えられたものです。生きるか死ぬかの瀬戸際で私たちの体と心を命がけの活動ができる状態に準備してくれます。

 わかりやすいように原始人の例で説明してみましょう。

 原始人が食料を探して森を歩いていたら、突然猛獣と遭遇してしまいました。

 驚いた原始人の体の中では、ケガをして出血してもすぐに血が止まるように、毛細血管が収縮し血液はドロドロになります。

 危機を乗りきるためには、体を動かす必要がありますから、そのドロドロの血液を筋肉にいきわたらせるために、心臓はドクドクと強く脈打ちます。

 急所である首やお腹を守るため、肩に力が入り背中を丸めます。圧迫された肺に酸素を取り込むため、呼吸は浅く速くなります。そして「逃げるか闘うか」を瞬時に判断するため集中力が高まります。

 これは、私たちが「驚きのプログラム(アプリのようなもの)」と呼んでいる変化です。

 

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