まつもとあつしの電子書籍最前線 ソニー”Reader”が本好きに支持される理由

更新日:2014/3/19

ハードとサービスを1社で担う強み

――”Reader Store”で本を買って、読む方というのは、これまで電子書籍に触れたことがなかった人が多いのかなという印象ですね。

リーダーは1画面に9冊の本がならび、画面は合計9画面用意されている

北村:これまでは、ストア側と、ハードを売る側のMKとの間で、ハードの売上をたくさんあげるには、ストアでタイトルを早く増やさないとだめだという議論がありました。

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ただ、ビジネス開始から1年が経ち、タイトル数よりも、お客さまに読んで頂きたい本をどのように一冊一冊をお薦めするのか、そして、どのように”Reader”上で楽しんで頂けるかといった、ブックストアとハードの連携こそが大切だと分かってきました。

タイトル数がどうか、といった議論ばかりしていると、紙で行っていることと変わらない。そこにある情報コンテンツやご提案をどうしていくのかが、すごく重要ですね。

今回、それをもっと進化させましょうということで形になったのが、”Reader”上で”Reader Store”にアクセスできるハードなんです。
どうしても、通信機能が付きましたとか、そういう話になってしまいがちですが、実は、より重要なのは、ストアとハードがシームレスに融合したことによって、新しい読書の体験をお客様に提供できるようになったというところが、今回の進化のポイントなんですね。

実は、ハードとeBookストアを1社のなかでやっているのは、国内ではソニーだけで、これは大きな強みなんです。

――たしかに、いまこうして、北村さんと加藤さんが並んで話を伺えているわけですね。

北村:その強みを生かして、専用機だからこそできること――そしてeBookストアを持つからこそできることとして、ワンアクションで”Reader Store”に行って、本を探して、読むという快適な行為を実現するということにまず取り組みました。

――なるほど、Kindleがそうなっているから、ということでは無くて、読書専用端末としての進化を考えて、そうなった。

北村:いわゆるタブレットのトップ画面とういのは、アプリアイコンがたくさん並んでいる状態です。一方で、今回の”Reader”は電源をつけた状態で、”Reader Store”ボタンを押すだけで、ワイヤレスで”Reader Store”まで一挙にワンアクションでアクセスできる。

本を読みたい時、すぐ本屋さんに行けるということは、重要なポイントです。

一方で、検索性や一覧性は、電子ペーパーのこの画面は必ずしも良いわけではありません。ですからお客さまには、用途に応じて端末を選んでいただければいいと思います。

このように、いつでもどこでも手軽に”Reader Store”を訪問して頂けるようになった上で、どのような本を選んで買っていただくのかというのが、次の課題になります。
 
次回更新は、11月2日です。後編では、Kindleとの差別化、ソーシャルリーディングについてお届けします。

「まつもとあつしの電子書籍最前線」記事一覧
■第1回「ダイヤモンド社の電子書籍作り」(前編)(後編)
■第2回「赤松健が考える電子コミックの未来」(前編)(後編)
■第3回「村上龍が描く電子書籍の未来とは?」(前編)(後編)
■第4回「電子本棚『ブクログ』と電子出版『パブー』からみる新しい読書の形」(前編)(後編)
■第5回「電子出版をゲリラ戦で勝ち抜くアドベンチャー社」(前編)(後編)
■第6回「電子書籍は読書の未来を変える?」(前編)(後編)
■第7回「ソニー”Reader”が本好きに支持される理由」(前編)(後編)
■第8回「ミリオンセラー『スティーブ・ジョブズ』 はこうして生まれた」
■第9回「2011年、電子書籍は進化したのか」