SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第19回「むかし話」

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公開日:2023/1/27

 昔から継がれてきた話というものには、当然のように教訓がある。読んだ人間の、もしくは読み聞かせてもらった人間の心に染み入るような教訓が。

 優しい人間になれるように、人様に嫌な思いをさせないように、と教訓をふんだんに入れ込んだ昔話は、ちゃんと理由を持って今世まで語り継がれてきたのだろう。

 しかし、中にはなんだか訳のわからないものもあって、今になってみると「え、何が言いたいんすか」みたいな話もある。あくまでも私の偏った見解なのだが。

 その代表格が「浦島太郎」と「こぶとりじいさん」だ。

 昔という言葉を二度も繰り返さなければならない程の遠い昔の、この話の真意とは如何に。

 

 まずは「浦島太郎」。

 亀をいじめる子供たちを、「およしなさいよ」と男が諫めるところからこの話は始まる。持ち前の優しさと、お礼をしたい旨、亀が突然しゃべり出す事態をもすんなりと受け入れられる度量のデカさが彼の魅力。

 亀に連れられて赴いた竜宮城は豪華絢爛。大変に美しい乙姫に迎えられ大いにもてなされることと相成る。夢のような時間を過ごした浦島太郎、そろそろおいとましようと腰を上げると、「絶対に開けないでください」と箱を渡される。乙姫からの土産を地上まで持ち帰り、「一服するべ」と辺りを見回すと元いたはずのその場所はすっかり様子が変わってしまっていた。どうしたものかと浦島太郎、気が動転したはずみで開けてはならない箱を開けるに至る。結果、中から出てきた煙によりおじいさんになってしまう、というお話。

 

 え?

 

 この話の教訓を未だに考え続けているのだが、現時点では「亀なんか助けるな」で着地してしまっている。

 なぜならこの話で浦島太郎という男が能動的に動いたのは、亀を助けたことと、「帰る」と言った二点。どちらも何も悪いことではないのに、最後にはおじいさんにされてしまう。おじいさんにされてしまうというより、竜宮城と現世の時の流れが違っていたため、相応の姿になっただけ、というのが正しい解釈かもしれないが、事の起こりと結末の整合性がまるでとれない。

 もう一点、箱を開けてしまったというのも浦島が自発的に行動したことかもしれないが、乙姫から箱を受け取った段階で、中身が決定付けられていたとするならば、対象外だ。

 浦島はいい奴。亀はいじめられて、助けられて、送迎しただけ。子供たちはモブ。鯛やヒラメはなんとなく踊っていただけ。じゃア、乙姫だ。彼女がただ猟奇的だったということ以外に納得が出来ない。

 大体からして、開けちゃいけない箱ってなんですか。持ち運べるデッドスペースじゃん。あと浦島もすんなり受け取るなよ、一回「どういうこと?」って訊きなよ。

 結論。

 この話の教訓は「綺麗な女性を信じるな」もしくはやっぱ「亀なんか助けるな」だ。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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