ブンガク部最大の危機!? ―ブンガク!【第15回】―
公開日:2013/11/28
【前回までのおさらい】
○【第1回】ブンガク部が廃部ってどういうこと?
○【第2回】帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる!
○【第3回】ブンガク部の救世主?顧問をさがせ
○【第4回】ラノベ好きな先生からの挑戦状
○【第5回】『東京レイヴンズ』作者・あざの耕平さんに聞いてみた
○【第6回】ラノベって女の子でも読めるの?
○【第7回】中二病でトラブルメーカーってなんなの?
○【第8回】教えて!大人でも楽しめるキャラクター小説
○【第9回】ラブコメはラノベの王道!?
○【第10回】スピンアウト・スピンオフってどういう意味?
○【第11回】なぜ人気?主人公が人外のライトノベル
○【第12回】6人目の部員は引きこもりですが、何か?
○【第13回】メンバー揃ったし学園祭の出し物を決めよう!
○【第14回】学園生活はいつだってほろ苦い
~ブンガク部~
「……で、何があったの?」
「……えーと、実は、その前回というか、先ほどちょっとトラブルがありまして、その……」
「その?」
「……実は直斗が引きこもりになった原因を皆に話してしまって、このようなことに……」
「で、その後、追い討ちをかけるように先生がデータをなくして飛んできたと。で、このような状況に……」
「や、やばい、終わらん……」
「諦めるなよ、まだ時間はあるから……」
「……う~ん、これは困ったね」
「……まことにその通りでございます」
「まあ、先生がデータをなくした事はまず置いといて中島君、その話はないよ。直斗君からすればここ最大のトラウマなんだからさ。さすがに今回は優斗君が悪いよ」
「はい、ごめんなさい」
「違うでしょう、謝るのは私にじゃなくて直斗君にでしょう」
「……は、はい」
「まあ、この話はこのくらいにしておいて、まず問題は部誌の入稿データだよね。それに直斗君が戻らないと作業も進まないだろうしね」
「うん、機嫌、直して戻ってきてくれるといいんだけど、直斗は一度落ち込むと立ち直るまで時間がかかるやつだから……そもそもこのランキングの文集を考え付いたのは直斗だし一からやり直すのはあいつがいないと難しいよ」
「唯ちゃんが家に様子を見に行ってくれているから大丈夫だとは思うけど……やっぱり心配だね」
「……ああ、悩んでちゃ駄目だ。直斗がいなくても、できるだけのことをやらなくちゃ、せっかくのあいつのアイディアなんだからがんばらないと、まずはやれるだけやって行き詰ったら、その……また後で考えよう!」
「……ふう、うん、そうだね!」
~一方、その頃~
「……直斗君、家にもいませんでしたね。家にいると思ったんですがどこに行ってしまったんでしょうか? ……う~ん、あれ。もしかしてあそこのベンチに座っているの、直斗君?」
「あ~、思わず、勢いだけで飛び出してしまった。これからどうしよう……はあ~」
「……直斗君」
「うわ、だ、誰!?」
「私ですよ、唯です」
「あ、あれ、唯ちゃんか。どうしてここに?」
「先輩たちに言われたんですよ、直斗君が部を飛び出してどこか行ってしまったって。だから捜しに来たんです」
「そう……だったんだ。わざわざこんなところまで来てもらって、ごめんね」
「みんな心配していましたよ。直斗君の方は大丈夫?」
「うん、なんか『虚惑星を探索するための魔法使い(※1)』になりたいとか思っていたけど、とりあえずは大丈夫かな」
「虚惑星を探索するための魔法使い」(※1)
『ファイヤーガール』(星空めてお/TYPE-MOON BOOKS)
青藍高校に入学した高校一年生、日ノ岡ほむらは高校デビュー失敗気味の日常の中、ある日、同学年の少年、東野巧に「魔法使いやらない?」と言われ誘われるままに入部。だが、そこは未知の惑星を調査する国際連合に所属する探検部だった。そして12年前に発見された虚惑星ヌテラを探索するためほむら達は未知の世界へと降り立つ。
「……ふ~ん、で、本当は何があったんですか?」
「……あ、え~と、なんと言えばいいか」
「話を聞かせてもらえますか? 私でも話くらいは聞いて上げられますし……」
「……うん、少し話しづらいけど聞いてもらえたら、楽になるかな。実はね、僕は今年の春くらいにね……」
~それから~
「……そうでしたか、好きな人に告白をして撃沈したと……まあ、平たく言えばフラれたと、それが原因で引きこもりに?」
