ドストエフスキー『罪と罰』あらすじ紹介。「天才には殺人の権利がある」罪の意識がない犯罪者の更生は可能か?

文芸・カルチャー

更新日:2023/4/4

 本作『罪と罰』は19世紀を代表するロシア文学の最高傑作といわれています。しかし、ドストエフスキーの小説と聞くと「長い」「難解」「重い」と連想する方も多いのではないでしょうか?

 そこで『罪と罰』のストーリーを最後までわかりやすく解説します。とても面白い内容なので、ぜひ原作にも挑戦してください。

罪と罰

『罪と罰』の作品解説

 著者であるドストエフスキーは、『罪と罰』『悪霊』『白痴』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』の「5大長編」で知られるロシアの文豪。

 所属していた社会主義思想のサークルが検挙され死刑判決を受けるも、執行直前に恩赦によってシベリア流刑に減刑され窮地を逃れたという過去を持つ。そこで聖書に触れ、釈放後はキリスト教的人道主義をテーマとして扱うようになり、本作もその影響下にあるといわれている。

『罪と罰』の主な登場人物

ラスコーリニコフ:頭脳明晰な青年。自分は「選ばれた非凡人である」という選民思想を持つ。

ソーネチカ(ソーニャ):貧しい家族のために娼婦になることを選んだ少女。

アリョーナ:強欲な高利貸しの老婆。ラスコーリニコフにより殺害される。

ポルフィーリィ:ラスコーリニコフが殺人犯だと確信し、心理的証拠で追い詰める予審判事。

『罪と罰』のあらすじ

 頭脳明晰なラスコーリニコフという青年がいた。頭がよかったが、学費未納で大学から除籍されてしまう。彼はある考えに囚われていた。それは、人間は凡人と非凡人の2種類に分けられる。社会を発展させるため、非凡人は凡人に服従するのが義務であり、非凡人は現状を打破し世界を動かすために、既存の法律を無視してもかまわない。非凡人こそが真の人間であるというものだった。

 そして、自分も「選ばれた非凡人である」という選民思想を持っていた。生活に困窮していた彼は、その思想から「善行として」悪名高い高利貸しの老婆アリョーナを殺害する。ところが、現場を目撃したアリョーナの義妹まで意図せず殺してしまい、ラスコーリニコフは罪の意識から精神を苛まれる。

 一方、予審判事のポルフィーリィは、過去、ラスコーリニコフが執筆した論文に辿り着き、その内容から彼が犯人であると確信。幾度となくラスコーリニコフに迫るも、決定的証拠がないため逃れられてしまう。

 逮捕こそ免れたが、不安定な精神状態から憔悴の度合いを深めていくラスコーリニコフ。だが、そんな中出会った、貧しい家族のために体を売る少女・ソーニャの、自己犠牲をいとわない生き方と、彼女が読み聞かせてくれた聖書に救いを見出す。そして、ソーニャに罪を告白し、自首を決意する。

 情状酌量され、シベリア流刑8年という寛刑に処されたラスコーリニコフ。彼を追ってシベリアに移住するソーニャ。ラスコーリニコフはソーニャへの愛を確信し、人間回帰への道を歩み始めたところで物語は結末を迎える。

<第54回に続く>

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