まつもとあつしの電子書籍最前線 ソニー”Reader”が本好きに支持される理由

更新日:2014/3/19

“Reader Store”。特集を中心に構成され、さながら本のセレクトショップという雰囲気

加藤:私たちの”Reader Store”に来ていただけるお客様にとって、魅力的・興味を引く本だと感じていただけるものをセレクトすることにも注力しています。こちらから、こういうものはどうでしょうかというおすすめを、バナーなり特集ページなりで提案していく。

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説明文や書誌情報も標準的なものを使いつつ、私たちが独自に作るものもあります。手間を掛けることで、居心地のいい本屋だと感じてもらいたいですね。

――ブックリスタ(ソニー・KDDI・凸版印刷・朝日新聞社の合弁会社)からの書籍タイトルの供給によって、徐々にタイトル数も増えてきたと、わたしも感じています。

加藤:これまでの電子書籍は、市場自体が数百億円あるといわれたなか、売れる作品の偏りがあったと思うんですね。
そのようななかでも、紙のように読めるE Inkを採用した”Reader”であれば、紙で支持されている本がきちっと売れていくという結果も生み出したいと思っています。

いま(取材時:10月4日)、ランキングには、『探偵はバーにいる』、吉田修一さん、東川篤哉さん、などの文芸作品がありながら、「もしドラ」や『実践ドラッカー』などのビジネス本もあります。紙の書店さんと傾向が似た販売状況になっていると思います。

出版社からの高い評価はどこから?

――講談社が、全社員にソニー”Reader”を配付したことも話題を集めました。北村:ターゲットを絞ってやってきた結果、現状”Reader”の購入者を対象に調査したところ、月に本を2冊以上読まれる方が70%という結果が出ました。ガジェット・ハード好きではなく、本好きの方に、リーチができたというところが、一つ大きなこの1年の成果になります。

加藤:いままでPCやガラケーで売れていたものと、違ったジャンルの本が売れる。これまでの客層とは違ったものになるというのは、出版社にとって大事なポイントであるはずです。例えばケイタイから機種変更してスマートフォンに移行しても、そこで購入される電子書籍はケイタイに近い売れ方をしている。

そういう意味でいうと、スマートフォンの世界ではユーザーが増えたというよりも、そのままスライドしているのかもしれません。そのなかで、違った特性のあるストアとか端末が出てくると、それは明らかに電子書籍としてはアドオンの部分になります。その新しい領域は、紙の書籍自体のプロモーションにつながって、紙の売上も同時に引っ張るという、いい循環になればいいなと思っています。