「リア充じゃないから作家になれた」“粘膜作家”飴村行インタビュー|夏のホラー部第4回

オカルト

2015/8/29

 エロス、バイオレンス、日本兵に河童!男子中学生な衝動が渦を巻く『粘膜人間』(KADOKAWA)で、日本ホラー小説大賞の長編賞を受賞。一躍エンタメ界の注目作家となった飴村行さん。あの衝撃のデビューから約6年、“粘膜作家”はいま何を思うのか? 非リア充のカリスマが、悶々とした人生と作品について熱く語ったインタビュー!

――ずばりホラー作家・飴村行の原点とは?

飴村:それははっきりしています。中学高校時代、僕は友達がいなくてすごく孤独だったんですよ。高校は男子高だったんですけど、入学から卒業までの3年間、一度も女の子と口をきく機会がなかった。「まさかそんなことがあるのか?」と思って、先日じっくり考えてみたんですけど、本当に一度もしゃべっていなくて(笑)。だから高校でいちばん嬉しかった思い出は卒業式なんです。二度とここに来なくていいんだと思ったら、胸に熱いものが込みあげてきて……。帰りに自転車で盛大にコケたんですが、まったく痛みを感じなかったですね。

――その孤独や辛さが創作につながっているんですね。

飴村:楽しみといえば、親の財布から金を盗んで映画に行くことくらい。あとは部屋に閉じこもってマンガを読んだり、西村寿行さんのバイオレンス小説を読んだり、ホラーのビデオを見たり。あの頃、現実逃避で妄想の世界にどっぷり浸っていたのが、作家としての財産になっています。中高時代にリア充な生き方をしてたら、まず作家にはなっていませんね。辛かった時期を、大人になった今なんとか取り戻そうとしているというか。

――飴村さんの作品には、強者が弱者をめちゃくちゃな暴力で支配する、という構図がよく出てきます。あれも実体験からですか?

飴村:あれはうちの兄貴がモデルです。兄貴は空手を習っていて、昔よくその実験台にされていたんですよ。それが痛くて、怖くて。今にして思うと、銃を持ったら撃ってみたくなるようなもので、気持ちが分からなくもないんですが、やられる方はたまったもんじゃなかった。この兄貴には大学生の息子がいて、なんと『粘膜人間』を僕の本とは知らずに読んでいたんです。それも赤川次郎のカバーをかけて、こっそりエロ本のように隠し持っていた。“粘膜遺伝子”ってあるんだと嬉しかったですね。

――それは甥子さんもかなり驚いたのでは。

飴村:それが意外に「ふーん」という反応でした。小説家よりもYouTuberに興味があるらしくて、時代は変わったなと(笑)。お年玉で1万円あげた時の方が、はるかに目をきらきらさせてましたよ。

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