【第15回】「くるり」も参加 ―noteがつなぐ クリエイターとファンの新しい関係(前編)

更新日:2014/7/11

クリエイターとの「つながり」が価値を生む

加藤:本を送り出す際も読者とのリレーション(関係)を作るのが大変なのです。ベストセラー作家でさえ、次の作品がぜんぜん売れない、ということはよくおこります。毎回、読者(ファン)とのリレーションをゼロから作り出さないといけない。出版社や連載先が変わったりすると読者は追い切れないし、「本がでました」というタイミングだと年に2回くらいしか告知ができないわけじゃないですか。

――たしかに。

加藤:noteでは、まずTwitterのように「フォロー」という形でクリエイターとユーザーがつながるようになっています。フォローした人が更新したコンテンツはタイムラインとして表示されるのです。

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 いままで、たとえば本の告知をしようとすると、公式ページや、Twitter、動画ならYouTubeへといろんなメディアにバラバラに行わなければなりませんでした。読者からしても、それってやっぱり追い切れない。だから、noteではTwitterのような短文を投稿できる「トーク」、写真を投稿する「イメージ」、記事くらいの長さの文章を投稿する「テキスト」、音を投稿する「サウンド」・YouTubeなどと連携して動画を投稿する「ムービー」の5種類のノートを用意したんです。

 動画はまだ対応していませんが、その他のノートはとても簡単に販売することができます。BLOGなどに慣れていない人でもさっと投稿が行えるようインターフェイスはとてもシンプルなんです。

cakesをオープンにしたのがnote

加藤:実は、cakesを作ったときから、オープン化はやりたかったんですよ。

――「編集」が介在してコンテンツがピックアップされる雑誌のような場ではなく、誰でも自由に投稿できる、ということですね。

加藤:はい。僕はやっぱりインターネットはそういう場所だと思うんですよね。限られた人だけが使うメディアではないのがやっぱりインターネットの良さだから、オープンっていうのは基本だと思っていました。

noteには投稿されたコンテンツを束ねるマガジン機能も加わりました。

――目次みたいで、見た目はもう、本や雑誌に近いですよね。

加藤:この「マガジン」もフォローできますから、あたかも雑誌を「購読」するような感覚で利用できます。まもなくこの「マガジン」も販売が可能になるだけでなく、「定期購読」のように継続的におカネを払って読み続けることができるようになるんです。

となると、これって先ほどお話しした有料メルマガを置き換える存在になり得ると思っています。メルマガはコミュニケーションには向きませんが、noteならそれも可能ですから、芸能人の方にも使ってもらいやすい。

――なるほど。コンテンツを無尽蔵に持っていなくても、読者とのやり取りでも勝負できる、と。

加藤:そうです。さらに継続課金の後には、コラボレーション機能も付けます。複数のクリエイターがnoteに書いたコンテンツを、「1冊」のコラボレーションマガジンに組み込めるようになるんです。

例えば、芸能人の方がテレビ番組のコラボレーションマガジンを作るとします。そこにタレントさんが三人出演していて、三人がそれぞれのnoteをやっている場合、それぞれ自分のnoteの中に、たとえば「収録前に一緒にお弁当を食べています」と投稿したときに、コラボレーションマガジンの中にも入れることができるようになります。それを繰り返すと、メディアが1つ個々人のノートとは別にできるわけです。これっていまcakesでやっていることを、ある意味オープンにした、ということにもなるんです。

――なるほど、なるほど。

加藤:個人でもできるし、コラボもできる。その結果、雑誌のような構成にすることもできる。僕がずっと考えていた究極のコンテンツ配信のプラットフォームにかなり近づいてきました。

――ブロガーの方と本を書く機会も増えてきていて、打ち合わせでのやり取りをそのまま文字にしたい、配信したいと思う事もあるわけですが、それも可能になるというわけですね。

加藤:そうですね。音声そのままでも良いと思うんです。二人がそれぞれ自分のnoteに書いて、それがコラボマガジンに掲載されていく。販売するのであれば、予め配分を決めておけば、cakesのように自動で分配される仕組みも備える予定です。

 個人メディアの理想型を追及したnoteは、私たち読者やコンテンツのファンにとっても、作品が生まれる過程を楽しみながら、必要に応じておカネを支払うことでクリエイターを支えることができる場に育ちつつあります。後編では「くるり」参加の背景など、さらに深いお話しをご紹介します。お楽しみに!

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加藤貞顕(かとう・さだあき)
1973年、新潟県生まれ。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。アスキー(現:アスキー・メディアワークス)にて、おもにコンピュータ雑誌の編集を担当。ダイヤモンド社に移籍し、単行本や電子書籍の編集に携わる。おもな担当書籍は『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』『スタバではグランデを買え!』『英語耳』など。現時点で最も日本で電子書籍を売っているダイヤモンド社のiPhone/Android用電子書籍リーダーアプリDReader(現:BookPorter)の開発にも携わる。2011年12月にピースオブケイクを設立、代表取締役CEOに就任。2012年9月に「cakes」を、2014年4月に「note」をオープン。