ブンガク部最大の危機!? ―ブンガク!【第15回】―

公開日:2013/11/28

 中高生を中心に大人気の「ライトノベル」(通称ラノベ)。最近ではテレビアニメ化などの影響でファン層も拡大しています。そこで、ラノベって言葉は知ってても読んだことがない、という初心者向けに“超”入門コラムをお届け!代表的な作品の紹介や、楽しみ方について、作家や絵師など関係者への取材も織り交ぜながら、ラノベ風の会話劇でお送りします。毎月第1・3火曜に更新予定!

制作協力:代々木アニメーション学院 / 文=カンダ ユウヤ 絵=ましま


【前回までのおさらい】
○【第1回】ブンガク部が廃部ってどういうこと?
○【第2回】帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる!
○【第3回】ブンガク部の救世主?顧問をさがせ
○【第4回】ラノベ好きな先生からの挑戦状
○【第5回】『東京レイヴンズ』作者・あざの耕平さんに聞いてみた
○【第6回】ラノベって女の子でも読めるの?
○【第7回】中二病でトラブルメーカーってなんなの?
○【第8回】教えて!大人でも楽しめるキャラクター小説
○【第9回】ラブコメはラノベの王道!?
○【第10回】スピンアウト・スピンオフってどういう意味?
○【第11回】なぜ人気?主人公が人外のライトノベル
○【第12回】6人目の部員は引きこもりですが、何か?
○【第13回】メンバー揃ったし学園祭の出し物を決めよう!
○【第14回】学園生活はいつだってほろ苦い

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★ブンガク部の部員名簿はこちら!★

~ブンガク部~

今川凜子(普)
「……で、何があったの?」

中島優斗(困)
「……えーと、実は、その前回というか、先ほどちょっとトラブルがありまして、その……」

今川凜子(普)
「その?」

中島優斗(困)
「……実は直斗が引きこもりになった原因を皆に話してしまって、このようなことに……」

今川凜子(普)
「で、その後、追い討ちをかけるように先生がデータをなくして飛んできたと。で、このような状況に……」

桜井智樹(困)
「や、やばい、終わらん……」

石田健(困)
「諦めるなよ、まだ時間はあるから……」

今川凜子(普)
「……う~ん、これは困ったね」

中島優斗(困)
「……まことにその通りでございます」

今川凜子(普)
「まあ、先生がデータをなくした事はまず置いといて中島君、その話はないよ。直斗君からすればここ最大のトラウマなんだからさ。さすがに今回は優斗君が悪いよ」

中島優斗(困)
「はい、ごめんなさい」

今川凜子(普)
「違うでしょう、謝るのは私にじゃなくて直斗君にでしょう」

中島優斗(困)
「……は、はい」

今川凜子(普)
「まあ、この話はこのくらいにしておいて、まず問題は部誌の入稿データだよね。それに直斗君が戻らないと作業も進まないだろうしね」

中島優斗(困)
「うん、機嫌、直して戻ってきてくれるといいんだけど、直斗は一度落ち込むと立ち直るまで時間がかかるやつだから……そもそもこのランキングの文集を考え付いたのは直斗だし一からやり直すのはあいつがいないと難しいよ」

今川凜子(普)
「唯ちゃんが家に様子を見に行ってくれているから大丈夫だとは思うけど……やっぱり心配だね」

中島優斗(普) 今川凜子(普)「う~ん」

中島優斗(普)
「……ああ、悩んでちゃ駄目だ。直斗がいなくても、できるだけのことをやらなくちゃ、せっかくのあいつのアイディアなんだからがんばらないと、まずはやれるだけやって行き詰ったら、その……また後で考えよう!」

今川凜子(普)
「……ふう、うん、そうだね!」

~一方、その頃~

佐藤唯(普)
「……直斗君、家にもいませんでしたね。家にいると思ったんですがどこに行ってしまったんでしょうか? ……う~ん、あれ。もしかしてあそこのベンチに座っているの、直斗君?」

