【連載】美味しいBL 第2回 ボーイズラブの直球ど真ん中!『俺と上司の恋の話』3部作

更新日:2017/2/27

【あらすじ】

新入社員の高梨智昭(たかなし・ともあき)は、黙っていたらカッコイイ直属の上司の徳永親(とくなが・ちかし)がゲイで、社長の古谷(ふるや)に恋をしていることを知る。しかも徳永がゲイであることは社内では周知の事実だった。オープンな社風に困惑する高梨だが、徳永が仕事にも恋にも真剣なことを知り、そのけなげさに惹かれていく……。会社を舞台に、高梨(部下)と徳永(上司)の恋の始まりから、その果てまでを3部作で美しく完結させた傑作。

 こんにちは! お手伝いした、発売中の『ダ・ヴィンチ3月号』の「男のためのBL」特集が好評のようでうれしいです。BLラバーのミートミックです。

 さて、今回から、BLが好きな方にも、ちょっと興味持ったところ、というビギナーの方にも、「おもしろい」と楽しんでいただけるであろう「美味しいBL」作品をご紹介してまいります。

 まだの方は『ダ・ヴィンチ』のBL特集もぜひご覧いただくとして、こちらでは紙幅の関係で特集内で取り上げられなかった作品をピックアップしていきますね。

 今回紹介するのはナナメグリの『俺恋』三部作。BL人気ジャンルのひとつ、リーマンのオフィスラブです。

 この作品の魅力は、恋が生まれて育っていく過程(エロス含む)をベースに、男同士の恋愛の葛藤、せつなさ、社会との軋轢など、BLで描かれる王道のドラマがほぼ網羅されているところです。しかも、かなり深いところまで描いているのに、どろどろしていなくて、読みやすい。

 ゲイである上司の徳永のセクシュアリティが社内で明るく肯定されている世界観でスタートするのですが、実は、徳永にはカミングアウトしたことで社内で孤立していた過去があったり、周囲もそのときのことを反省していることが、あとあとわかって来るのです。取引先からゲイであることを理由に契約を白紙にされるなど、理不尽なトラブルも起こります。

 軽いタッチで読み進められるのに、男同士の恋愛だから生じる社会との摩擦の描写が非常にリアルで、途中で涙なくしては読めないシーンがあったり、大感動が待っていたり、巻を重ねるほど、良い意味でどんどん最初の印象を裏切ってくれる作品なのです。

 1冊目の『俺と上司の恋の話』は2人の恋の始まりを、2冊目の『俺と部下の恋の先』は男同士の恋がぶつかる壁を、最終巻の『俺と彼氏の恋の果て』は、男同士の恋が行き着く果てを、とても丁寧なキャラクター描写と過不足のないエピソードの積み重ねで、読ませてくれます。巻数表示がなく書名も違うのですが、ぜひ間違えないで、必ず順番に、3冊続けて読むことをオススメします。

 描かれるのは男同士の恋。けれど、誰かをほんとうに好きになったときの気持ちに、性別は関係ないですよね。でも「男同士」だから、恋が進めば、男女の恋では存在しない壁があり、その壁をどう乗り越えていくのかがBLのドラマになる。

 2冊目の『俺と部下の恋の先』では、社会の不寛容による苦しみが描かれ、最初からゲイだった上司の徳永は、ゲイではなかった部下の高梨を大切に思うあまり、高梨から離れようとします。

 3冊目の『俺と彼氏の恋の果て』では、そんな二人の恋が、ついに果てまでたどり着いて――。この恋の果てを意識するきっかけになる高梨の部下の女性とその家族も、ドラマに深みを与えていて、設定も関わり方も、見事なのです。

「恋の果て」に行き着いた二人が、未来にどんな答えを出すのか。ぜひ始まりから果てまで、彼らの恋のすべてを、見届けてください。

 男同士の恋愛を描くボーイズラブでなければ描けなかった、けれど、本気の恋をしたことがある人ならきっと胸に覚えがある、あまりにも普遍的など真ん中直球の「恋の話」です。

 泣いて笑って、読み終わるころ、きっとあなたも、「恋っていいなあ……」と胸がきゅーんとしていることでしょう。

 BLってほんとうにすばらしいですね! それでは、次回の作品をお楽しみに。

みーとみっく●フリー編集者、ライター。BLラバー。元BLレーベル創刊編集長。BL歴は1980年代の『小説JUNE』から。商業BL中心。Twitter(@meet_mic