まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍 第3回 ソーシャルリーディングって何?

2012/2/17

電子書籍の魅力=ソーシャルリーディング

まつもと :紙の本がデジタルになるだけでは、保管スペースや検索性が上がる以外のメリットは実は薄いということは、だんだん見えてきたと思います。

ちば :そうですね。値段もそうすぐには下がらないとなると、なおさらです。

まつもと :でも、「本がインターネット化する」と捉えると、また全然違う読み方や魅力が生まれてくるはずです。

ちば :本がインターネット化する? まつもとさん、またよくわからないことを・・・。

まつもと :Kindleなどの電子書籍端末は、今のところ購入した書籍のダウンロードにその通信機能の主な目的があります。けれども、これをいろんな情報(読書情報)のやりとりに使うとしたら、どうでしょう?

ちば :うーん? 読書情報?

まつもと :たとえば、Kindleでは購入した書籍を様々な端末で読むことができますが、そこで「何ページまで読んだのか?」とか、「どのページにしおりを挟んだり、どの部分にアンダーラインを引いたりメモを書き込んだりしたのか?」といった情報までアマゾンのサーバーを介して同期されています。

ちば :専用端末のKindleだけでなく、iPhone版のKindleアプリでも並行して本を読んでいくことができるってやつですね。アンダーラインやメモまで同期されてるんだ。

まつもと :そうなんです。で、あくまで読者が公開すると設定したものに限ってですが、アンダーライン(ハイライト)やメモ(ノート)を集計して、そのランキングまで公開されていたりします。


Amazon Kindle: Most Highlighted Passages of All Time 1 – 25

ちば :へー! ブクログにも引用を公開する機能があったりしましたが、これは本を読みながらアンダーラインを引いたところがどんどんカウントされるんですね。

まつもと :こういったインターネットと連動した機能によって、アマゾンのレビューとはまた違った本の選び方や、楽しみ方・味わい方が生まれてくると期待しているんです。Facebookなんかで「いいね!」ボタンを押したり、情報を「シェア」する機能があったりしますが、それが本の世界にも拡がっていくというイメージですね。なので、「ソーシャルリーディング」と呼んだりします。

こういう体験は電子書籍じゃないとなかなか実現できません。もちろん読書会をするとか幾つかの手段はありますが、どうしても機会や規模が限られてしまいます。いま自分が読んでいる本を、他の人がどんな風に読んだのか知ることができると、ちょっと面白そうだと思いませんか?

ちば :たしかに。難しい本でも他の人のメモがあれば読み進められそうだし・・・。なるほど、それでソーシャルリーディングなんだ。なんとなくイメージはつきました。でも、日本ではまだ馴染みがないというか、こういう本の読み方を提供しているサービスはまだ少ないんじゃないんですか? わたし、聞いたことがありません・・・。

まつもと :いくつか試験的な取り組みはあるのですが、やはりドワンゴが昨年11月に開始したニコニコ静画(電子書籍)が要注目です。

ちば :あ、前回チラッと言ってたアレですね。実は、いまダ・ヴィンチの「次にくるマンガ」特集でご一緒してたりします。でも、ニコニコ静画がソーシャルリーディングと関係あるとは思っていませんでした。

まつもと :ニコニコ動画といえば、投稿されたコメントと映像を同時に楽しめるのが特徴ですが、それを電子書籍でも実現しようというかなり野心的な試みなんですよ。

ちば :なるほどー! そしたらまつもとさん、いま特集でご一緒していることもあるので、いちどお話を聞きに行きましょうよ。

まつもと :え? あ、はい。そうしたら次回は久しぶりにインタビューって感じですか?

ちば :そのつもりです。わたしもこの機会なんでいろいろ恥ずかしくて聞けなかったことも聞いちゃおうっと。

まつもと :・・・。

次回、ニコニコ静画への取材編に続く。

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■ダ・ヴィンチ電子ナビ編集部:d-davinci@mediafactory.co.jp

 

イラスト=みずたまりこ

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■第2回「赤松健が考える電子コミックの未来」(前編)(後編)
■第3回「村上龍が描く電子書籍の未来とは?」(前編)(後編)
■第4回「電子本棚『ブクログ』と電子出版『パブー』からみる新しい読書の形」(前編)(後編)
■第5回「電子出版をゲリラ戦で勝ち抜くアドベンチャー社」(前編)(後編)
■第6回「電子書籍は読書の未来を変える?」(前編)(後編)
■第7回「ソニー”Reader”が本好きに支持される理由」(前編)(後編)
■第8回「ミリオンセラー『スティーブ・ジョブズ』 はこうして生まれた」
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