まつもとあつしの電子書籍最前線 ソニー”Reader”が本好きに支持される理由(後編)
更新日:2013/8/14
そもそも本はプレミアムなもの
――伺っていると、ソニーさんにとって、本、電子書籍サービスというのは、プレミアムな商品であり、サービスと位置づけているように感じられます。車でいうところの高級車のような……。
北村:本は、特に国内においては、消費されるというよりもプレミアムなものですよね。なので、2割の方々が8割の消費をするというところで成り立っている文化かもしれません。
残りの8割の人たちの中には、プレミアなサービスよりも、ネットでいいじゃない、という方もいるはずです。しかし、ちゃんと編集された本とだれかが書いたブログとの違いは、そういうプレミアな深さにあると思います。
ソーシャルリーディングに向けた展望は?
――プレミアムなサービスであり、ハードウエアであるということはわかりました。
読書体験という言葉が何度か出ましたが、たとえば最近話題になった、ポッター・モア(このコンテンツはソニーがパートナーとして協力している)や読者が作った二次創作コンテンツを取り入れていく。あるいは、ソーシャルリーディング――自分が読んだ本の感想をTwitterに投稿したりWeb上に公開して、そこから読者同士が繋がっていくというようなことが、次に来るべき読書体験だと考えています。
Kindleはアンダーラインやコメントを共有する機能を既に内包していたりします。
そういった、単に本を読むところから次のステージに向けてはどう進化していくのでしょうか?
加藤:SNS連携とか、ソーシャルというのは、避けては通れないと思っています。それをどの軸で使うかというのは考えているところですね。
相手の顔が見えるECサイトというものが、今のトレンドになっていると思うんですね。Facebookの状況を見てもわかることで、誰とこの情報を共有しているか、誰からソースとして情報をもらっているかというのは、大事なところだと思っています。
そういう意味でいうと、顔が見える人間とキチッと情報をお互いに渡し合えるというところをやるべきところかなとは思っています。相手の顔というか、知っている人じゃないとその情報、のもつ意味が薄れてしまう。
――仰るとおりですね。単に共有できるだけでは、その恩恵を享受できない。
加藤:アンダーラインを共有するというのは、技術的にやり方もわかっているんです。
アンダーラインやコメントを共有したり、他のユーザーがどういうものを読んでいるか、誰と誰をどう結べばいいのか、SNSを使うのか、IDを使えばいいのか、もしくは本屋の中にSNSを取り込めばいいのかなどということを考えいるところです。
――それも含めたロードマップが示されると、先の海外系メディアや、ユーザーも納得、安心できると思います。
加藤:現在、“Reader Store”のサービスとして提供している『好奇心の本棚』は本をグラフィカルにレコメンデーションするものですが、このサービスにSNS機能を拡張することを考えてます。グラフィックデザイン、サービスともにとても楽しいものがつくれると思っているので、期待してください。
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■第4回「電子本棚『ブクログ』と電子出版『パブー』からみる新しい読書の形」(前編)(後編)
■第5回「電子出版をゲリラ戦で勝ち抜くアドベンチャー社」(前編)(後編)
■第6回「電子書籍は読書の未来を変える?」(前編)(後編)
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