【第7回】じぶん語りが本になる?――STORYS.JPが描く新しいCGMの形
更新日:2018/1/29
FacebookのようなSNSが一般的になり、私たちは日々のちょっとした出来事をネット上に投稿することを当たり前に行うようになりました。Facebookと組み合わさることで、読み手を意識しながらより楽しく自分についての物語(じぶん語り)を書くことができる――そんなサービスとして2013年2月に生まれたのがSTORYS.JP(ストーリーズ・ドット・ジェーピー)です。例えばこんなストーリーが投稿されていて、人気のあるものは50万回以上アクセスされたり、書籍になったりするものもあるそうです。
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さらに、ここから生まれた物語は就職・採用活動に役立つなど様々な拡がりを生んでいると言います。中の人たちにその仕組みについて詳しくお話を伺いました。
STORYS.JPで「じぶん語り」が生まれる仕組み
――STORYS.JPが生まれた経緯を教えてください。
大塚:創業者のジェームズ・ライニーの父が、世界中いろんな場所を旅して、それを息子や他人に熱心に伝えるということをよくしていた方で、その体験から、「偉人伝」のような歴史的に有名な人たちの物語だけでなく、一般の、でも少しユニークな活動を書きつづり、共有することは価値を生むという思いから、生まれたサービスです。
最近だと、TEDが人気であったり、TV番組でも市井の様々な人々の活動が取り上げられたりしていますが、場所や時間の制約がありますのでそれほど多くのストーリーを紹介することはできません。STORYS.JPでは数多くのストーリーが日々投稿されていて、書き手と読み手をつなぐ様々な仕組みが用意されています。
――文字や写真を投稿する、という意味ではFacebookと似ているようにも見えるSTORYS.JPですが、違いはどこにあるのでしょうか?
大塚:TwitterやFacebookが普及して私たちは、「いま」という一瞬一瞬の出来事や、感情を皆に共有するのは当たり前になりました。でも過去も振り返りつつ、ある程度ひとまとまりになった自分についての物語を書くという機会や場所はそれほどなかったはずです。STORYS.JPにはそのための環境が整っています。
――登録時にはFacebookのアカウントが必要となり、連携して利用することが前提となっていますが、グラフ(人と人とのつながり)はFacebookがベースとなるのでしょうか?
大塚:STORYS.JPにストーリーを投稿すると、Facebookの友だちで、かつSTORYS.JPの登録ユーザーにメールで通知が届きます。したがって最初のうちはFacebookのグラフを中心に読者が広がっていくのですが、さらにストーリーを投稿したり、他の人の投稿を読んだりしているうちに、STORYS.JP独自のグラフができていくようになります。
――Facebookにも長い文章を書こうとする方もいますが、文字数制限があるのであまり適した場ではないようにも思えます。STORYS.JPはそれを補完するような立ち位置なのでしょうか?
大塚:そうですね。確かにFacebookでは長い文章を書くことは想定されていないと思います。事実、長い文章を書くとFacebookより「節度を持った利用をしてください。」という警告がでますよね。実はサービス開始後に私たちも知ったのですが、アメリカにも「Storylane」という同様のサービスがあって、後にFacebookに買収されていたりするんですね。
溝部:サービスを開始した頃、多くのソーシャル系のサービスはいかに「投稿のハードルを下げるか」ということに注力していました。ちょっとした写真をアプリを使って気軽にFacebookに投稿し、「いいね」がついて嬉しく思う――そういう形でいわゆる承認欲求を満たすことは可能でした。でも、もう少し自分について深く、長めの文章で語ることで、周囲の人に自分のことを理解してもらいたい、という欲求もあるはずですよね。そう考えてSTORYS.JPは始まりました。
――創作小説を投稿するサイトやBLOGとの違いはどこにありますか?
大塚:文章を投稿するという大きな枠組みでは似ているかもしれませんが目的が異なっています。STORYS.JPはFacebookに投稿するような日々の出来事や写真の延長線上にあるような、自分自身のエピソードを投稿するためのものです。
そういった目的にもBLOGは使うことはもちろん可能なのですが、個人的にはBLOGは「ツール」にとどまっていると思っています。STORYS.JPは文章や写真を投稿するといった基本的な機能を提供しつつ、自分のストーリーを書きたい、あるいは他人のそれを読みたいという人たちの集まり=コミュニティとなることを目指しているのが大きな違いです。
例えば、タイトルだけをまず投稿して、それを読みたい人がどれくらいいるか募ったり、どんな人が読もうとしているかを知ることができます。
また、「続きのストーリーを設定する」という機能も用意していますので、テーマに沿って連載のように投稿していくことができるのも大きな特徴です。
そして、書き上がったストーリーをどんな人たちが読んでくれたのか、どれくらい読まれているのかも確認できます。それによって、次のストーリーや続きを書こうというモチベーションが生まれてくるはずです。BLOGでもページビューやリファラー(どのサイトからの流入か)といったデータは確認できますが、こういった人ベースの情報を知ることはなかなかできません。
溝部:サービスをはじめて半年ですが、一種「文化」のようなものが生まれてきていると思います。BLOGでは読書記録から製品のレビューのようなものまで、ありとあらゆるコンテンツが投稿されますが、STORYS.JPでは「これまで自分が生きてきた中での強烈な体験」とか「自分を語る上では欠かせないエピソード」を投稿する場所だという共通認識があります。
和田:アカウントはFacebookと連動していますので、原則として実名です。したがって、誹謗中傷のようなコメントが投稿されにくいという特徴もあると思います。
溝部:僕がほぼ全ての投稿に目を通していますね。読むのがホントに好き、ということもあるのですが(笑)。
大塚:そういった取り組みもありSTORYS.JPであれば気兼ねなく「じぶん語り」ができます。Facebookにみんなが「今日食べた美味しい料理」を写真付きで投稿しているときに、長くて場合によっては重たいエピソードを投稿するのって、ちょっと気が引けるじゃないですか(笑)。STORYS.JPには「じぶん語り」ができる場だ、という文化があることで、かなりエッジの立った人たちが集まってきているという手応えはありますね。
――たしかに、写真に一言添えて投稿、というのとは対極にありますね。
溝部:平均してSTORYS.JPへの投稿は2000~2500字前後、高い人気となるコンテンツは1万文字以上になっています。
大塚:人気のある投稿は約50万PVに達したものもあります。そんな人気ストーリーをピックアップした電子書籍が先日ゴマブックスさんから発売されました。
書く人のモチベーションを刺激する仕組みが備わっていることはお話ししたとおりなのですが、エッジの立った人たちが書くストーリーが同じ志向を持つ読み手の生きがい・やりがいを刺激する場にもなってきています。