【第7回】じぶん語りが本になる?――STORYS.JPが描く新しいCGMの形

更新日:2018/1/29

STORYS.JPのこれから

――人気コンテンツも生まれる仕組みが回り始めているわけですが、STORYS.JPさんはどこでどのように収益を上げていくのでしょうか?

大塚:一応、広告を控えめに入れていますが、基本的には私たちは書き手となるみなさんに、プラットフォームを提供することで、電子書籍や紙の本、テレビの企画や脚本などコンテンツにいろいろな出口を見出だせると考えています。そのためのパートナー企業との提携も拡がりつつあります。

図7:さまざまなメディアがSTORYS.JPを取り上げている。

 

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――サービスそのものへの課金などは考えない?

大塚:現時点では敢えて課金の方法を定めていません。多くの可能性があるので適切な時期を見極めて実施していく予定です。例えば、ユーザーがより多くの人に読んでもらいたい、あるいはどんな人に読まれているのか、もっと詳しく知りたい、という方に向けてはなんらかプレミアム機能のようなものは提供するかも知れません。あるいは、ストーリーと関連した物販なども考えられるかも知れませんね。いずれにせよ、まだサービスが立ち上がったばかりですので、採算というよりもユーザー体験を追求している段階です。

――写真投稿などと比べると、ユーザーがコンテンツを生み出す(書く)のに手間が掛かりますが、利用は拡がるのでしょうか?

溝部:実はわたしはイラスト投稿サイト「pixiv」でアルバイトをしていたことがあるのですが、pixivもイラストをベースにして500万人以上のユーザー数を獲得しています。絵が描ける人に対して、ストーリーを書ける人の裾野はもっと広いはずですから、STORYS.JPはさらに成長するはずだと考えています。

さらに言えば、コンテンツが個人に紐付いたストーリーですから、活用の幅も広いはずです。電子や紙の書籍ということだけでなく、例えば米国で人気の「LinkedIn」のように就職・採用活動の際のツールともなりうるはずなんです。

大塚:自分の思いやビジョンを熱く語ることもできる場ですからね。

図8:リクルート出身で、現在は独立しKAIZEN Platformを立ち上げた須藤憲司氏のストーリー。STORYS.JPのユーザーでもある氏は、思いが一致するユーザーをここで見つけ採用したという。

 

和田:また、プロの編集者の方からのアドバイスを依頼できる制度もはじめました。必ずしも全ての投稿にコメントがもらえるわけではありませんが、書籍化といった出口に向けてコンテンツの質の底上げや、魅力的な投稿の発展にも繋がるはずです。

大塚:そうやって積み重ねられた投稿は、まさに自分のプロフィールそのものになっていきます。STORYS.JPではプロフィール画面の設計にも力を入れていて、たとえば私のプロフィール画面はこんな感じになっています。

図9:大塚氏のプロフィール画面。UX・DJといった具合にカテゴリごとに投稿されたストーリーが読めるようになっている。

 

――先ほどビジネスSNSの「LinkedIn」を挙げられていましたが、STORYS.JPのそれは単に自分のスキルを列挙するだけではなくて、それを裏打ちするエピソードをそこから読むこともできるということにもなりますね。

大塚:はい。まだストーリーを投稿できていないカテゴリもあるのですが、画像なども自分が好きなものが選べます。これ編集していると楽しくなってしまって2時間くらい没頭してしまいましたね(笑)。この画面のリンクをメールの署名やFacebookのプロフィール画面に貼ったり、エステサロンのブログに、スタッフさんそれぞれのプロフィールへのリンクとして利用されたりと活用が拡がっています。

和田:僕の方でSEOも工夫しているので、大塚の名前を検索すると、このプロフィール画面が上位に表示されるはずです(笑)。

大塚:サービスを開始した当初は、それこそビジネス上の、それこそ「プロジェクトX」のような困難を克服したような話が投稿されることを想定していました。でも、実際は利害関係が絡むこともあり、そういった内容よりも、主婦や学生、個人の方などが自分自身のポジティブでユニークな体験をつづったものなど、多彩なストーリーが読める場所になってきていますね。

――そういったコンテンツの拡がりが、却って今回のお話しのように、電子書籍などにも繋がる出口の拡がりも生んだ、ということかも知れませんね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

いかがでしょうか?サービス開始からわずか半年あまりということもあり、まだ荒削りで変化し続けている部分もありますが、Facebookとの連携も活かしつつ、BLOGなど既存のサービスにはない機能によって、ストーリーをベースにしたコミュニティが生まれていることがよく分かりました。そんな場から生まれる、この秋に予定されているという書籍もきっと新鮮な作品になるはずです。楽しみにしておきたいと思います。

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