【第25回】アマゾンのエッセンスが詰まっている? 徹底解説Kindle Fire HD

更新日:2014/3/6

Kindleはクラウドコンシャスなデバイス

かべ :そうするとKindle FireシリーズはKindle PaperwhiteやそれこそLideoのように、タブレットの操作にあまり詳しくないユーザー向けの1台という位置づけになるのでしょうか?

まつもと :現状ではそうともいえるかも知れません。ただ、こと「クラウド」に関してはKindleがかなり高い次元を目指していることがわかります。その事が今後じわじわと効いてきてユーザーの裾野を拡げるのではないかと実際使い込んでみて思いました。

かべ :???

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まつもと :Kindleシリーズでは書籍や音楽などのコンテンツの一覧が、本棚のように表示され(※一覧表示などにも切り替えは可能)、その上に「クラウド」「端末」という切り替えボタンが表示されます。

かべ :まつもとさん、音楽の好みが割と偏ってますね…。

まつもと :それは放っておいてください(汗)。まだ未整理なんです。

かべ :よく聞く言い訳…。

まつもと :ポ、ポイントは、ネットにつながっていれば、クラウドのコンテンツをいつでも、あたかも手元の端末にあるかのように違いを意識せずに利用できる、というところですね。

かべ :なるほど。電子書籍ではPaperwhiteをはじめ、各社対応も進んでいますが、音楽もなんですね。

まつもと :アマゾンはかなり以前からEC2といったエンタープライズ向けのクラウドサービスにも力を入れてきましたが、Kindleによってそのインフラのコンシューマ向けへの本格活用が始まったとも言えるでしょう。

かべ :これまで端末のメモリー容量がセールスポイントになることもありましたね。先日発売されたkobo gloも「マイクロSDカードにマンガが保存できる」ことを強調していました。でも、クラウドに対応していれば、あまりそこは重要ではなくなる?

まつもと :あくまでもネットにつながっていることが前提にはなりますが、LTEのような高速通信網も整備されつつありますので、徐々にそうなっていくでしょうね。そうなると、端末の容量そのものよりも、いかにクラウドと端末(ローカル)のコンテンツをシームレスに扱えるか、クラウドの環境が使いやすいよう整備されているか、といった点が評価を分けることになるはずです。

かべ :ふむふむ…。

まつもと :アマゾンは、音楽をDRMなしのMP3形式で提供し、購入した楽曲はユーザーが所有するすべての端末でクラウド経由で再生できる、Cloud playerを提供しています。Kindle Fireシリーズだけでなく、パソコン、iOSやAndroid用のアプリもありますので、環境を選ばない、というわけです。加えて北米では、AppleのiTunes match同様、自分がCDからリッピングした楽曲も、自動的にクラウド環境に登録してくれるサービスも展開中です。

かべ :おー、それは便利かも。海外旅行に行ったときでもいつでも自分の音楽ライブラリーにアクセスして曲が聴けるわけですね。

まつもと :そうです。あとは、DRMがかかっていないという点もポイントです。現在は電子書籍を独自のDRMで保護した状態で販売するAmazonですが、音楽同様の利便性を電子書籍でも実現してくれることにも期待したいですね。また、今は日本では展開されていませんが、映像配信サービスもまもなく開始されるはずです。

かべ :なるほど…、電子書籍の世界でずっと注目を集めてきたKindleですが、次は音楽や映像についても存在感が増してくる…。

まつもと :日本未発売のkobo Arcはタペストリーという機能を備えています。ユーザーが好みの電子書籍などのコンテンツをピックアップすると、それに関連する映画や音楽、Webコンテンツなどを自動的にkoboがオススメするというものです。電子書籍が起点となって、他のコンテンツ――Kindleの場合はAmazonの関連グッズなどのリアルアイテムもそれに含まれるでしょう――を知り、気に入ったものは購入するといった楽しみ方が、次の段階には控えている、ということは意識しておきたいですね。

かべ :了解です!

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イラスト=みずたまりこ

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