今どの段階? うつ状態の進行・回復の「5段階」を知って、回復過程をイメージしよう/家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

暮らし

公開日:2022/11/14

 大切な人がふさぎ込んでしまった、苛々して攻撃的になった、まるで別人になってしまった…もし身近な人が「うつ」と診断されたら?

 下園壮太、前田理香著の『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』は、「うつ」と向き合うために知っておきたいポイントを、数多くのカウンセリングを行なってきた著者がわかりやすく解説しています。

 うつは「弱さではなく、単なる疲労」。どんな人でもかかりうる、心の疲労骨折のようなもの。正しく理解することで不安を取りのぞき、「うつ」になった大切な人に寄り添いながら、自分も大切にする方法がわかる1冊です。

 うつ状態の進行、回復は、大きく5つの段階に分かれます。回復過程をイメージして、焦らないようにしましょう。

※本作品は下園壮太、前田理香著の書籍『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』から一部抜粋・編集しました

※症状などは個人差があります。ご了承の上、お読みください。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本
『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』(下園壮太、前田理香/日本実業出版社)

「体の不調開始期」「別人モード開始期」「底期」「回復期」「リハビリ期」うつの状態の5段階

「体の不調開始期」

 うつの状態の進行、回復は、大きく5つの段階に分かれます。

「体の不調開始期」は、蓄積した疲労によって、文字通り体調が変化を始める時期です。

 まず、その人の身体的に弱い部分から変化が出始めます。肩こりや腰痛、頭痛がひどくなったり、喉の弱い人は喉が腫れたり、アトピーが悪化したり、さまざまな不調が現れます。

 また、多くの人が、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、朝早く目が覚めてそれから眠れなかったりする、睡眠のトラブルを感じ始めます。

 胃の調子が悪くなったり、そうでなくても食欲がなくなったりする方も多いようです。無理をして食べてもおいしく感じなくなっていきます。当然、体重が減っていきます。

 ただ、若い方の場合、なんとなく感じる苦しさを紛らわせるため、甘いものなどを食べ過ぎる人も多いようです。そういう方は体重が増えてしまいます。

 睡眠も取れず栄養も摂れていないこともあり、頭が回らなくなっていきます。新聞を読んでも、目は文字を追っているのに意味が頭に入っていかなかったり、仕事中なのに気がつくとボーっとしてしまったり、メールの返信が遅れ気味になったりもします。「頭に霧がかかったよう」と表現する方も多いようです。

 疲れが抜けず、体が重くだるい感じになり、動くのがしんどくなっていきます。「〇〇をしなければ」と考えるだけで億劫にもなります。

 ただ、この時期はまだ、切迫した精神症状が現れていないことが多いのです。

 いろいろな身体的なトラブルに対し、自分なりの対処をするのですが、あまり効果はありません。頑張ろうと思えばまだ頑張れる時期なので、ついつい職場や学校で無理をして元気にふるまったり、いつも通りの行動をしてしまったりしがちです。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

「別人モード開始期」

「体の不調開始期」に疲労が解消されずにいると、「別人モード開始期」に入っていきます。

 身体不調は悪化しながら続いていきます。不眠が続くと、頭が回らなくなるため、仕事や勉強がはかどらなくなっていきます。ミスや物忘れも増えるため、「自分はなんてダメなんだろう」「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」と強い罪悪感で自分を責めたり、これまでできたことができなくなることで、どんどん自信を無くしたりしていきます。

 すると、「周りに迷惑をかけていて、役に立たない自分は、周囲からどんな目で見られているのだろう」と、周囲の視線が気になり始めます。遠くで同僚2人がチラッと自分を見ただけで、「あぁ、私の悪口を言ってるんだろうな」と感じてしまいます。

 何か叱られるのではないか、責められるのではないかと思い、人を避けるようになります。妙にイライラしたり、わけもなく涙が出たりもしてきます。

 表情も乏しくなり、疲労感や負担感からお風呂に入らなくなったり、洗濯や掃除ができなくなったりしていきます。

 自分で自分をコントロールできなくなり、「自分はおかしくなってしまったのではないか」「壊れてしまったのではないか」と感じるのがこの時期で、「死にたい」気持ちが表れることもあります。

 ただ、そうなっても、まだ一時的には頑張れるときもあるので、自分自身で必死に「なんともない、気のせい、我慢すれば乗り越えられる」と思い込もうとします。

 精神的なつらさを自分に偽り、周囲にも隠すので、周囲も気づきにくくなります。これを「表面飾り」と呼んでいますが、外面を装えば装うほど、ひとりになったときに、どっと疲れが出て体調を悪化させてしまうのも、この時期の特徴です。

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