ヒャダイン連載 【第11回】話題になっているので『失踪日記2 アル中病棟』を読んでみた

ヒャダイン

2013/11/19

変幻自在のネオネオポップアイコン ヒャダイン(前山田健一)による気ままな読書感想文!

昔は赤くなんてならなかったのになあ

 どもども。忘年会のシーズンがやってきましたね。みなさん、飲み過ぎには注意しましょうね。かくいう僕は最近お酒を飲む機会がグンっと減ったせいか、お酒に随分弱くなりまして、ある一定量を超えると記憶を失くすことは確実、さらには顔や頭皮まで赤くなってくるという始末。ある時期、同じペースで飲んでいた人たちに付いていけないこの虚しさよ。こないだひとり酒をしたんですよ、ものすごく久しぶりに。するとピッチが早かったせいか、なんか体がかゆいな、と思ったら、全身真っ赤っ赤。あちゃ。アルコール耐性無くなってるよ…。酒にさえも逃げられないのか!俺は!くそーーー!!

 と思い、お酒という逃げ道を塞がれたわけでして、逆にお酒に救いを求めて中毒患者になった人ってどんなんだろうと常日頃考えていました。ドラッグとはどう違うのだろう。寛解とかあるのかしらん、とか。すると何やら本屋さんで大型展開しているピンクの本が。デカデカと『アル中病棟』とな!そりゃ即買。というわけで読んでみました。

『失踪日記2 アル中病棟』

吾妻ひでお/イースト・プレス

過度の飲酒でアルコール依存症となり、担ぎ込まれた通称『アル中病棟』。入院してわかったお酒の怖さ。そこで出会ったひとくせもふたくせもある患者や医者たち。かわいくて厳しいナースたち。そしてウソのようで本当の、驚くべきエピソードの数々。そこから著者はいかにして、アルコール依存症から抜けだしたのか?

今までのアル中患者の自分の中のステレオタイプ。色んな人がいることを知った

 約320ページというマンガとしてはボリューム大の一冊。ギャグマンガ家の吾妻ひでお氏が自身の経験を赤裸々にマンガにした内容です。しかしさすがギャグマンガ家。内容をあえて重苦しくすることなく、全編を通してライトタッチに描いてくれています。おかげで心に重いものを抱えながらグズグズ読むのではなく、こちらも軽快に受け止めることができました。本当はこのタッチの100億倍重苦しい内容だっただろうけど、それを見せない作者のプロ魂にまず拍手。

 さて、内容ですが、失踪日記2、とあるように、8年前に発売された『失踪日記』の続編。重なっている部分もある、ということなのでこちらも購入、読まさせていただきました。『失踪日記』もノンフィクションとなっていて、作者がいきなり仕事や家庭を投げ出して、失踪。ホームレス生活、サバイバル生活、そしてアル中になるまでを描いていました。こちらも軽快で悲壮感はなく、こういった言い方は正しいかわかりませんが、エンターテインメント作品として楽しめる素晴らしい本でした。

アルコール中毒はまあ、壮絶。

 失踪の末のアル中。本作の中にも記述があるのですが、アル中になったきっかけは特になく、だんだん飲酒量が増えて、そのうち幻覚や禁断症状が出始めて、自殺欲求まで出てきたものだから、作者は家族に強制的に精神病棟(俗称・アル中病棟)に入院させられます。そこで薬を服用しながらアルコール依存から離れていく、といった内容ですが。冒頭、ライトタッチで軽快だ、とは書きましたが、まあ、壮絶。アルコールを飲むと想像を絶する不快感に襲われる薬を毎日飲み、アルコール依存離脱による睡眠障害と毎晩戦い、作者いわくアル中は全員かかっているという鬱病との戦い。寛解の割合が20%、あとの80%はまたアルコールに手を出してしまう、という完治の難しさなどなど。恐ろしい世界です。僕は大きな勘違いをしていて、覚せい剤などのドラッグは脳細胞をおかしくして、一度摂取した経験があれば、何十年ガマンしていてもたった一度の過ちでまた中毒に逆戻り、ということは知っていたのですが、アルコールもどうやら全く同じようです。どんなに断酒しても、ふとした瞬間に口にしてしまったら元の木阿弥。全てが水の泡。また中毒患者、そしてアル中病棟へお帰りなさい、というわけで。この本の中でも出戻りの人や、さらに、この病院では手に負えずもっとキツイ病棟へ送り込まれる人も描かれています。ドラッグなどに比べ圧倒的に身近にあり、合法でもあるお酒。それをガマンしなければいけない苦痛たるや想像を絶します。