男子禁制☆峰なゆかのヒミツの更衣室『3Pの憂鬱』

更新日:2013/12/20

そんなあなたへの処方本はこらら…

だって私、あなたのせいで傷ついちゃったんだもの。
あなたのせいだから、だから、「母が私より不幸になったらいい」

 彼氏が3P経験者だった。身近な人の飛び抜けたエロ行為には、嫉妬よりも嫌悪感が先立つものです。それではその嫌悪感の矛先が、母の不倫だとしたらどうでしょうか。

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 ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』の中の一遍、「マティルダのイングランド」の主人公マティルダは毎日、父と兄が戦争から生きて帰ってこられるよう祈りを捧げます。父の戦死の報せが届いたあと、祈りは「兄が生きて帰ってこられますように」に変わります。

 そんなある日、マティルダは廃墟になったチャラコム邸で母と男が逢い引きしているところ目撃してしまいます。母の髪は乱れ、顔には微笑みがあり、隠すように置いてあった二枚のラグはうちにあったものだし、そのチャラコム邸はかつて兄といっしょにコートの草刈りをしてテニスパーティーを開いたお屋敷で、それはそれは素敵な思い出で、母と男が腰掛けてるそのフラシ天の椅子はよりにもよって父が運んできたものだったし、私は母が煙草を吸うところを初めて見た。
 その後も母は週1でサマーハウスにでかけ、いよいよある晩、例の男が我が家に食事にやってきます。生地店に勤めるその男は、歯が細くて、貧相な鼻で、無礼で、おばかさんで、何様のつもりなんだろう。マティルダはフィッシュパイ製の吐瀉物をぶっかけてやろうとまで思い詰めるのですが、同時にそんな男と会話する母のことも「おばかさん」に見えてきます。

 マティルダの祈りは、「兄が無事帰ってこられますように。生地店の男が死んでしまいますように」に変わり、そして届く兄の戦死の報せ。
 生地店の男への反発は母への嫌悪感に変わり、嫌悪は憎悪に変わります。
 兄が死んだのは母のせいだし、私が不幸なのも母のせいだし、ねえ、お母さんが悪いのに、お母さんが泣いたってどうにもならないじゃない。

※女子を知り尽くすセクシーライター、峰なゆかが女性たちの恋愛、セックス、女同士の軋轢にまつわる悩みに誠意を込めて辛口回答! お悩みは随時募集中!(公式ツイッター@d_davinciをフォローしてダイレクトメッセージでお送りください)

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