幸せに生きるための科学的な方法とは!? 吉田尚記と石川善樹が誰でも応用できる「コツ」を探る 

社会

2017/9/12

科学的に見て「幸せ」ってどういう状態なんですか?

誰でも応用できる「人生を幸せにするコツ」はある!

吉田: よくある「人生を幸せにするコツ」って、嘘臭いなぁって感じるんです。誰が言っても、どこかブレがあるじゃないですか。でも、そういうコツが存在しないわけではないとも思います。僕ら一人ひとりが幸せになる方法はきっとある。だからもっと厳密に、誰でも取り扱える方法を見つけたいなって。で、それをいちばん知ってそうなのが石川さんのような「科学者」だという気がしているんです。

石川: 光栄ですが、なぜそう思ったんですか?

吉田: 科学の視点って、枠がデカイじゃないですか。僕、大学のとき人間科学専攻だったんですが、必須図書として読んだデズモンド・モリスの『裸のサル』がすごくおもしろくて。たとえば宇宙人が地球に来たとして、「これはクジラという生き物だ」「これは馬という生き物だ」と観察する。そのとき人間だけを特別扱いしたりしない。「人間はサルの一種だ」「このサルは頭髪以外に毛がない」「裸の猿だ」って記述していくだろうというわけです。「夜寝て朝起きる」とか、「基本的には一夫一婦制だが一部ではそうでない例も見られる」とかね。

石川: ああ、そうでしょうね。

吉田: めちゃくちゃおもしろい視点だと思ったんです。でも人が意思決定したり、物事を前に進めようとしたりするとき、あまり科学的な視点で考えないじゃないですか。だからこそ、科学的に「幸せとはこうだ!」って言えれば、誰でも生かせる知恵・技術になる、と思ったんです。

朝ワクワクして目が覚めて、夜満ち足りた気持ちで眠れるかどうか

石川: 僕は「予防医学」──人がよりよく生きるためにどうすればいいのかを考える学問──を研究しているんですが、その究極のゴールは「朝ワクワクして目が覚めて、夜満ち足りた気持ちで眠れるか」なんです。

吉田: うわ、それすごく具体的でいい目標ですね! そのゴールを設定するまでに、どんな経緯があったんですか?

石川: けっこう長い歴史があるんですよ。人類が苦しんできたのって、貧困と病気なんです。戦争がいちばん悪いと言う人もいるけど、大局的に見れば戦死者より病気や貧困で死んだ人のほうが圧倒的に多い。人類は数千年という時間をかけて、かなりの部分の貧困と病気を克服してきたんです。そのために生まれたのが、病気を治す「臨床医学」と、病気になりにくい心身を維持する「予防医学」。

吉田: 「昔はよかった」って言う人もいるけど、今のほうがずっと条件がいいですよね。

石川: 僕もそう思いますね。で、貧困と病気をだいぶ克服できるようになってきた現在、朝ワクワクして目が覚めて、夜満足して眠れるかという昔ながらの永遠のテーマに本格的に取り組めるようになった。だから僕はそれをずっと研究してるんです。

吉田: 具体的にはどんな研究なんですか?

石川: たとえば日本の夏は暑いものですが、その状況をどうしたら楽しめるのか考えたり。

吉田: それは知りたい!

石川: まずですね、暑い暑いと言う前に、その気持ちを俯瞰して見るんです。「自分は今、暑いと感じてるなあ」って。暑いって感情に脳をハイジャックされないようにする。そうすると余裕が出てくるんですね。で、余裕をもってまわりを見てみると、すでに夏を楽しんでらっしゃる方々がいた。子どもたちです。

吉田: あ、子ども!

石川: 子どもたちって、エスカレーターと階段があったら階段を選ぶんですよね。お母さんと手をつないでいても、ぱっと離しちゃって階段を駆け上がる。僕、それを真似して階段を駆け上がってみたんです。まあ疲れる。だけど、楽しいんですよ。

吉田: あー、すげえわかりますね!

