【第8回】王者ジャンプの電子化への回答――ジャンプLIVEの魅力とは?

2013/10/30

 8月に集英社が電子雑誌の新しい展開をスタートさせました。それが「ジャンプLIVE」です。以前この連載では講談社のDモーニングを取り上げましたが、マンガ雑誌を起点にしながらも大きく異なり、紙の雑誌をそのまま電子化するのではなく、オリジナルコンテンツも加えながら、無料でも楽しめるようにしたところに特徴があります。

 35万ダウンロードを越え、1割以上のユーザーが有料パスも購入したというジャンプLIVE。その成功の理由や、このような仕組みにした背景、第2号に向けた意気込みなどを週刊少年ジャンプ副編集長の細野さんに伺いました。


新しい雑誌を創刊するくらいの意気込み

――まず「ジャンプLIVE」はどういうものなのか、改めて概略を教えてください。

ジャンプLIVE

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細野 修平 氏
集英社「週刊少年ジャンプ」副編集長
2000年に入社し、月刊少年ジャンプ編集部に配属。
2007年の同誌休刊と同時にジャンプSQ.編集部に異動。
2012年、週刊少年ジャンプ編集部に異動し、副編集長としてジャンプLIVEなどのデジタルコンテンツも担当する。

細野:週刊少年ジャンプのスマホ・タブレット向けの増刊誌という位置づけです。iOS、Androidのスマホ・タブレットに対応し、アプリのダウンロードと多くのコンテンツは無料ですが、一部のコンテンツを楽しんで頂くためには300円の有料パスを購入頂く必要があります。

週刊少年ジャンプ(本誌)での連載経験のある作家さんの新作を中心に、連載や読み切りのマンガが沢山載っています。連載中の作品のスピンオフ、書き下ろしイラスト、ゲーム、映像、アニメ、小説などマンガ以外のコンテンツも数多く扱っています。

――はじめて「ジャンプLIVE」を知ったときは、東日本震災直後の臨時の電子版配信や今年7月の創刊45周年記念号の電子配信のこともあり、週刊少年ジャンプがいよいよデジタルで読めるようになったのかと思ってしまいました。

細野:紙そのままの電子化ではなく、デジタルならではの取り組みを行いたかったということもありますし、作品の電子化であれば、昨年はじめた単行本の電子書店「ジャンプBOOKストア!」で既に行っているということもあります。ジャンプLIVEはその成功をきっかけにして新しい事をはじめた、という部分が大きいんです。

気持ちとしては新しい雑誌を創刊する、くらいの意気込みで取り組んでいます。そうすることで、きっとそこには新しい読者がいるはずだと。

――紙の雑誌の電子化ではなく、新しい雑誌をデジタルで作った=新創刊という訳ですね。

細野:はい。したがって、デジタルだからといって何か特殊なことをしようという訳でもないんです。感覚としては普段と変わらないんですよね。

――いまジャンプLIVEをiPadの新着コーナーで見ていると、新聞でも話題となった「はだしのゲン」が数多く並んでいて驚かされました。ネット掲示板でよく見かける言い回しが実はこの作品発であることなど再発見もあるわけですが、当時の連載の単位(1話)を読み終わると、ジャンプBOOKストア!での単行本が紹介されるというスタイルですね。

細野:そうですね。もちろんそこで気に入った作品を購入頂ければ嬉しいですし、私たちとしては紙の雑誌同様アプリ(ジャンプLIVE)単体でもビジネスが成立するよう頑張っていきたいと思います。いまは、いわゆる増刊号のような考え方で不定期刊行なのですが、いずれは月単位で購入頂く―― つまり月刊誌のようなスタイルにしていければと。

全体の約2割はiPod touchで利用

――なるほど。現在ジャンプLIVEを読んでいるのはどういった方なのでしょうか?

細野:7割くらいが男性で、かなりジャンプ本誌の読者層と近いですね。ただ、予想していたよりも若干若いという印象です。

先ほど「新しい読者に読んでもらいたい」というお話しをしましたが、いわゆる「600万部時代」を体験したような、30歳以上のかつてのジャンプ読者の方々――例えば『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメ化をきっかけにもう一度あの名作を読みたいという方々――が再びジャンプLIVEを読んでくれているというのが1つのボリュームゾーンですね。この層はスマホの所有率も高いということも背景にあると思います。

もう1つ、これはかねてから読者として獲得したいと考えていた方々でもあるのですが、10代のニコニコ動画やPixivを楽しんでいる層であり、私たちがアプローチ仕切れていないのではと考えていた層です。これが意外だったのですが、スマホの移行がまだ進んでいないと思われる10代の方々もジャンプLIVEをiPod touchで楽しんでくれているんです。

――iPod touchで利用する人が目立つというのは、ちょっとビックリしますね。

細野:そうなんです。実に全体の2割のもの方がiPod touchでジャンプLIVEを利用されています。正直この数字には驚きました。スマホ所有率が上がっていけば、さらに10代の読者が増えると期待しています。

――8月中はコンテンツを毎日追加されており、第2号の準備も進む中、幅広い読者に作品を届けていくことになる訳ですが、その基準や方法は?

細野:私たちは新人作家さんの作品を数多く収めた増刊誌「ジャンプNEXT!」を発行してきていますが、ジャンプLIVEはこれとコンセプトも近いものがあります。新人育成はジャンプの至上命題ですから。10本以上の新人作品で構成した上で、本誌の番外編など目玉となるコンテンツを持ってくる、という考え方です。ジャンプLIVE創刊号では、天野明先生の『エルドライブ【ēlDLIVE】』、許斐剛先生の『LADY COOL』がそれです。また本誌掲載作家さん全員に1ページ以上のイラストなどを描いて頂く、ということも行いました。ジャンプ本誌の読者にも十分楽しんでもらえる内容になっているはずです。

――ジャンプと言えば読者アンケートからなるランキングシステムというイメージもありますが、ジャンプLIVEではどのような仕組みが備わっているのでしょうか?

細野:アプリの中に閲覧数のランキングに加え、有料パス購入者だけが押せる「いいジャン」ボタンの押された数のランキングが表示されるようになっています。我々としてはその数字も参考にしつつ、本誌と同じようにネットで有料・無料読者向けのアンケートも採って、総合的に作品の人気を図り、次の号の企画を考えていますね。やはりアンケートは重要です(笑)。

また、ジャンプLIVEではTwitterなどに感想を投稿できる仕組みも備えています。これは、かつてジャンプの発売日に友だち同士でお気に入りの作品を一緒に読んで感想を語る、といった経験を持っている方も多いと思いますが、それをスマホ時代に再現するにはどうすればよいか、と考えた結果です。作品が配信された瞬間に、話題がソーシャルメディアで共有・拡散されるという効果がでていますね。

ソーシャルへの感想画面

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――250円(現在は300円)という有料パスの価格設定について、実際反応はいかがでしたか? 本誌に加えて追加でお金を払って読むという人も多かったということになりますが。

細野:もともと増刊号という意味合いが強く、有料パスの価格設定は紙の価格に比べて半額くらいでページ数も多い、ということもあり、そこはあまり違和感は無かったのではないかと思います。雑誌に限らずアプリに対しては必ず「無料がいい」という方も一定数おられるのも事実ですが(笑)。