つぶやきシローの青空読書カフカの『変身』を読んだよ

更新日:2013/12/20

つぶやきマーカー

「不条理って日常にあふれているんだよね。虫になってもジタバタしない主人公はそれを知っていたんだと思うよ」

借金もあるし、家族を養わなければいけない。主人公は追い詰められすぎて、現実逃避したくて、それで結局虫になっちゃったのよね。鬱屈とした気持ちで毎日を過ごしていたら、もう虫みたいなもんだからね。ある日突然虫になるって不条理な出来事に彼が動じてないのは、この世界は同じように不条理なことがあふれてるっていうのを知っていたからじゃないかね

「味覚や考えまで虫になっていくグレゴール。人間だったことを忘れそうになってるのよ」

虫になって味覚が変わったグレゴールは、新鮮な食事よりも生ゴミを好むようになる。完全に虫になっていくグレゴールを見て、妹は彼が動きやすいように部屋の家具を一掃しようって提案するのよ。それに対して母親が『もし彼が人間に戻ったら可哀想じゃない』って言う。グレゴールはその時初めて、『確かにこの部屋にあるものは、過去の俺にとって大切なものだった』と人間だった自分をふと思い出すのよ

「親身になって面倒を見ていた妹が『捨てちゃおうよ』って。酷いけど、これがリアルだよね」

この話、現代の高齢化とかひきこもり問題に重なる部分があるよね。最初は一生懸命世話してきたのに、もう耐えきれなくなって居なくなってほしいとすら思う。妹も最初は献身的だったけど、最後はお兄さんとも呼びたくなくて、『あれ』呼ばわりだもんね。僕は最後まで彼が人間に戻るハッピーエンドをどこかで期待しながら読んでいたんだけど、このオチが一番現実的なのかもと思うね

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「グレゴールは肉体が変身しだけど、家族は心が変身する。読み手がどちら側に立つこともできる作品だよ」

なんで彼が虫になったか、その理由が一切書かれていないのがシュールでしょ。そこは大して問題じゃないんだよね。そして虫になった彼は、人間に戻ろうとしない。淡々と虫になった日常を描いているだけなのが不気味だよね。グレゴールが死んだ後、家族がホッとしている描写には不思議な後味がこみ上げてきたね。あらゆる解釈が可能で、まさに読み手によって「変身」する本だよ

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「イカと醤油」

愛情表現が不器用な父と、父を誰よりも尊敬し貧しい生活をも明るく楽しく過ごす息子・健太の物語。不足した日常は彼らにとって不幸ではない。しかし、健太が小学校に入学する頃、突然二人の生活に終わりが訪れる。理想な親子とは?つぶやきシローがその問いを投げかける。

僕が思う理想の親子を書いてみました。
こういう父親、こういう息子が今の時代もいてもいいんじゃないかって思います。