旅立つ少女にラノベを贈ろう ―ブンガク!【第21回】―

公開日:2014/2/28

 中高生を中心に大人気の「ライトノベル」(通称ラノベ)。最近ではテレビアニメ化などの影響でファン層も拡大しています。そこで、ラノベって言葉は知ってても読んだことがない、という初心者向けに“超”入門コラムをお届け!代表的な作品の紹介や、楽しみ方について、作家や絵師など関係者への取材も織り交ぜながら、ラノベ風の会話劇でお送りします。毎月第1・3火曜に更新予定!

制作協力:代々木アニメーション学院 / 文=カンダ ユウヤ 絵=ましま


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~ブンガク部 部室~

佐藤唯(笑)
「では、みなさん。また、日本に来たときはよろしくお願いします」

今川凜子(普)
「うん、またね。唯ちゃん、あっちでも元気でね」

中島優斗(普)
「いろいろ助けてもらってありがとう。あっちでも頑張ってね!」

桜井智樹(普)
「またね!たまには日本にも遊びに来てよ」

石田健(普)
「じゃあな、唯ちゃん。またラノベの話でもしようぜ」

佐藤唯(笑)
「みなさん……ありがとうございます」

今川凜子(笑)
「唯ちゃん、これ最後にみんなから寄書きと贈り物だよ」

佐藤唯(普)
「……え!?」

今川凜子(普)
「はい、これ、みんなで選んだんだ。海外だとなかなか手に入らないと思ってね。たまにはこの本を読んで私たちのこと、思い出してね」

佐藤唯(笑)
「……『さくら荘のペットな彼女』!! これ読んでみたかったんです。みなさん、ありがとうございます」

さくら荘のペットな彼女

『さくら荘のペットな彼女』(鴨志田一/電撃文庫)

俺の住む寮『さくら荘』は、学園の変人たちの集まり。そんな寮に転校早々入ってきた椎名ましろは、可愛くて清楚で、しかも世界的に有名な天才画家だという。天才美少女を寮の変人たちから守らねば!と意気込む俺だったが、入寮翌日恐るべき事実が発覚する。ましろは、外に出れば必ず道に迷い、部屋はめちゃくちゃ、ぱんつすら自分で選べないし、穿けない、生活破綻少女だったのだ!

今川凜子(普)
「そういえばさ、唯ちゃん、今日はこのあとどうするの?」

佐藤唯(笑)
「はい、今日はこのあと直斗君とライトノベルコンテストに出した作品の結果発表を会場に見にいって、それから、空港に向かおうと思います」

今川凜子(普)
「そっか、じゃあ、道中、気をつけてね。迎えはいつくらいに来るの?」

佐藤唯(笑)
「はい、タクシーで行こうと思って……ん?」

田中先生(笑)
「……いや、道路が雪で凍りついてここまで来るのに時間かかっちゃったよ。にしても今日は車がよくスリップしたね、あははは……」

中島直斗(困)
「……う、気持ち悪い、よ、酔った……」

佐藤唯(困)
「先生、それに直斗君も!?」

田中先生(笑)
「やあ、おはよう、みんな!」

佐藤唯(困)
「直斗君、先生、どうしたんですか!?」

中島直斗(普)
「……やあ、唯ちゃん」

田中先生(普)
「コンテストに行くんだろ、今日は送っていくよ」

佐藤唯(困)
「はい!? でも、いいんですか? 確か直斗君と先生は学校のほうが……」

田中先生(笑)
「良いよ、てか今日は僕、たまたま休みだし、まあ直斗君はちょっとズル休みかな。まあ、直斗君も発表を唯ちゃんと見に行きたいだろうから、今回は特別にね」

中島直斗(困)
「先生、しーッ! そういうことは内緒ですから!」

田中先生(笑)
「あははは、そうだった、そうだった。まあ、それにさ、今日の発表は君と直斗君にとって特別な日だ、もちろん僕にとってもね。……だからさ、ぜひ僕にも手伝わせてくれないかい」

