【第24回】Kindleとはどう違う? BookLive!のLideo研究&来年の電子書籍市場を予想してみた
更新日:2013/8/14
かべ :クリスマス、お正月……冬休みか……うーん。
まつもと :むずかしい顔されてどうしました?
かべ :いえ、本を読む時間がありそうなので、自分用の電子書籍端末どれにしようかと。
まつもと :かべさん、まだ持ってないんでしたっけ?
かべ :えへへ、実は……。編集部にはもちろん沢山あるんですけどね。
まつもと :たしかにKindleもスタートして、今年は電子書籍の当たり年――あえて元年とは言いませんが――になりましたね。それでは、先日発売されたBookLive!の電子書籍専用端末“Lideo(リディオ)”の特徴を確認しつつ、来年の予想もしてみましょうか。
BookLive!の電子書籍専用端末“Lideo(リディオ)”ってどうなの?
かべ :この連載でも何度も取り上げているKindleはもちろん候補なんですが、BookLive!から先日発売されたLideoもちょっと気になってます。よく立ち寄る三省堂書店さんで「売り切れ!」って書かれたポスターを見て以来・・・。
まつもと :スーパーで買い物するノリですね。でも確かに、書店連携などユニークな取り組みが目を引きます。まず、「箱から出してすぐ使える」点。
かべ :あれ? まつもとさん、Kindleもすぐ使えませんか? 箱から出すと画面に自分のユーザー名が表示されていて、ログインした状態になっていますよ。
まつもと :あれは、アマゾンでKindleを購入した時点で、ログインできている=会員登録が済んだ状態だからできているんです。その情報をあらかじめ設定して出荷しているわけです。
かべ :あ、なるほど。Lideoの場合はどういう仕組みなんでしょう? 書店で購入したら会員登録とかない状態で持って帰ることになるわけですよね。
まつもと :規約の同意と、パスワード・生年月日を入力したら使い始めることはできます。BookLive!さんからお借りしたカタログにもこうありますね。
かべ :なるほど。Kindleよりもひと手間多く見えますが、セットアップが必要なkoboに比べても簡単だし、アマゾンのようにサイトでのアカウント作成の必要もないわけですね。あれ? でも本を買うときはどうするんだろう?
まつもと :クレジットカードやWebMoneyなどの電子マネーで購入する手続きをします。電子マネーにも対応しているので、クレジットカードを持っていない人でも安心という触れ込みですね。あと、三省堂書店の有楽町店・神保町店に限られますが、バーコードのついた本をレジに持っていくと現金で決済できるというユニークな取り組みも始まっています。
かべ :へー! フラッと立ち寄った本屋さんでついついたくさん本を買ってしまって「荷物重ッツ」ってならずに済むわけか。いいかも。
まつもと :あとは、現状ラインナップされている電子ペーパー端末と比較すると、通信機能(WiMAX)が内蔵されているのも大きな特徴ですね。
かべ :それって無線LANと違うんですか?
まつもと :違います。外出先でも、Wi-FiスポットやWi-Fiルーターを使わなくてもネットに接続して、本を購入したり、購入済みの本をダウンロードできるんです。しかも通信費は無料。
かべ :無料!
まつもと :Kindleやソニーリーダーの3Gモデルと近いですね。ただ、わたしもWiMAXを使っていますが、通信エリアは3G/LTEに比べるとちょっと限定されるかなという印象です。三省堂書店にはアクセスポイントを置くということですが、地下や建物の中だとダメだったりしますので、そこは割り切って使う必要はあるかなと。
かべ :ふーむ。でもネットにもアクセスできるんだったらいいかな……。
まつもと :あくまでも書籍の購入やダウンロードに限定されてます。ネットサーフィンなんかはできないので注意が必要です。
かべ :なんだ……。
まつもと :でもKoboやソニーリーダーと異なりMicroSDカードに対応しないLideoですが、特別な設定をしなくてもクラウド上から本をダウンロードできるのは大きな利点です。
LideoとKindleではターゲット層が異なる
かべ :ふむふむ。箱から出してスグ使える、書店での対面販売・サポート、設定不要でネットに繋がる――なんだか、「とにかく簡単な端末を目指しました」というメッセージが伝わってきますね。
まつもと :そうなんです。BookLive!のリリースにもこんな表が載っていて、「なるほどなー」と思いました。
かべ :この青いラインがLideoのターゲット、というわけですね。
まつもと :はい。若い人の間ではスマートフォンやタブレットは使いこなしている人が増えていますから、そっちを使ってもらう(BookLive!はKindleと同様にリーダーアプリを提供している)。かなりの読書好きで長時間使っても目が疲れにくい電子ペーパーを好む人たちや、電子書籍以外の操作をできるだけシンプルにした方がありがたい、といったシニア層に向けた端末であると。
かべ :携帯電話のらくらくホンみたいな感じかー。
まつもと :ですです。逆に言えば1台でいろいろやりたいという場合には向いていませんね。けれども、たとえば、自分の親にプレゼントするといった場合には良い選択だと思うんです。
かべ :たしかに。使い方教えてってしょっちゅう電話かかってきたりしたら、ちょっと困っちゃいます(笑)。
まつもと :真面目な話をすると、Kindleが日本でもスタートした今、Lideoの【オールジャパン+リアル書店連携】というコンセプトは注目すべきポイントです。
かべ :どういうことですか?
まつもと :あんまり良い表現ではありませんが、アマゾンのKindleを「黒船」と呼ぶ人がいるのは、外資企業の巨大な流通力を背景に、日本の出版界が実質的に支配下に置かれてしまうのではないか、といった懸念があるからです。
かべ :たしかに。この連載でも販売条件など勉強しました。外資企業なので税金を納めていないという批判の声もありましたね。
まつもと :そういった批判は必ずしも当たっていない(日本企業の海外進出が盛んであったころは立場は逆だった)部分もあるのですが、日本のプレイヤーにもっと頑張って欲しいという思いはあります。Lideoは端末はNEC製、通信部分はUQ-WiMAX、書店は凸版印刷グループのBookLive、そしてリアル書店は三省堂書店となっており、オールジャパン体制をうたっています。
かべ :なるほど。
まつもと :リアル書店との連携は、アマゾンにはない要素です。実はこの戦略は北米の大手書店チェーンであるバーンズ・アンド・ノーブルが電子書籍端末Nookでとっているものとよく似ています。
かべ :たしか、書店の中で試し読みができたりするんですよね。
まつもと :ですです。書店員さんのオススメを、実際の店舗の特集コーナーのようにLideo上に展開するといったことも行われていますし、そういった強みを活かして、独自のポジションを築けるかどうかも注目しておきたいポイントだと思っています。
かべ :なるほど。ダ・ヴィンチ的にも「本の目利き」によるオススメは大歓迎ですね。うーん、でも悩ましい。個人的にはもうちょっと悩んでから決めたいと思います。
まつもと :迷うのも楽しいですからね。選択肢がこうやって増えてきたのは良いことです!