つぶやきシローの青空読書カフカの『変身』を読んだよ
更新日:2013/12/20
『変身』フランツ・カフカ
セールスマンのグレゴリー・ザムザは、ある朝目を覚ますと自分が巨大な毒虫になっていることに気がつく。仕事に行くことも出来ず、部屋を這い回るグレゴール。最初のうちは献身的に世話をしてくれていた妹からも疎まれるようになって……。突如として虫になった主人公と、その事実を受け止められない家族との奇妙な生活が始まった。
不条理や非現実をリアルに描き、現代人の深層心理に迫ったとされる作品。作者のカフカ自身はこの作品について明確な解説をしておらず、この難解な内容は現在でもその解釈に波紋を呼んでいる。彼の独特な世界観は、現代の文学にも多大な影響を与えた。
平凡なサラリーマン、グレゴールがある朝目覚めると巨大な虫に「変身」していたっていうオカルトチックな作品だね。楳図かずお的なにおいのする物語だよ。この難解なストーリーを巡って、今でもいろんな解釈が論じられているみたいだけど、実はそんなに深い話じゃないんじゃない? カフカが描いたこの世界は、シュールなエンターテイメントだと思うよ。
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朝起きて突然虫になっていたのに、主人公のグレゴール自身はなんか冷静なのよ。ただ家族は戸惑うよね。「ああ、この子は虫になりそうな予兆あったからね」とか、「そう言えば最近皮膚が堅くなってきてたもんね」とかって、徐々に虫化していけば受け止めやすかっただろうけどね。息子がいきなり虫になったらそりゃ驚くよ。彼に対する家族の扱いが酷いって言われてるけど、誰も責められないよね。
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この主人公、実は働いてばっかりの毎日に嫌気がさして「もう会社になんて行きたくない」って思ってたのかもね。僕もネタ見せライブの朝とか、ベッドに潜りながら「あ? もうこのまま人間じゃない生き物になってしまいたい」って思うもんね。一日だけで戻れるんだったら、誰にだって虫になりたい日は確かにあるでしょ。「神様! 今日だけ虫になっていいんで、休ませてください?」みたいなね。
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この物語は、忌まわしい虫に変身したってところがミソだと思うんだよね。これがウサギとかだったら「あら、お兄ちゃん可愛くなったわね? ずっとこのままで居てほしいわ」って感じになるだろうからね。嫌われ者の虫に設定したことで、悲劇の主人公に不幸な自分を重ねられるからね。
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作者のカフカは、ユダヤ人でチェコ生まれ。この「変身」には、ある日突然忌み嫌われて迫害を受ける、ユダヤ主義に対する政治的なメッセージが入っていたのかも、とも言われているらしいよ。もしくは家族の介護問題であったり、障碍者を抱える家庭の確執だったりね。要するにカフカ自身、社会的にも家庭的にも恵まれている状況でなかったから、何か思うところはあったんだろうね。
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