中島直斗(困)
「あ~、思わず、勢いだけで飛び出してしまった。これからどうしよう……はあ~」

佐藤唯(普)
「……直斗君」

中島直斗(困)
「うわ、だ、誰!?」

佐藤唯(笑)
「私ですよ、唯です」

中島直斗(普)
「あ、あれ、唯ちゃんか。どうしてここに?」

佐藤唯(笑)
「先輩たちに言われたんですよ、直斗君が部を飛び出してどこか行ってしまったって。だから捜しに来たんです」

中島直斗(普)
「そう……だったんだ。わざわざこんなところまで来てもらって、ごめんね」

佐藤唯(普)
「みんな心配していましたよ。直斗君の方は大丈夫?」

中島直斗(普)
「うん、なんか『虚惑星を探索するための魔法使い(※1)』になりたいとか思っていたけど、とりあえずは大丈夫かな」

ファイヤーガール

「虚惑星を探索するための魔法使い」(※1)
『ファイヤーガール』(星空めてお/TYPE-MOON BOOKS)

青藍高校に入学した高校一年生、日ノ岡ほむらは高校デビュー失敗気味の日常の中、ある日、同学年の少年、東野巧に「魔法使いやらない?」と言われ誘われるままに入部。だが、そこは未知の惑星を調査する国際連合に所属する探検部だった。そして12年前に発見された虚惑星ヌテラを探索するためほむら達は未知の世界へと降り立つ。

佐藤唯(普)
「……ふ~ん、で、本当は何があったんですか?」

中島直斗(困)
「……あ、え~と、なんと言えばいいか」

佐藤唯(笑)
「話を聞かせてもらえますか? 私でも話くらいは聞いて上げられますし……」

中島直斗(普)
「……うん、少し話しづらいけど聞いてもらえたら、楽になるかな。実はね、僕は今年の春くらいにね……」

~それから~

佐藤唯(普)
「……そうでしたか、好きな人に告白をして撃沈したと……まあ、平たく言えばフラれたと、それが原因で引きこもりに?」

中島直斗(困)
「うん、撃沈といえば言えばそうなんだけど、それとあまり平たくとか言わないで、そのメンタル的に痛いから……」

佐藤唯(困)
「あ……あはは、ごめんなさい。でも、それは直斗君がいつまでも悩んでいるべきことじゃないと私は思いますよ」

中島直斗(困)
「……そう、かな?」

佐藤唯(笑)
「だってそうですよ、直斗君の高校生活は何も恋愛だけじゃないんですから」

中島直斗(普)
「え……?」

佐藤唯(笑)
「“青春”っていうんですかね。まあ、まずは自分のやりたいことを見つけて、無茶したり馬鹿できる同じ趣味を持った友人や仲間を作ることですかね。……まあ、日本に来てからの私の経験談なんですけど」

中島直斗(普)
「青春って、唯ちゃんは『青春男(※2)』ですか!?」

Fate/Apocrypha

「青春男/電波女」(※2)
『電波女と青春男』(入間人間/アスキー・メディアワークス)

主人公・丹羽真は、両親の仕事の都合上、叔母の藤和女々の家に預けられることになった。そこで真は布団に巻かれた自称宇宙人で電波女の従妹、藤和エリオ出会う。叔母によると彼女は以前、半年間ほど行方不明になり、帰ってきたと思ったら「宇宙人にさらわれた」「自分は宇宙人だ」と言うようになっていたらしい。そんな電波な従妹を真は自分の青春を捧げるが如く渋々面倒を見る羽目となるのだが――。2011年にアニメ化された。

