【連載】産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと #03 – 初期と中期以降の「安静に」の違い

公開日:2016/7/1

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 「しばらく安静にしてください」

 出血やおなかのはりがあると、よく医者から言われる言葉ですが、もし、言われたらどう過ごしますか? とにかく食べる以外は寝る? それとも激しい運動さえしなければ大丈夫そうだから気分転換にショッピングでも行っちゃいますか? こんな風に、どれくらい安静にしないといけないのかわからないまま帰宅しちゃうケースが多々あります。

 医者の私がいうのも何ですが、「安静に」って、非常に曖昧な言葉ですよね? 実はそもそも、妊娠初期と中期以降に言われる「安静に」は、意味が全く違うのです。

 妊娠初期に安静を指示される多くのケースは、流産になりかかっている(切迫している状態なので、切迫流産といいます)時です。流産とは、妊娠21週(6カ月)までに何らかの原因で赤ちゃんが亡くなってしまうことを指しますが、とくに多いのが、妊娠12週くらいまでに流産になるケース。この時期に起こってしまう流産の原因は、もともとの染色体異常や赤ちゃん側に何らかの異常がある場合が多く、残念ながら流産を防ぐ手段はありません。つまり、妊娠初期の時に医者から言われる「安静に」とは、「残念ながら流産の可能性をゼロにはできませんが、遠出をしたり、運動のしすぎは控えてください」という意味なのです。

 

 一方、妊娠中期以降は、切迫早産の時に言われることが多く、安静にすることが治療のひとつなんです。切迫早産とは、その名の通り「早産になりかかった状態」で、赤ちゃんが想定外に早く産まれてしまいそうな状態のこと。 日本では切迫早産に対して、子宮収縮を抑える内服薬や点滴を投与するのが一般的ですが、実は、安静にすることが一番効果的な方法だといわれています。四足歩行の動物と異なり、二足歩行のヒトは、普段でも腟に大きな荷重がかかっています。妊娠すると、さらに赤ちゃんの体重・羊水・子宮自体の重さがずっしりとのしかかることになり、この重さに10カ月間耐え続けるのが、たった4㎝の子宮頸管と呼ばれる部分。そりゃ負担ですよね? そのため、横になり安静を保つことで子宮頸管にかかる荷重を減らしてあげることが立派な治療になるのです。

 重症の場合、入院になりますが、もし健診で指摘される程度なら、重いものを持たない・アクティブなスポーツは控える・おなかがはったらベッドやソファーで休む程度でOKですよ。

 

<きゅー先生の伝えたいことまとめ>
初期と中期では「安静」にの意味が違う
中期以降の場合は、「治療」と心得て

 

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■書籍情報
産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと
きゅー/KADOKAWA

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■きゅー
都内の某大学病院で働く産婦人科医。医学博士。アメブロ公認トップブロガー。「専門的な知識をとにかくわかりやすく!」をコンセプトに開設したブログが評判を呼び、現在23000人を超える読者に向け、産婦人科の知識を伝えている。