シェイクスピア『マクベス』あらすじ紹介。下剋上で王になった暴君の悲劇

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更新日:2023/4/4

 ウィリアム・シェイクスピアは、イギリスを代表する劇作家として多くの作品を残しました。特に『マクベス』はシェイクスピアの4大悲劇のなかのひとつとして高い人気を誇る作品。シェイクスピアの『マクベス』について、登場人物やあらすじをご紹介します。

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『マクベス』の作品解説

『マクベス』はイギリスの劇作家であるウィリアム・シェイクスピアが1606年頃に完成させた戯曲です。実在したスコットランドの王や将軍を登場させた作品で、王であるダンカンに重用されていたマクベスが主人公。マクベスが王を暗殺し、自ら王に即位してからマグダフという貴族に討たれるまでを描いた作品です。

『マクベス』の主な登場人物

マクベス:本作の主人公。スコットランド王ダンカンの臣下であったが、ダンカンを殺害して王に即位する。
マクベス夫人:マクベスの妻。野心と実行力はマクベス以上。
ダンカン:スコットランド王。マクベスを重用していたが、暗殺されてしまう。
バンクォー:マクベスの友人。スコットランドの将軍。
マグダフ:スコットランドの貴族。妻子をマクベスに殺され、仇討ちを心に決める。

『マクベス』のあらすじ

 3人の魔女が激しく舞を踊る場面から、物語は始まる。

 当時、スコットランド軍は反乱軍とノルウェー軍と戦っていたが、スコットランド王ダンカンはスコットランドの大勝利の報告を受ける。戦果を上げたスコットランドの将軍にしてグラミスの領主であったマクベスは、友人であるスコットランドの将軍・バンクォーとともに陣営に戻る最中であった。

 その道中、マクベスとバンクォーは3人の魔女に出会う。魔女たちはマクベスに対し「万歳、コーダーの領主」「万歳、いずれ王になるお方」などと呼びかけるのだった。そして、そこへダンカン王の使者が現れる。武勲を上げたマクベスが、新しくコーダーの領主に任命されたということを伝えに来たのである。魔女の言葉通りとなったことに、マクベスとバンクォーは驚くのだった。

 やがて城に帰還したマクベスたちはダンカン王に迎えられた。王はマクベスとバンクォーの功績を讃えながら、息子のマルカム王子を王位継承者に定めると言った。魔女の予言は実現しないかもしれない——。そう思ったマクベスはとある決心をするのであった。

 宴会が始まると、マクベス夫人は王の部屋付きの従者の酒に薬を混ぜて眠らせた。皆が寝静まったあとに、マクベスはダンカン王の寝室に向かい、王を刺殺する。「マクベスは眠りを殺した。もうマクベスに眠りはない」という幻聴を聴く。

 朝になって、ダンカン王の遺体が見つかり、城のなかは大騒ぎになる。マクベスは部屋付きの従者を斬殺して口封じをした。王子たちは王が殺されたことで身の危険を感じ、マルカム王子はイングランド、ドナルベイン王子はアイルランドへと逃げる。

 こうして王に即位したマクベスであったが、精神が不安定になり、友人であるバンクォーとその息子フリーアンスに刺客を放ち、バンクォーを殺してしまう。マクベスは心の安定を得るために魔女のもとに向かい、「女の股から生まれたものはマクベスを倒せない」「バーナムの森が侵攻してこない限り安泰だ」との予言を聞き出した。

 その直後、マクベスは有力な貴族マグダフがイングランドに亡命したという知らせを聞く。マグダフはイングランド王のもとに身を寄せるマルカム王子に、マクベス討伐について説得していた。王子はマグダフがマクベスの回し者でないことを確認すると、討伐の準備を進めていることを明かす。マグダフは直後に自分の城がマクベスによって奇襲され、妻と幼い子どもが殺されたことを伝えられ、マクベスへの復讐を誓う。

 ある日、イングランド軍がマクベスの城を攻めた。マクベスは自らを無敵と信じて城に立てこもるが、木の枝を隠れ蓑にして、「バーナムの森が動くかのように」攻めてくるイングランド軍に城が落とされていく。マクベスはついにマグダフと対峙し、「女の腹を破って(帝王切開で)生まれてきた」マグダフに倒されるのであった。

<第46回に続く>

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