佐藤唯(普)
「先生……」

中島直斗(普)
「先生もこう言ってくれていることだしさ。唯ちゃん、行こう!」

佐藤唯(笑)
「……もう、仕方ないですね。直斗君は……」

中島直斗(笑)
「うん」

田中先生(笑)
「……んじゃ、行こうか。それじゃあ、目指すはコンテスト会場、いざ出陣!」

中島直斗(普)
「先生、戦国武将じゃないんですから……」

田中先生(笑)
「……いざ出陣!」

中島直斗(普)
「え~と、もうそれでいいです、あはは……」

佐藤唯(笑)
「それじゃ、みなさん、ありがとうございました」

中島優斗(笑)
「唯ちゃん、またね。ありがとう~!」

今川凜子(笑)
「二人とも気をつけてね~!」

桜井智樹(笑)
「じゃあね、また、きてね~!」

石田健(普)
「あっちでも元気でな~!」

~それから~

田中先生(困)
「あれれ!? 会場までの道、込んでいるな。コレじゃあ、進めないよ」

佐藤唯(困)
「え、そんな……!?」

中島直斗(困)
「先生、どうしましょう」

田中先生(困)
「……う~ん、このままじゃ、会場に着くのが遅れちゃいそうだな。そうだ、二人ともここは車を降りて歩いて会場に向かいなさい。多分そっちのほうが早いと思う」

