まつもとあつしの電子書籍最前線 ミリオンセラー『スティーブ・ジョブズ』 はこうして生まれた

2011/11/17

電子書籍も記録更新/価格の問題をどう捉えているか?

――10月27日には紀伊國屋書店の「BookWebPlus」で、約1600冊の売上があったことが発表されるなど、電子書籍にも大きなインパクトを与えています。

柿島:私たち編集者が電子書籍を直接扱っているわけではないので、ここでは間接的なお話ししか出来ませんが、AppStoreのほかに現在13の電子書店で展開が行われています。各書店での販売記録をやはり軒並み更新していると聞いています。

青木:ネット上の声を拝見していると、「紙の本と電子書籍が同じ価格なのはなぜ?」というご意見をよく目にします。柿島が言ったように、私たちはあくまで編集の担当であって、会社を代表して電書の価格について何かを申し上げる立場にはありませんが、私個人の意見としては、そういうご意見についても今後はいろいろと考えていく必要があるだろうなとは思っています。

――「価格」という点からは、各巻税込1995円という価格設定が、米国のそれ(ハードカバー全1巻で定価35ドル、amazon.comでは値引き後17ドル88セント)に対して高いのではないか、という指摘もありましたね。

青木:他の類似書と比較していただければわかりますが、1巻約430ページの紙の本、かつ翻訳書としては「2000円を切る書籍」は実はかなり安いほうなんです。

「アメリカと較べて日本の本が高いか、安いか」というのは、たとえばアメリカには再販のような制度(定価での販売を拘束する制度)がなく、売り手によっては大幅な値引き販売が可能であるなど、制度・構造上の違いもあります。この本だけの問題と言うよりは、もっと大きなテーマのお話になります。

上下巻に分冊した点についてもいろいろご指摘を受けますが、通常、英語をきちんとした日本語に翻訳すると、文字量は約1・5倍に増えます。もし今回、1巻本にした場合、900ページ近いボリュームになってしまい、定価は4000円をゆうに超えてしまったはずです。

持ち歩きの不便さを考慮しても、分冊にして、できるだけ価格も抑えて・・・という判断の結果、現在の形になっています。少なくとも決して「ぼったくり」などではないということは、ぜひご理解いただきたいと思います。

――なるほど、『スティーブ・ジョブズ』は、書籍の内容だけでなく、電子書籍や価格の在り方についても、改めて考えさせられるきっかけになりますね。