「うん、撃沈といえば言えばそうなんだけど、それとあまり平たくとか言わないで、そのメンタル的に痛いから……」
「あ……あはは、ごめんなさい。でも、それは直斗君がいつまでも悩んでいるべきことじゃないと私は思いますよ」
「……そう、かな?」
「だってそうですよ、直斗君の高校生活は何も恋愛だけじゃないんですから」
「え……?」
「“青春”っていうんですかね。まあ、まずは自分のやりたいことを見つけて、無茶したり馬鹿できる同じ趣味を持った友人や仲間を作ることですかね。……まあ、日本に来てからの私の経験談なんですけど」
「青春って、唯ちゃんは『青春男(※2)』ですか!?」
「青春男/電波女」(※2)
『電波女と青春男』(入間人間/アスキー・メディアワークス)
主人公・丹羽真は、両親の仕事の都合上、叔母の藤和女々の家に預けられることになった。そこで真は布団に巻かれた自称宇宙人で電波女の従妹、藤和エリオ出会う。叔母によると彼女は以前、半年間ほど行方不明になり、帰ってきたと思ったら「宇宙人にさらわれた」「自分は宇宙人だ」と言うようになっていたらしい。そんな電波な従妹を真は自分の青春を捧げるが如く渋々面倒を見る羽目となるのだが――。2011年にアニメ化された。
「それだと直斗君は『電波女(※2)』みたいな感じですね」
「ふふ、ははは……それ面白いね」
「やっと笑ってくれましまね。まあ、だから、まずはここでのイベントを楽しんでみませんか?……だって直斗君の青春はまだ始まったばかりじゃないですか」
「……まったく唯ちゃんは欲張りなほどポジティブだな。わかった、戻るよ。正直、そのポジティブさが羨ましいけど……」
「まあ、それが一番のとりえですから……」
ピロロロ~ン♪ ピロロロ~ン♪ ピロロロ~ン♪
「ん? あ、電話ですね、今川先輩からだ……はい、佐藤です」
『あ、もしもし、唯ちゃん。直斗君見つかった?』
「はい、見つかりました。今からそちらに戻ります」
『うん、お願い。優斗君たちは悲鳴を上げながら、がんばっているから早く帰ってきて!さすがに直斗君なしに部誌を作りなおすのは堪えるみたいだからさ』
「はい、わかりました。じゃあ、また……」
『うん、じゃあね』
「……誰から?」
「今川先輩からです。部誌の入稿データがなくなってしまって、みんな困っていて、直斗君の助けがほしいみたいですよ」
「部誌の入稿データが!?」
「なんだか、直斗君が出て行った後にゴタゴタしていて、だから直斗君がいないと……」
「そっか、それは大変だね……」
「そんなに落ち込まないで直斗君、まだ時間はありますから……」
「いや、そうじゃないんだ。実はね……」
「……ん?」
~その頃、ブンガク部~
「……諦めちゃ駄目だ……諦めちゃ駄目だ……」
「先輩、大丈夫ですか~」
「やばいコレ、マジ、ヤバいよね……」
「……みんな、もうすぐ二人が帰ってくるからがんばって~」
「……先輩方、今、戻りました。直斗君も一緒です」
「キ、キターッ!」
「唯ちゃんお帰り……直斗君も大丈夫?」
「あ、はい」
「……な、直斗」
「兄さん……」
「悪かったな、先はその……相談もなしにみんなに話したりして」
「ううん、いいよ、もう気にしてない。だけど兄さん、部誌の入稿データが無いんでしょう?」
「ああ、そうなんだ。僕たちでできるところまでやったんだけど、上手くいかなくてさ」
「……なら、兄さんコレを使って、はい!」
「これは? USB?」
「入稿データのバックアップだよ、もしもと思って作っておいたんだ」
「……な、直斗、ありがとう。これなら部誌が作れる!」
「お手柄、後輩、やるじゃん!」
「あ!? はい……」
「あはは、一時はどうなるかと思ったぜ……」
「じゃあ、みんな、あと、もうひとふん張りだ。がんばって仕上げよう!」
「ふふ、調子いいな~、優斗君は……」
「よかったね、直斗君。なんとか間に合いそうで……」
「うん、まあね。それと唯ちゃん……」
「はい?」
「その……ありがとね」
「……ふふ、どういたしまして……」
……つづく
次回予告
「こんにちは、中島直斗です!」
「同じくこんにちは佐藤唯です!」
「ふう、なんだか、ようやく部になじめてきた気がする」
「よかったですね、直斗君!」
「そういえば、もうすぐ学園祭だね」
「そうですね、そのときは一緒にがんばりましょう! では……」
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」