「知性は贅肉のようについてくる」内田 樹×名越康文×橋口いくよ 勝手に開催! 国づくり緊急サミット

2013/2/8

思想家・内田樹、精神科医・名越康文、小説家・橋口いくよの三氏が語り合うダ・ヴィンチ本誌人気連載「勝手に開催! 国づくり緊急サミット」。この連載をまとめた書籍化第2弾『本当の大人の作法』がいよいよ3/1(金)に発売! そこで、書籍の発売を記念して、単行本用の書き下ろし原稿の一部を、毎週木曜日に特別公開致します!!

文=橋口いくよ 写真=川口宗道

これからの言語表現に必要なのは「かわいさ」と「うどん的文章」

橋口 以前「揚げ足をとる人々」が、本誌でもダ・ヴィンチ電子ナビでも掲載されて、揚げ足をとる人々が本当に増えてしまっていることに、たくさんの方が興味を持ってくださいました。

名越 いや、ほんとに今、世の中は攻撃性の塊になってきているように僕も感じます。しかも、活字が蔓延すればするほど。

橋口 ツイッターなどのウェブ上では、さらに蔓延しやすいっていう話にもなりましたよね。

内田 だから、僕、ツイッターのアイコンをかわいくしてるんだよね。

名越 あ、わかります。僕もかわいいアイコンを……といっても僕の顔なんですが、それをカメラマンの飯田かずなさんにあえてかわいく作り込んでもらって、それにしてから変なリプライが激減したんですよ。

橋口 私も便乗して飯田さんに作っていただいて、先にもう自分で揚げ足をとっておくべく、かわいく猫耳をつけてもらいました。そういえばツイッター、平和です。

内田 僕のアイコンはかわいいおサルちゃん。

橋口 私、内田先生のアイコンを初めて拝見した時、気づいたら顔が笑ってたんですよね。おサルちゃんが「たつる」って書かれたお洋服着てるの。

名越 あれはかわいい。確かにかわいい。

内田 あと、言葉の使い方でいうと、ブログで自分のことは「私」。語尾も「だ」「である」なんだけども、ツイッターでは「僕」「です」「ます」で書くっていうふうにしてるの。140字っていうメディアは、直感的に攻撃性が暴走しちゃうから、どっかで抑制しないとまずいなって、初めの段階で思ったのかもしれないな。これからの言語表現って、何にしたって、どうやって攻撃性を抑制するかっていうのが勝負になってくると思うよ。

名越 僕も本当にそう思います。

内田 非常にエッジの効いたクリスプな感じのものを、攻撃的な文章で書けば書くほど売れるって思っている人がたくさんいるんだろうけど、実際のところ、そういうものって、もうほとんど売れないじゃない。エッジの効いた文章とか、一刀両断的なクリティックっていうのは、もうあまり求められていないと思う。

名越 もう飽和状態で。

内田 そんな中で、攻撃性の欠片もないメディアが登場してきたら面白いよね。そこには攻撃性のある文章や言葉が全く出てこないの。ほっこりした、何言ってんだかわかんないような、ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃしたながーい文章で、でも、妙に飲み込みやすいっていうようなさ。

橋口 その飲み込みやすさを食べ物にたとえると、どんなものでしょう。

内田 うどんだね。うどんのようにずるずるーっとすすってるうちに「あっ飲んじゃった!」みたいな感じ。で、結局一杯食っちゃったよっていうね。そういう文章がいいんじゃないかなあ。

名越 僕にとっては、それが吉本隆明さんの全盛期の文章とか、埴谷雄高さんの文章とかですねえ。読み手が、飲み込みながら、どこで切っていいのかわからない。そのままずるずるずるずる飲み込んで、読み終わったらものすごく充実感があるんだけれど、あまりにもひたすらずるずる飲み込んだものだから「あれっ、なんかえっらいもの飲み込んだような気がするけど、何が書いてあったんだっけ?」って考えちゃう。そこが素晴らしいんです。あれは、意味がわかるわからないを超えて、いきなり内面を豊かにしている状態なんだと思うんですよ。

内田 それは本当にそうなんだよね。読んだ時にすぐわかるようなものって、実はだめなんだよ。意味をわかる前に、まず飲み込めちゃうことが大事っていうね。

名越 そういう文章のほうが、内面の空間を作るんですよ。

ネット上での言葉の攻撃に疲れた人、必見!

上から目線、揚げ足とり、バッシング――
さまざまな「言葉」が氾濫するソーシャルメディア時代、
人と人が本当につながるために必要な大人の知的作法とは? 

3月1日(金)発売!
価値観再生道場 本当の大人の作法』
内田 樹×名越康文×橋口いくよ/著
メディアファクトリー 1260円

 

内田 樹
うちだ・たつる●1950年東京都生まれ。思想家。神戸女学院大学名誉教授。凱風館館長。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。2007年『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第6回小林秀雄賞を、10年『日本辺境論』(新潮新書)で新書大賞2010を受賞。近著に『街場の文体論』(ミシマ社)、『ぼくの住まい論』(新潮社)、光岡英稔との共著『荒天の武学』(集英社新書)など。自身が運営するブログは人気サイトでもある。「内田樹の研究室」http://blog.tatsuru.com/

名越康文
なこし・やすふみ●1960年奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる一方で、テレビ・コメンテーター、雑誌連載、映画評論、漫画分析などさまざまなメディアで幅広く活躍中。近著に『自分を支える心の技法』(医学書院)、『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』『心がスーッと晴れ渡る「感覚の心理学」』(ともに角川SSC新書)など。毎月第1・第3月曜日に「夜間飛行」(http://yakan-hiko.com名越康文メルマガも配信中。

橋口いくよ
はしぐち・いくよ●1974年鹿児島県生まれ。作家。著書に『愛の種。』『蜜蜂のささやき』(いずれも幻冬舎文庫)、『アロハ萌え』『猛烈に!アロハ萌え』(ともに講談社文庫)、『原宿ガール』(メディアファクトリー)、『小説 僕の初恋をキミに捧ぐ』『小説 少年ハリウッド』(ともに小学館文庫)など。最新情報はオフィシャルブログ「Mahalo Air」http://ameblo.jp/mahaloair/