石川: 暑い夏でも思いっきり体を動かすと、脳からエンドルフィンとかが出て、楽しくなるんですね。ああこうやって楽しむんだな、と子どもたちから教えてもらいました。よし、これで1個ワクワクした気持ちになったなって。そういうことを日々積み重ねています。

人間だけがもっている「思いやり」の快楽

石川: さっきデズモンド・モリスの話が出ましたけど、彼の研究をもっと進めていったのが、おそらく京大総長の山極寿一先生。ゴリラの研究者で『ゴリラ』(東京大学出版)って著書があるんですけど、超おもしろいですよ。話すものすべてをすぐジャングルに喩える先生なんです。で、その山極先生が言ってて「ああそうだな」って思ったんですが、霊長類が300種類くらいいる中で人間だけに見られる行動がある、それは「赤の他人に餌をあげること」だと。

吉田: へええ!

石川: まあ他の霊長類も自分の子どもやコミュニティには餌をあげるんだけど、まったく知らない赤の他人にあげるのは人間だけだというんですね。なぜそれが可能になるかと僕なりに考えると、苦しんでいる人、困っている人に手を差しのべるのは、人間にとって気持ちがいいことだから。困っている人に手を差しのべる、つまり思いやりっていうのは、人間の本質の一つなんじゃないか。

吉田: めちゃくちゃいい本質じゃないですか。

石川: あと、これは推測ですが、餌を分けてもらえるってことは、人間にとってどういう意味があったのかと考えると、長距離移動が可能になったんじゃないかと思うんです。つまり、餌をもらえるので、知らない土地まで行って、そこで新しいアイデアをもらって帰るので、知性が発達したんじゃないかと。要するに、(1)新しいアイデアを外に取りに行く、(2)それをコミュニティ内でシェアする。基本的な人間行動っていうのは、この2つなんじゃないかなと。

吉田: うんうん! すごくしっくりきます。

石川: で、僕ら科学者がやるのは、(3)新しいアイデアを考える・つくること。まとめると、人生には次に挙げる3つの活動があります。

【人生の3要素】
(1)新しいアイデアを外に取りに行く
(2)コミュニティでシェアする
(3)新しいアイデアを考える

石川: で、これがもっともうまく機能する最大人数が10万人といわれているんです。10万を超えると、アイデアをシェアするのが難しくなってくる。

吉田: はああ。

石川: その10万人も、細かく分かれています。部族や家とかのコミュニティは150人がMAX、その中で人が本当に親しく交流できるのは6人といわれています。6、150、10万という数字が今のところの研究結果です。つまり新しいアイデアをシェアするうえで大事なのは、親しい友だち6人をどう持つか。自分がコアとする150人のコミュニティをどう持つか。そのほかの10万人が住む都市をどう選ぶか……みたいに考えると、研究者っぽい人生の見方ですね。この3つをどれくらいのバランスでやると、その個人がもっともサバイブできるかって研究もあります。

(つづく)

石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者・医学博士。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部を経て、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。ビジネスパーソンへの講演や、雑誌、テレビへの出演も多数NHK「NewsWEB」第3期ネットナビゲーター。著書に著書に『最後のダイエット』『友だちの数で寿命はきまる』(共にマガジンハウス)、『疲れない脳をつくる生活習慣』『仕事はうかつに始めるな』(共にプレジデント社)など。
Twitterアカウント @ishikun3

吉田尚記(よしだ・ひさのり)
1975年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。2012年に第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞。「マンガ大賞」発起人。ラジオ『ミュ~コミ+プラス』(ニッポン放送)、『ノイタミナラジオ』(フジテレビ)等のパーソナリティを務める。マンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、常に情報を発信し続けている。主な著書に『ツイッターってラジオだ』(講談社)、『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)がある。
Twitterアカウント @yoshidahisanori

取材・文=阿部花恵 写真=川しまゆうこ
※本連載は書籍から一部抜粋し転載しています