SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第18回「おかわり」

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公開日:2022/12/27

 心がさもしいと感じることほど、私を虚しくさせるものはない。もちろん自分に対して、そして人に対しても思う。

 それを感じさせるのは、モノを盗みましたヒトを殺めましたなどの罪になる明確なタブーではなく、生きていく上でのルールとまでは言えないものである。だからなおさらに虚しく感じるのかもしれない。

 道徳や倫理という言葉だけでは片付けられないようなことが、世の中にはたくさんあったりする。

 なんて、そんな重たい話でもないのだが。

 

 少し前の話になる。某定食屋さんのご飯のおかわり無料が廃止になった。

 個人的にはまともにご飯を食べることが難しかった時代、某定食屋さんのおかわりで命を救われた場面が何度もあったので、それを知った時はなかなかの衝撃を受けた。

 やはり、私のようにトンカツ一切れに対しておかわり一回するような無法者が少なからずいて、無遠慮に店に甘えるそんな奴らが経営を苦しめてしまう結果に至ったのだろうか、と心が痛んだ。

 とられた施策は、おかわりに対して三十円から百円の料金追加。まア非常に残念な話ではあるが、妥当な金額であるような気もした。

 ただ、世話になった身としてはありのままを受け入れるのではなく、事の顛末も知る必要があると思い動機を調べた。廃止の理由はすぐに判明した。

「おかわりをする人としない人で同じ値段だということに不公平感があるという意見があった」

 まアそりゃそうだ、と言ってしまいそうになる。私のように五杯も六杯もおかわりするような人と、予めご飯を少なめに注文するような人が、同じ値段であることはそもそも少し妙な話であるかもしれない。

 しかし、やはりどこかに違和感がある。なかなかどうして気持ちが良くない。

 この不公平感を提示したのは、間違いなくおかわりをしない人だろう。意見はもっともだし間違っていることは言っていないと思う。ただ厳密に言えば、このシステムによって損をする人はいないはずなのだ。損になる場合であったなら納得は出来るのだが。

 例えばこれが、損を基準にした意見だったのだとする。

 まずは値段がおかわりを加味した設定になっているとして(きっとそうなのだろうけど)、自分がおかわりをしなかったことが損になり得るのだろうか。金銭に応じて付与された権利を自分が使わなかったことは果たして損と呼べるのだろうか。ちなみにこの某定食屋さんは、定食以外はおかわり無料が適用されていない。だからもし、それを損と捉えるならば、損しない定食以外のメニューを頼めばいいと思う。「でも定食食べたい」なんて意見が出てしまうとするならば、きっと端からこの店じゃないんだと、私は思う。

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渋谷龍太●1987年5月27日生まれ。ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2005年にバンド結成、2009年メジャーデビュー。2011年レーベルを離れ、インディーズで活動を開始し、年間100本のライブ活動をスタート。大型フェスにも参加し、2018年には日本武道館単独公演を開催。2019年に兵庫・ワールド記念ホールと2020年1月には東京・国立代々木競技場第一体育館で初のアリーナ単独公演を開催。チケットを即日ソールドアウトさせる。結成15周年を迎えた2020年4月にメジャー再契約。2021年、「愛しい人」がドラマ『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)の主題歌に、「名前を呼ぶよ」が映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用された。また、自身最大キャパとなるアリーナツアー「SUPER BEAVER都会のラクダSP〜愛の大砲、二夜連続〜」を日本ガイシホール、大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナで開催。自身”初”のドキュメンタリー作品「The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』 Release Tour 2022 ~東京ラクダストーリー~」が9月28日(水)に発売。ニューシングル「ひたむき」を11/30(水)にリリースする。

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