佐藤唯(笑)
「それだと直斗君は『電波女(※2)』みたいな感じですね」

中島直斗(笑)
「ふふ、ははは……それ面白いね」

佐藤唯(笑)
「やっと笑ってくれましまね。まあ、だから、まずはここでのイベントを楽しんでみませんか?……だって直斗君の青春はまだ始まったばかりじゃないですか」

中島直斗(普)
「……まったく唯ちゃんは欲張りなほどポジティブだな。わかった、戻るよ。正直、そのポジティブさが羨ましいけど……」

佐藤唯(笑)
「まあ、それが一番のとりえですから……」

ピロロロ~ン♪ ピロロロ~ン♪ ピロロロ~ン♪

佐藤唯(普)
「ん? あ、電話ですね、今川先輩からだ……はい、佐藤です」

今川凜子(笑)
『あ、もしもし、唯ちゃん。直斗君見つかった?』

佐藤唯(普)
「はい、見つかりました。今からそちらに戻ります」

今川凜子(普)
『うん、お願い。優斗君たちは悲鳴を上げながら、がんばっているから早く帰ってきて!さすがに直斗君なしに部誌を作りなおすのは堪えるみたいだからさ』

佐藤唯(笑)
「はい、わかりました。じゃあ、また……」

今川凜子(普)
『うん、じゃあね』

中島直斗(普)
「……誰から?」

佐藤唯(普)
「今川先輩からです。部誌の入稿データがなくなってしまって、みんな困っていて、直斗君の助けがほしいみたいですよ」

中島直斗(普)
「部誌の入稿データが!?」

佐藤唯(困)
「なんだか、直斗君が出て行った後にゴタゴタしていて、だから直斗君がいないと……」

中島直斗(普)
「そっか、それは大変だね……」

佐藤唯(困)
「そんなに落ち込まないで直斗君、まだ時間はありますから……」

中島直斗(普)
「いや、そうじゃないんだ。実はね……」

佐藤唯(普)
「……ん?」

~その頃、ブンガク部~

中島優斗(困)
「……諦めちゃ駄目だ……諦めちゃ駄目だ……」

石田健(困)
「先輩、大丈夫ですか~」

桜井智樹(困)
「やばいコレ、マジ、ヤバいよね……」

今川凜子(普)
「……みんな、もうすぐ二人が帰ってくるからがんばって~」

佐藤唯(普)
「……先輩方、今、戻りました。直斗君も一緒です」

桜井智樹(笑) 石田健(笑)
「キ、キターッ!」

今川凜子(笑)
「唯ちゃんお帰り……直斗君も大丈夫?」

中島直斗(普)
「あ、はい」

中島優斗(困)
「……な、直斗」

中島直斗(普)
「兄さん……」

中島優斗(困)
「悪かったな、先はその……相談もなしにみんなに話したりして」

中島直斗(普)
「ううん、いいよ、もう気にしてない。だけど兄さん、部誌の入稿データが無いんでしょう?」

中島優斗(困)
「ああ、そうなんだ。僕たちでできるところまでやったんだけど、上手くいかなくてさ」

中島直斗(普)
「……なら、兄さんコレを使って、はい!」

中島優斗(困)
「これは? USB?」

中島直斗(普)
「入稿データのバックアップだよ、もしもと思って作っておいたんだ」

中島優斗(笑)
「……な、直斗、ありがとう。これなら部誌が作れる!」

石田健(普)
「お手柄、後輩、やるじゃん!」

中島直斗(笑)
「あ!? はい……」

桜井智樹(普)
「あはは、一時はどうなるかと思ったぜ……」

中島優斗(笑)
「じゃあ、みんな、あと、もうひとふん張りだ。がんばって仕上げよう!」

今川凜子(笑)
「ふふ、調子いいな~、優斗君は……」

佐藤唯(笑)
「よかったね、直斗君。なんとか間に合いそうで……」

中島直斗(普)
「うん、まあね。それと唯ちゃん……」

佐藤唯(普)
「はい?」

中島直斗(笑)
「その……ありがとね」

佐藤唯(笑)
「……ふふ、どういたしまして……」

……つづく

次回予告

中島直斗(普)
「こんにちは、中島直斗です!」

佐藤唯(笑)
「同じくこんにちは佐藤唯です!」

中島直斗(普)
「ふう、なんだか、ようやく部になじめてきた気がする」

佐藤唯(笑)
「よかったですね、直斗君!」

中島直斗(普)
「そういえば、もうすぐ学園祭だね」

佐藤唯(笑)
「そうですね、そのときは一緒にがんばりましょう! では……」

中島直斗(笑) 佐藤唯(笑)
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」