【第16回】新端末はなくても見所たくさん――東京国際ブックフェア2014にいってみた(後編)

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2014/7/11

 東京国際ブックフェア・電子出版エキスポに行ってきました。前編では、Twitterタイムライン上でのEPUB表示や、セルフパブリッシングについての新たな取り組みについて取り上げました。後編では、私たち読者が電子書籍を身近に感じられる取り組みについて見て行きたいと思います。

●リアル書店と電子書籍(電子書店)連携の試み

 読書好きの人はいつでもどこでも読書をしたいもの。空き時間に読みたい本が手元になく、「持ってくれば良かった」と後悔したことはないでしょうか? 家にある紙の本がもし電子書籍でも読めたなら…。

 そんな要望に答えようとしているのが、TSUTAYAとBookLive!が取り組んでいるリアル書店と電子書店の相互サービス連携です。

 ユーザーはTポイントと電子書店BookLive!の両方の会員となっている必要がありますが、あらかじめ、これらを連携させておけば、TSUTAYAの店頭で紙の書籍または雑誌購入時にレジでTポイントカードを提示すると、BookLive!の本棚に店頭で購入したのと同じ電子書籍が表示される、という仕組みです。

会計の際、Tポイントカードを提示する

即座に自分のBookLive!の本棚に表示される

 また、自分の読みたい紙の書籍がTSUTAYAにない場合でも、書店で予約すれば、到着するまでの間、電子版で読めるようにするとのこと(FastRead)。

 これらはあくまでもこのサービスに対応する書籍・雑誌に限定されますが、Tポイントカードを提供するカルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)としては、Tポイントカード提携店舗をさらに増やす狙いがあると見られ、導入する書店でも来客数の増加が期待しているようです。

 ただし気になる点も。日本最大級の電子書店とはいえ、現在のところ連携しているのがBookLive!だけである点、そしてまだ電子書籍を提供する出版社が限られている点です。導入時期も「年内」とだけ示されており、詳しい時期は未定です。

 楽天では、別の視点からリアル書店との連携を図っています。それは書店で電子書籍が買える仕組み「BooCa(ブッカ)」です。

さまざまな作品が揃っている

 ユーザーは書店に並べられている電子書籍カードの中から読みたいものを取ってレジで購入します。ダウンロードしたい電子書店の銀色のシールを削り、表示されたコードを入力もしくはQRコードを読み取れば、該当する電子書籍をダウンロードできる仕組みになっています。

 実証実験ということもあり、現在のところ対応している電子書店は楽天KoboとBookLive!のみ。対応書店も、三省堂書店神保町本店、有隣堂ヨドバシAKIBA店、豊川堂カルミア店、本の学校今井ブックセンターと限られています。実証期間は11月21日までとなっていますが、ダウンロード有効期間内(BooCa購入後6カ月以内)にダウンロードすれば、11月21日以降も購入した電子書籍は読むことはできます。

 大日本印刷(DNP)が展示していた「OKURIBON」についても触れておきたいと思います。

ブースでは、タブレット端末でデモ展示も行われていた

 OKURIBONとは、ハイブリッド書店「honto」ならではのサービスで、電子書店hontoから電子書籍をプレゼントできるというものです。これに加えて、丸善・ジュンク堂・文教堂各書店またはオンライン書店で紙の本をラッピングしてリアル書店では特製しおりを、オンライン書店ではメッセージカードを添えてプレゼントできる仕組みです。

ギフトの楽しい雰囲気を盛り上げる展示

 通販でギフトを贈れるAmazonもKindleストアで電子書籍を贈ることはできませんでした。受け取った人がhonto会員でない場合でも、ギフトメールに記載されたURLから簡単に会員登録できるようになっているのもポイントです。

 このように今回のブックフェアでは、リアル書店と電子書店・書籍の連携についての展示が目立ちました。一見、水と油のようにも見える両者ですが、実はうまく連携させることでメリットがあることが分かります。

 電子書店は画面上に電子書籍全てを表示できません。リアル書店に比べて、ユーザーへのディスカバラビリティ(発見)の面で弱いところがあるのです。一方、リアル書店はオンライン書店に押され気味のため、足を運んでもらうために知恵を絞っています。

 リアル書店と電子書店・書籍が連携することで、電子書籍ユーザーであってもリアル書店に足を運び、電子書店では生まれにくい「新たな本との出会い」を楽しめるようになるかも知れません。今後、こういった連携がさらに強化されることに期待したいところです。

●数十冊の書籍がこれひとつに

 DNPのもう一つの取り組みである「honto Pocket」も、電子書籍のもう一つのあり方を示していました。

紙の本では数十冊の作品が

この中にパッケージされている

 参考展示ですが、シリーズ作品のコンテンツがまるまる1つの電子書籍リーダーに予め組み込まれており、購入手続きやダウンロードは必要ありません。「紙の本のように、手に入れたらすぐ読める」というものです。

 展示されていたのは『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズや『アガサ・クリスティ』シリーズ、また非常時に役立つ書籍と災害対策ツールをキットにした「LIFE BEST」といったパッケージでした。

 5インチの電子ペーパー画面を搭載した小さなこの端末は単3形乾電池2本を電源とし、通信機能はなく、新たなコンテンツの追加も不可……といった割り切ったものですが、すべての操作を物理キーで行えるほか、購入するだけで読めるというところが、かえってこれまで電子書籍は難しいと感じていた層にも受け入れられるのかもしれません。

***

 いかがだったでしょうか? 新型電子端末といった派手さはないものの、ソーシャルメディアも活用しながら電子書籍をさらに普及させると同時に、リアル書店にも新しい意味を与えようとする意欲的な展示が多かったようにも思えます。電子書籍の普及をきっかけとしたセルフパブリッシングの拡がりは、私たち読み手に新しい読書体験も提供してくれるはずです。今回、展示されていたサービスが本格的にスタートするのを心待ちにしたいと思います。

文=まつもとあつし 協力=渡辺まりか

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