佐藤唯(困) 中島直斗(困)
「で、でも!?」

中島直斗(困)
「それじゃあ、先生が」

田中先生(普)
「僕のことはいいから、これは君たちのコンテストだ。君たちが見てくるべきだよ。僕は後日にでもネットでも何でも使えば発表の内容くらいは確認できる」

中島直斗(普)
「……分かりました。唯ちゃん、先生の言うとおりのまま会場に向かおう」

佐藤唯(普)
「はい。……先生、ありがとうございます」

田中先生(笑)
「うん、僕も様子を見てわき道でも見つけて駐車して君たちを追いかけるから、行っておいで!」

佐藤唯(笑) 中島直斗(笑)
「はい!」

~会場へ~

中島直斗(普)
「唯ちゃん、早く会場もう人が集まってるよ」

佐藤唯(普)
「あ、はい」

中島直斗(普)
「うわ、すごい人だかりになっているね」

佐藤唯(困)
「こんなにもコンテストに参加していた人がいたんですね」

中島直斗(普)
「ねえ、唯ちゃん、あそこに結果が張り出されているよ」

佐藤唯(笑)
「えーと、まずは最優秀賞の作品からですね」

中島直斗(普)
「……う~ん、さすがに最優秀賞には僕らの名前は載っていないみたいだね」

佐藤唯(笑)
「そうですね。さすがに初参加で最優秀賞は難しいですよ。では次の賞を見てみましょう」

中島直斗(普)
「うん」

佐藤唯(普)
「優秀賞の方はどうでしょう……」

中島直斗(普)
「……う~ん、優秀賞にも僕らの名前はないね」

佐藤唯(笑)
「……そんな……」

中島直斗(普)
「だ、大丈夫だって、まだ佳作の賞が残っているじゃないか、諦めるにはまだ早いよ」

佐藤唯(困)
「……そ、そうですよね」

中島直斗(普)
「じゃあ、次も見に行こう」

佐藤唯(笑)
「はい」

中島直斗(普)
「えーと、佳作、佳作は……あ、あった、あそこだ」

佐藤唯(困)
「えーと、私たちの作品は……その、載ってないですね……」

中島直斗(普)
「……唯ちゃん?」

佐藤唯(笑)
「……あ、そんな悲しそうな顔しないでください直斗君、別にいいんですよ」

中島直斗(普)
「で、でも……」

佐藤唯(笑)
「私は大丈夫です。私はこのコンテストに参加できただけでも満足ですから……。さあ、行きましょう、先生が待っています」

中島直斗(普)
「うん……あれ? もう一枚何か張り出されてるみたいだ、なんだろう?」

佐藤唯(笑)
「……ん? 直斗君、どうしたんですか?」

中島直斗(普)
「……あ、あ、アレ見てよ、唯ちゃん!?」

佐藤唯(普)
「え? あ、あれは……佳作特別賞!?」

中島直斗(普)
「ぼ、僕らの名前、もしかしたらあそこにあるんじゃない!?」

佐藤唯(困)
「あ、はい……えーと、あ……」

中島直斗(普)
「ど、どう、唯ちゃん、僕たちの名前あった!?」

佐藤唯(笑)
「あ……あります。私たちの名前、載っています……」

中島直斗(普)
「……き」

佐藤唯(困)
「き?」

中島直斗(笑)
「キターッ!! や、やったよ、唯ちゃん! 僕たちの名前あった、あったんだよ!!」

佐藤唯(笑)
「ふふ、はい……私、今すごく嬉しくて、なんか上手く言葉が出ません……」

中島直斗(笑)
「良いよ、今は言葉が出なくても、ただ素直に今を喜べればそれでさ! あはは……」

佐藤唯(笑)
「はい!」

~それから 彼らは空港へ~

佐藤唯(笑)
「直斗君、ありがとうございました。あなたのおかげで後悔せず帰ることができます」

中島直斗(普)
「うんん、僕もやる事をやるだけやってやりきることができたし、お礼を言うのは僕のほうだよ。ありがとうね」

佐藤唯(笑)
「もう、そんなことを言ったら私のほうが直斗君にお礼を言いきれないじゃないですか」

中島直斗(普)
「あはは、ごめん……」

佐藤唯(笑)
「ふふっ! それじゃあ、もうすぐフライトの時間なので行きますね」

中島直斗(普)
「あ、うん。じゃあ、またね」

佐藤唯(普)
「……あ、そうだ、直斗君」

中島直斗(普)
「はい?」

佐藤唯(笑)
「これをどうぞ……」

中島直斗(普)
「これは『告白予行練習』?」

告白予行練習

『告白予行練習』(藤谷燈子/角川ビーンズ文庫)

ニコニコ動画で絶大な人気を誇る、青春系胸キュンロックの名手・HoneyWorksの代表曲「告白予行練習」の小説版。桜丘高校3年の夏樹は、幼なじみで映研所属の優に片思い中。けれど、素直になれず、優を告白の“練習”相手だと言ってしまう。ホントの気持ちをごまかすうちに、同じ美術部所属の美桜、あかり達と想いがこじれて!?“本番”をむかえることなんて、できるの!?

佐藤唯(笑)
「そのなんていうか、直斗君にいろいろ助けていただいたので直斗君に私からコンテストの記念としてこれを贈らせてください。私のお気に入りのライトノベルです。読んでみてください」

中島直斗(笑)
「あ、ありがとう……それなら僕も唯ちゃんに記念として一冊、はい」

佐藤唯(普)
「これは『“文学少女”と死にたがりの道化』ですか?」

“文学少女”と死にたがりの道化

『“文学少女”と死にたがりの道化』(野村美月/ファミ通文庫)

物語を食べちゃうくらい深く愛している文芸部部長、自称“文学少女”こと天野遠子と、平穏と平凡を愛する、今はただの男子高校生、井上心葉。ある日、何故か文芸部に「どうかあたしの恋を叶えてください!」という恋の相談が持ち込まれた。それは、単なる恋文の代筆のはずだったが思わぬ事件へと繋がっていた。それは、人間の心が分からない、孤独な“お化け”の嘆きと絶望の物語だった

中島直斗(普)
「うん、僕のお気に入りのライトノベルだから是非、読んでみてね」

佐藤唯(笑)
「……ありがとう、直斗君、大切に読みますね」

中島直斗(普)
「うん、それと唯ちゃんもあっちに行っても元気でね」

佐藤唯(笑)
「はい、直斗君の方もお元気で……」

中島直斗(笑)
「うん。……だから、また日本に来てね。みんな唯ちゃんのこと、待っているからさ」

佐藤唯(笑)
「……そんなの絶対に来るに決まっているじゃないですか! ではまたそのときまで、さようなら……」

中島直斗(普)
「うん、またね、唯ちゃん。そのときまで、さようなら……ありがとう!」

……つづく

次回予告

中島優斗(普)
「こんにちは中島優斗です!」

中島直斗(普)
「同じくこんにちは中島直斗です!」

中島優斗(笑)
「どうだ、直斗、お姫様は無事に送り届けてやれたかい?」

中島直斗(普)
「兄さん、今日は妙にカッコつけたことをいうんだね」

中島優斗(困)
「いいだろ、たまには僕だってカッコつけてもさ」

中島直斗(普)
「ま、たまにはね。では……」

中島直斗(笑) 中島優斗(笑)
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」